県の品評会で農林水産大臣賞に輝いたブランドシイタケ・足迄旨治郎。近年、掛川市で人気を集めるこのシイタケを生産しているのが現役の茶農家4人だ。一体なぜなのだろうか?
道の駅でバカ売れ 話題のシイタケ” 足迄旨治郎”
農家から直接届けられた、採れたての新鮮な農産物を買い求めることができる道の駅 掛川。
ここでいま人気を集めているのが、2025年11月に県の品評会で最高賞となる農林水産大臣賞に輝いた足迄旨治郎という名のブランドしいたけだ。

ある購入客は「焼いて食べたらすごくおいしくて、シイタケの旨味をすごく感じるので、いつも買っている」と絶賛し、道の駅 掛川の田中秀明 事業部長の話ではリピーターも多く、1日に500パックほど売れた時もあったという。
旨さの秘訣は“土台”と無加温栽培にあり
ただ、足迄旨治郎を作っているのはシイタケ農家ではなく茶農家。
一体なぜなのだろうか?
桜の名所として知られ、週末にはハイキング客やサイクリングの愛好家などでにぎわう粟ヶ岳。
足迄旨治郎は粟ヶ岳の麓・掛川市東山地区で育てられていて、足の部分までおいしく食べられることから、この名前が付けられた。

一番のこだわりは菌床と呼ばれるシイタケを育てるための土台。
手間を省くため菌床を購入する農家も多い中、専用の設備を導入することでおがくずや米ぬかの配合、菌の植え付け、培養まですべてを自前で行っていて、松浦永治 代表によると、菌床の良しあしがシイタケの出来栄えを左右するそうだ。
地域の自然環境を活かすため暖房設備は設置せず、季節の変化に合わせてシイタケを育てる無加温栽培を採用。

日々、より質の高いシイタケを追い求めていて、低温でゆっくり育てる分、食感が良くなるという。
茶業低迷 農家が仕掛けた逆転の一手
足迄旨治郎の栽培に携わっているのは松浦代表を含めて4人。
いずれも現役の茶農家だ。

茶どころとして知られる掛川市だが、中でも東山地区は伝統の茶草場農法が世界農業遺産に認定されるなど市を代表する産地のひとつ。
ただ、お茶をめぐっては、ペットボトル飲料の普及により茶葉から入れる、いわゆるリーフ茶の需要が減ったことで廃業する農家も増え、掛川茶市場における一番茶の取引量は20年間で6割以上も減っている。

このため、お茶だけでは生活が成り立たないとの危機感を抱いた松浦さんは、思いを一にする仲間と共に勉強を重ね、4年前に合同会社を設立。
農地を共同で所有し、収入は均等に分け合うという条件のもと、お茶のシーズンが終わった農閑期にシイタケの生産に取り組み、県の品評会で最高賞に輝くまでになった。

メンバーのひとり、田辺啓介さんは「最初は不安な部分もあった」と振り返りつつ、「みんなでいろいろと意見を出し合い、高め合うことができている」と胸を張る。
プロも絶賛「すごく魅力的」
石薪窯で焼きあげたキッシュが自慢の日坂宿 橘屋(掛川市)の店主・田辺幸年さんも足迄旨治郎に魅せられたひとりで、「他のシイタケと比べて肉厚で食感も良く、香りもすごく立つので素材としてすごく魅力的」と太鼓判を押している。
足迄旨治郎を使ったキッシュは10月から3月にかけて提供される季節限定の逸品で、毎年楽しみにしている常連客も多く、田辺さんも「生産者がすごく情熱的で、僕たちも励みになっているし、なるべく地元の食材を使おうと思っている」と話す。

わずか4年で地元では一定の認知度と人気を得た足迄旨治郎だが、松浦代表は今後、さらなる品質向上に努めるとともに地域の農業が持続していくための環境整備を進めていきたい考えで、「菌床を作る工場も今まで外に借りていたが、地元に工場を建てたし、そうすることでキノコを育ててみたいという人が増えたらすごくうれしいし、新たに就農する人が増えたらすごくうれしいので、そうなるように自分たちが努力をする時」と意気込む。
農業をめぐる情勢が厳しさを増す中、松浦代表などの取り組みが新たなモデルケースとして注目される日も遠くなさそうだ。
