コーヒーの苦味や褐色、香りのもとになっているのは「クロロゲン酸」で、「コーヒーポリフェノール」ともいわれるこのポリフェノールは体の中でその大半がフェルラ酸に代謝されます。
つまり、フェルラ酸の作用は、コーヒーを飲むことでも期待できるというわけです。

コーヒーの特徴的な成分であるカフェインにも高い抗酸化作用があり、2015年に発表された国立がん研究センターや東京大などの研究チームによる報告によると、「コーヒーを一日3~4杯飲む」人が狭心症や心筋梗塞などの心臓病で死亡する危険性は、「ほとんど飲まない」人に比べて36%低く、脳内出血や脳梗塞などの脳血管病で死亡する危険性は43%低いことがわかったそうです。
これは、クロロゲン酸やカフェインの両方がもつ高い抗酸化作用や抗炎症作用の相乗効果によるものではないかと考えられています。
健康的な血管を維持することに役立つことは間違いないので、それが認知症予防にもつながる可能性は高いと言っていいでしょう。
1日3杯以上飲むと…
それを示唆するのが、新潟大学大学院の中村和利教授らの研究グループが新潟県村上市、関川村、粟島浦村に住む40~74歳の人たち1万3757人を対象に行った疫学研究の結果です。
コーヒーを一日3杯以上飲むグループの認知症の発症リスクは、まったく飲まないグループの約半分だったことがわかったのです。

カフェインには記憶力を高める働きがあることもアメリカのジョンズホプキンス大学の研究結果などから、近年明らかになっているので、じゃあもっとコーヒーを飲まなくてはという気になるかもしれませんが、問題はカフェインを取りすぎると別の弊害が起きることです。
日本ではカフェイン摂取量の目安は特に定められていませんが、欧州食品安全機関(EFSA/European Food Safety Authority)の基準を参考にするなら、一日あたり400mg(妊婦の場合は一日200mg)までを上限にするのがよさそうです。
ドリップコーヒー100mlに含まれるカフェイン量は60mgくらいなので、1杯を150mlとするならば一日3杯くらいであれば健康を害する心配はないでしょう。
眠気覚ましを目的とするエナジードリンクのたぐいは、大量のカフェインが含まれているものもあるので注意が必要です。