スプーンみたい!? 富士山を覆う巨大雲に騒然 「つるし雲」は、なぜできる?

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  • 3日10日、富士山の上空に不思議な形の雲が出現し「〇〇に似てる」と大喜利状態に
  • 投稿者も初めて見たという雲の正体は“つるし雲”
  • 三井気象予報士が面白い形の理由を解説「山の付近ならどこでも発生し得る」

逆さ富士よりインパクト大!

急速に発達した低気圧の影響で雨と風が強まり、東日本から北日本の太平洋側を中心に春の嵐が吹き荒れた3月11日。
その前日、富士山を臨む山梨県の山中湖では、富士山を上からすっぽり覆うような不思議な形状の雲が目撃された。それがこちら!

富士山に向かって伸びる白い雲。山頂付近には影が差しているようにも見え、今にも富士山を飲み込んでしまいそうだ。
雪が残る富士山が青空に映え、水面には「逆さ富士」が広がる美しい写真だが、それらの情報が入ってこないほどの存在感を放っている。
CGで作られたように見えるが、実際に発生した雲だというから驚きだ。

「雲がなんかスゴイ!!」とツイッターに投稿したのは、ともっち。(@tomocchi_0011)さん。
3月10日、静岡県で行われたモータースポーツのイベントに向かったところ、予定よりも早く到着したため、「逆さ富士でも撮れたらいいな」と思い立って山梨県南部の山中湖を訪れたという。

富士五湖のひとつに数えられる山中湖は、富士五湖の中で富士山に最も近いところに位置し、湖面の面積も6.57平方キロメートルと最大だ。
湖畔に立つと裾野から続く富士山を見渡すことができ、絶好の富士山撮影スポットとして知られている。

目的の逆さ富士の写真を撮影した午前6時ごろの雲は、「まだぼんやりした感じで、そんなに目立ちませんでした」という。
しかし、午前7時ごろになると次第に雲の形が変化していき、投稿写真のようにくっきりと見えるようになったそうだ。

カメラ歴9年で、モータースポーツを中心に風景などを趣味で撮影するともっち。さんは、「不思議な雲だな~」と初めて見る雲に驚き、夢中で写真に収めた。雲は30~40分ほど不思議な形を保っていたという。

雲の様子に目立った特徴は見られない(撮影:3月10日午前6時過ぎ)

「スプーンみたいな形」と紹介した雲はたちまち話題となり、12日現在で1万9000を超える“いいね”が集まっている。コメント欄には、次のような感想が寄せられた。

「初めて見た。アメージング!」
「神の手みたい」「白蛇にも見える」
「富士山のカツラだと思ったのは私だけじゃないはず」
「雲もすごいけど、写真の美しさにも驚き。きれいな逆さ富士」


何に見えるかの大喜利状態にもなったこのユニークな雲の正体は、レンズ雲の一種である「つるし雲」だ。
昨年7月5日に宮城県でも発生し、円が幾重にも重なった形はバウムクーヘンやUFOのようだと話題になり、仙台市を中心に多数の目撃談がツイッター上を賑わせたが、一体どのような雲なのか?
そして、昨年の発生時に噂された地震との関係はあるのか?フジテレビの三井良浩気象予報士に教えてもらった。

空から糸で吊るされているようにみえるため「つるし雲」

ーー「つるし雲」発生の仕組みは?

つるし雲は、上空で強い風が吹き、山の風下で気流が波打ったり、回転することによって発生します。
川を想像するとわかりやすいです。流れの中に岩があると、下流側で波打ったり、渦を巻いたりしますね。これと同じ現象が、空で起きているんです。
上空の風が強く空気が湿っている時、山を越えた風が波打ち、渦を巻いて上昇気流となり、雲が発生します。
その雲が、気流の状態によって円筒、紡錘、翼などの面白い形状になり、まるで空から糸で吊るされているように見えるため、「つるし雲」と呼ばれています。

「つるし雲」と「逆さ富士」の共演(撮影:3月10日午前7時過ぎ)

ーーめったに見ることはできない?

起きない場所では全く起きませんが、発生している場所では、割とよく観測されています。
富士山の東側や神奈川県の相模湾などでは頻繁に出ており、地形の影響が大きい局地的な雲といえます。山の風下で起きる現象なので、山があれば日本各地のどこでも起きる可能性はあります。

気流の状態によって、楕円や円筒などさまざまな形に

 ーー雲なので動くと思いますが、形は崩れない?

つるし雲は、基本的に動きません。風が山にぶつかって乱れた気流が同じ状態を維持している限り、つるし雲は存在しています。
この気流の状態によって、楕円や円筒などさまざまな形になるのです。円が上に積み重なって層になっているように見える場合もあります。

ところが、風向きが変わるなどして気流が変化すると、その瞬間につるし雲は崩れていきます。そして、崩れながら移動していき、消えてしまいます。


ーー発生している時間はどれくらい?

一概には言えませんが、1日中観測できるようなものではありません。長くても数時間、短いと数10分ほどでしょう。

何層にも重なったタイプのつるし雲

ーーつるし雲の真下は危険?

人に直接の影響はありません。真下から見ると、普通の雲にしか見えないと思います。
離れた場所から見るからこそ、このような不思議な形状だとわかるのです。


ーー地震の前兆ではないかという噂もありますが?

地震とは関係ないと思います。これも一概には言えませんが、天気が悪くなる前に起きやすい現象です。
しかし、つるし雲が発生したからといって必ず雨が降るかというと、そうではありません。晴れの後に発生して、発生後、天気が悪くなることが多いという特徴があります。



気象庁のホームページで3月10日の山中湖周辺の気象データを確認すると、つるし雲が目撃された午前7時は晴れていたが、約11時間後の午後6時10分ごろに0.5ミリの降水量が観測されると、午後12時まで最大1.5ミリの雨が降り続いていた。

「つるし雲」という名称は、巻雲、高積雲、積雲といった雲の気象学的分類の種類ではない。
「いわし雲(巻積雲)」「ひつじ雲(高積雲)」「わた雲(積雲)」のように、その形状の特徴を表現したあだ名のようなものだ。

実際につるし雲を見たことがあるという三井気象予報士によると、層があるタイプのつるし雲は相模湾で見ることができるそうだ。
春は桜やチューリップなどの美しい花々が目を楽しませてくれるが、空を見上げてみると新しい発見があるかもしれない。