日本最大級のファッションイベント『東京ガールズコレクション』が2月15日、名古屋で開催された。14年ぶりの地元開催を彩ったのは、愛知が誇る「尾州」の毛織物を使った作品たちだ。お膝元・一宮市出身の学生デザイナーが手がけた衣装も、大観衆の前で輝きを放った。
■選ばれた衣装はランウェイで…夢の企画に挑む
愛知県出身・めるる(生見愛瑠)さんの登場で幕を開けた「TGC(東京ガールズコレクション)」。名古屋での開催は実に14年ぶりだ。
今回のTGCでは、『若手デザイナーの発掘プロジェクト』が実施された。
“質の高さ”で世界からも評価される「尾州毛織物」の魅力発信や、未来のファッション業界を担う人材発掘などを目的としていて、大学・専門学校生を対象に“尾州の生地”を生かした作品を募るものだ。

プロジェクトでグランプリ・準グランプリに選ばれた衣装は、モデルが着用してTGC本番のランウェイを歩くというまさに“夢”のような企画で、292の応募があった。
1次審査を通過したのは21の衣装。光沢感のある生地でシックにまとめたスタイルや、スカートのボリューム感が可愛らしいドレスなどが、続々と披露された。

グランプリに輝いたのは、大阪文化服装学院の坂本音々さんの作品。
躍動感のある馬から着想を得たそうだ。

準グランプリは、パッチワークの上に花柄の刺繍を加えた、上品な印象の作品だ。今回のTGCのテーマ「TSUMUGU」を表すように丁寧に紡がれたパッチワークが、“尾州”の魅力を引き出している。
審査員は「縫い目の美しさ・刺繍の美しさ・カットワークの美しさ。どれをとっても適当なところが1ミリもない。丁寧さにあふれている」と評価した。

手掛けたのは、“尾州のお膝元”の一宮市出身で、名古屋モード学園・4年生の佐野正貴(さの・まさき 27)さんだ。
佐野さんが作品に取り入れた生地はおよそ20種類。2025年7月、“尾州毛織物”の製造・販売を手掛ける会社に足を運び、その半数を選んだ。
佐野正貴さん:
「これだけ色があり素材感が違い、使われる用途も色々ある。種類の多さや高品質な物がたくさんあるのが、尾州の強みでもあるし魅力だと思う。1つにしぼりたくないなと思った。だからこそ、パッチワークで色んな生地を使うことができるというので選んだ」
じかに触れた、尾州織物の魅力を紡ぎ、“表情豊か”な衣装を仕上げた。

コンテストの発表の時には“無表情”だった佐野さんだが…。
佐野正貴さん:
「見ていた人にもそういわれたのでそう見えたかもしれないけど、普通に素直にうれしかったです」
■闘病生活の中で出会った“服のチカラ”
佐野さんがファッションを志したのは、「病気」がキッカケだった。
佐野正貴さん:
「潰瘍性大腸炎という病気。自由でかつ気分転換にもなる。自分のネガティブだった気持ちをポジティブな方向にもっていってくれたのが服だった」
佐野さんは、名門・慶応義塾大学法学部で法律を学んでいたが、2年生の時に患った病で、1年ほど入退院を繰り返す生活となった。苦しい闘病生活の中で、それまで興味もなかった「ファッション」がいつしか心の支えになっていた。
佐野正貴さん:
「制限なく自由に楽しめるファッションが、自分の中でいいなと思って。服の持つ力・魅力に気付いた」

ファッションに目覚め、慶応大学を卒業した後に、「名古屋モード学園」へ入学した。
デザインした服がワークマンで商品化されたり、アイドルグループの衣装をプロデュースする機会も得るなど、才能を開花させていった。

そうして辿り着いたのが、TGCという夢舞台だった。
■モデルの小川さんがフィッティング「着た瞬間からすごくワクワク」
「TGC」開催の2週間前の1月29日。佐野さんは東京で、衣装を託すことになったアーティストの小川桜花(おがわ・ようか 21)さんと初めて対面した。
服や靴のサイズを事前に確認する“フィッティング”。佐野さんが手掛けた衣装に、モデルが袖を通す。

小川桜花さん:
「細部までこだわりが詰まっていて、着た瞬間からすごくワクワクしました。すごい!かっこいい!」
佐野正貴さん:
「イメージ通りのカッコよさで着ていただけたので、すごく嬉しいです」
佐野さんの表情にも、笑みがこぼれる。

小川桜花さん:
「佐野さんの思いもしっかり受け取って、ランウェイでしっかりと素敵なお洋服を見せられるように頑張ります」
■手掛けた服が1万5千人の前に…佐野さん「選択は間違っていなかった」
迎えたTGC当日。本番直前は、さすがの佐野さんも緊張しているようだ。そこに近づいてきたのが、衣装を託した小川さんだ。
小川桜花さん:
「ランウェイの雰囲気の希望とかってありますか?あんまり笑みがない方がいいとか」
佐野正貴さん:
「自然な感じで笑っていた方が」
小川桜花さん:
「ナチュラルな感じで?OKです!」

デザイナーが託した思いもイメージも、モデルがまとってランウェイへ。
佐野さんと小川さんの“尾州”が、1万5千人の前に。
小川桜花さん:
「今回、佐野君が一から作ってくれているこの衣装だったので、普段と違った緊張感があった」
佐野正貴さん:
「会場の規模・すごい方たちが着ている…。そのうちの1つが自分の作品ということで、非常にそれもすごいなと。あの時の選択は間違っていなかったし、好きなことをやりたいっていう気持ちを信じて、自分の道を選んでよかった」

小川桜花さん:
「佐野君のセンスの良さをすごく感じました。天才だなって」
佐野正貴さん:
「天才ではないです…。愛知県尾州は生地の産地なんだよ、より広めてもらえるとすごく嬉しい」
夢の舞台へ駆け上がった佐野さんに、今後の目標を聞いた。

佐野正貴さん:
「地元の特性というのを生かした服は作っていきたい。着た人・見る人・周りの人が幸せになるような洋服が作れたらいいなと思っています」
