タイの技能実習生たちが、静岡県内の介護施設で研修している。新型コロナで当初の予定より1年半も遅れ、待望の来日に意欲満々だ。会話をするために方言を習ったり、思いやりを心がけた応対で、お年寄りの利用者に人気だという。
コロナで入国制限…心待ちにした1年半越しの来日

2022年6月。焼津市の病院に、タイからやってきた9人の技能実習生の姿があった。新型コロナによる入国制限が長引いていたため、予定より1年半遅れての待望の来日だ。
彼女たちが学ぶのは、介護。現場で使う専門用語を、翻訳アプリを使いながら理解していく。

介護技能実習生:
とても難しい。でも頑張ります
日本での留学経験があるアージェンさんも、来日を心待ちにしていた。

介護技能実習生・アージェンさん:
うれしいです。ずっと待っていて、やっとここに来られて最高です。一番頑張りたいことは、利用者さんに“思いやり”を持ちたい
職員から介護の基本を学ぶ

7月からアージェンさんたちが配属されたのは、病院と同じグループの介護施設だ。病院がある焼津市に隣接する、吉田町の介護施設で、実習を始めていた。
タイ人技能実習生を受け入れた医療法人は、現在は施設の人手は足りているものの、実習生の将来と職員のレベルアップを目的に受け入れを決めたという。5年後、10年後の人手不足を見据えているのかもしれない。
ーーいま、何をしている?
アージェンさん:
とろみをつけています。(利用者が)水を飲んだら誤嚥(ごえん)の原因になることも多いので、誤嚥予防にとろみをつけることになっています

職員がついて、実習生たちに、利用者の食事の準備・入浴から排せつの介助まで、ひとつずつやり方を指導する。実習生たちは介護の基本を学ぶ。
方言も覚え利用者と交流

そんな中、実習生が手にしていたのは、静岡県の方言のテキストだ。
職員:
「ちーっと」は「少し」の意味
実習生:
これはよく聞きます
より利用者に寄り添った会話をするため、この地域の方言も勉強していた。

介護技能実習生・ヌックさん:
難しいこともあります。でも楽しくて、みんなも優しいです
介護技能実習生・ジュップさん:
介護の仕事は楽しい。特に利用者さんと話すと楽しい
前向きな実習生たち。利用者が出身地を尋ねると…。

アージェンさん:
チェンマイから来ました
利用者:
チェンライと違う?
アージェンさん:
チェンライは違う街、チェンライはもっと上、(タイの地図で)一番上
実習生の笑顔が利用者に元気を与えている。
利用者:
はきはきしてる、元気がいい

別の利用者:
いい子だよ。お茶を気がついてくれる。職員さんが気がつかないときに、ちょっと持ってきてくれる
“一生懸命”は職員にも刺激に
1993年に始まった、日本の技能実習制度。 日本で習得した技能を、母国の経済発展にいかすことが目的だ。

コミュニティーケア吉田・介護主任 岸畑未央さん:
日本での介護を学んで国に持って帰るという目標に向けて、一生懸命さが伝わってくるので、こちらも彼女たちに負けないように一生懸命やっています
この施設は、実習生の教育はもちろん、指導を通じて、職員自身が介護士としてレベルアップすることも狙っている。
介護主任 岸畑未央さん:
仕事に対する職員のモチベーションや意識が上がり、介護技術の基本を、初心に返ってみんなが意識してやるようになるというのが(施設側の)メリットです
「一日も早く役に立てる実習生に」

技能実習生として来日して、約1カ月。コロナ禍で遠出はできないものの、実習生たちは寮での共同生活を楽しんでいた。

一日でも早く日本語をマスターするため、部屋で、その日覚えた専門用語を毎日復習する。忙しい毎日だが、タイにいる家族の応援も支えになっている。
実習生たちは今後3年から5年間、ここで介護の技能を学ぶ。
介護技能実習生・アージェンさん:
実習が始まると楽しいんですが、まだまだ勉強しなきゃいけないことがたくさんあります。利用者さんにあった介護を“思いやり”をもってしたいです。一日でも早く役に立てる実習生になりたい

1年半越しにスタートした介護技能実習。実習生たちの努力が、日本とタイの介護現場で、今後大きな支えとなっていくはずだ。
(テレビ静岡)