19日に公表された首都直下地震の新たな被害想定。

最悪の場合死者は1万8000人で災害関連死は最大4万1000人、経済的被害は83兆円に及びます。

政府の専門家会議は、東京など南関東地域で30年以内に約70%の確率で発生するとされる地震のうち、都心南部直下地震の被害を想定しました。

冬の午後6時に風速8メートルで地震が発生した場合、死者は1万8000人でこのうち火災による死者が1万2000人と多くを占め、建物倒壊による死者は5300人と見込まれています。

12年前の想定からは5000人減りましたが、「10年で死者半減」という国の目標には届きませんでした。

また、建物は全壊11万棟、火災による消失が27万棟、停電は1600万軒、断水は1400万人と想定されています。

こうしたなか懸念されるのは、死者の約7割にあたる1万2000人が火災で死亡すると想定されている点です。

東京消防庁は都内の地震での火災による危険度を公表していて、木造建物の密集地域や道幅が狭く、消防隊の到着に時間を要する地域などを「危険」と示しています。

危険度が高いとされる地域の1つ、東京・品川区西大井を取材すると住宅と住宅の間が狭く建物が密集していました。

品川区出石町会・野路烝一副会長に危険だと思われる場所を案内してもらうと、「(Q.袋小路のような所も何カ所かあるか?)多いですよ。本当に袋小路はたくさんあるんです。(Q.ここから消防車は?)無理ですね。ホースをつなげるしかない。“消防車は来られない”と私たちは町内会のみなさんに話している」と語りました。

この地域では住民で初期消火できるよう、定期的に訓練を続けています。

大井消防署・古木康友予防会長:
品川区で首都直下地震が発生しますと、24件(中規模以上の)火災が発生するといわれていて。消防の力では対応できないということで、24件の1つでも2つでも、全部でも住民の人で消していただければ被害の大幅な軽減につながる。

また火災対策の1つが、揺れを感知して電気を止める感震ブレーカーです。

感震ブレーカーが100%普及すれば、火災による死者を7割減らせると試算されています。

東京消防庁 震災対策課防災調査係・並河忠宏主任:
近年の地震の場合、直火よりも電気が原因とする火災が多い傾向にあるので、揺れで電気を止める感震ブレーカーの設置が必要。

しかし、感震ブレーカーの首都近郊での普及率はわずか2割にとどまっています。

災害を我がことと捉え、地震に備える覚悟が私たち一人一人に問われています。