アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃から1週間が経過した。原油の供給懸念が高まるなか、先物価格は一時1バレル=92ドル台にまで急騰、金融市場でも株式を中心に相場の下げが目立ってきた。

原油上昇率は過去最高に

6日のニューヨーク市場で、原油の国際取引の指標となるWTI先物は、1バレル=90ドルを超えて終え、1週間の上昇率は過去最高を記録した。

ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続くなか、ウォールストリート・ジャーナルは、6日、複数の関係者が、クウェートが一部油田での減産を開始したことを明らかにしたと報じた。原油が国内に滞留し、貯蔵スペースが残りわずかになったためだとしている。

また、フィナンシャル・タイムズは同日、カタールのカアビ・エネルギー相が、「湾岸諸国のエネルギー輸出業者が数日以内に生産を停止し、原油価格は150ドルまで上昇することを予測している」と述べたと伝えた。

ガソリン1リットル208円も

原油のさらなる高騰は、家計に一段と影響を広げることになる。

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3月2日時点のレギュラーガソリン全国小売価格は、1リットルあたり158.5円と、3週連続で値上がりしていて、今週以降、アメリカなどによるイラン攻撃の影響が反映され、さらに上向いていく見込みだ。

第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストの試算では、原油価格が1バレル=100ドルに上昇した場合、レギュラーガソリンは186円に、130ドルのケースだと208円に値上がりする。

「エチレン製造装置停止」の可能性

原油相場が上昇ピッチを加速させ、中東からの供給不安が強まるなか、原油由来のさまざまな製品にも影響が広範囲に及ぶことが懸念されるようになってきた。

原油の精製過程で得られる重要な物資が「ナフサ」だ。「ナフサ」は、プラスチック製品の原料として自動車や家電、食品の包装材などに使われる「エチレン」などのもとになるものだが、日本の輸入の7割以上が中東からとなっている。出光興産は、中東からの「ナフサ」の供給停止が長期に及ぶケースを想定して、エチレンの製造設備を止める可能性があることを取引先に通知した。

出光興産のウェブサイトより
出光興産のウェブサイトより

出光は、山口県内の徳山事業所と千葉県内の千葉事業所に、あわせて国内全体の約16%のエチレン生産能力を持つ設備を有していて、徳山事業所ではナフサを輸入に頼っているほか、千葉事業所では輸入と国産ナフサの両方を使っている。

エチレンなどの生産設備は、石油精製や化学各社が運営していて、ナフサ調達や輸入の比率、中東産の割合や在庫水準には各社で差があるとみられるが、影響の深刻化の可能性に身構える動きが広がる可能性がある。

スーパー担当者「トレー値上がりが一番の懸念」

6日に取材した横浜市内のスーパーでも、肉や魚など生鮮食品に使われる包装資材などの値上がりを懸念する声が聞かれた。

店舗担当者は、「トレーの値上がりが一番の懸念材料だ」として、「無料のポリ袋も使う頻度を減らすよう呼びかける可能性がある」と明かしたほか、来店客のひとりは「生活を変えないといけなくなるのでは」と心配していた。

また、都内のクリーニング店は、石油系溶剤だけでなく、ハンガー、衣類を包むビニールカバーなど、あらゆるところに石油関連製品が使われているとして、「事態が長引くほど、商売の根幹がダメージを受ける可能性がある」と、警戒感をあらわにしていた。

第一生命経済研究所の星野氏の試算では、電気ガス料金のほか、食料品や日用品をはじめとする商品やサービス全体にも影響が広がる結果、原油価格が1バレル=130ドルのケースでは、消費者物価が初年度で0.63%押し上げられ、消費は0.64%落ち込むことになる。

事態の短期収束は見込めなくなったとの見方が急速に広がるなか、景気の押し下げと高インフレが同時に起こる「スタグフレーション」懸念が世界的に意識されるようになってきた。

日本国内でも、原油高騰などを通じたエネルギーや商品価格の上昇で、消費が冷やされる事態が顕在化してくるのか、注視が必要な局面になってきた。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員