私がお伝えしたいのは「朝令暮改の中国ゼロコロナ政策」です。

北京市では7月11日から、映画館や図書館などへの立ち入りをワクチン接種者のみに認めると発表していましたが、ネット上の反発を受け事実上の撤回に。

さらに、一部の地域では自宅隔離者に監視用のリストバンドを配ったものの、こちらもすぐ撤回しました。

ポイントはこちら。「二転三転、ちぐはぐの中国ゼロコロナ」注目です。

【注目ポイント・記者解説】

7月6日、北京市当局は新型コロナ対策の記者会見の中で、11日から映画館やスポーツジム、図書館など多くの人が集まる場所を利用する場合、ワクチン接種をしなければならないと発表しました。

これまで、多くの場所に出入りをする出前の配達員らにはワクチン接種が義務付けられていましたが、今回の発表は北京市に住む一般市民に対するもので、中国のネット上では、公共機関の利用に対してのワクチン接種の義務化に多くの不満や反発の声が出ました。

しかし、この対応が一夜にして事実上撤回されたとの記事を「北京日報」が報じたのです。

「北京日報」は、北京市当局の新型コロナ予防部門の担当者への取材として、「厳格な体温のチェック、72時間以内のPCR検査が陰性であれば、北京市の公共機関などの場所に入場できる」と報じました。これは、ワクチン接種義務化の事実上の撤回を意味するもので「朝令暮改」となったとみられます。

さらに13日から14日にかけて、中国のSNSで別の「不透明」なコロナ対策が再び炎上することに。それは、電子リストバンドを使ったコロナ対策です。

海外や感染者が出ていた地域から北京市に戻った中国人などが自宅で1週間隔離される際、担当者から電子リストバンドを渡され、入浴と充電する時以外は24時間身につけることを強要されたといいます。

このリストバンドは、体温や血中酸素などを自動的に計測する仕組みになっているということですが、データがどこに送信され、どのように管理されているかなどについては不明だといいます。

SNS上にリストバンドの写真などが投稿されると、情報は瞬く間に拡散され、「人権侵害だ」「犯罪者なのか」「プライバシーはどうなっている」などといった不安や反発の声が、こちらも多く出ることになりました。

今回のリストバンドは中国政府が正式に行った対策ではなく、コロナ感染者の管理などを現場で対応する社区(日本の町内会に相当する)とよばれる組織の判断で行われたとみられています。

共産党機関誌の人民日報傘下の環球時報・元編集長は、SNSで「新型コロナの防止策は、国民の希望と納得を十分に考慮した上で、慎重に導入される必要がある。そうすることで、(政府は)世論との無用な摩擦を避けることができる」と述べています。

まさに「朝令暮改」や「不透明」な今回のコロナ対策ですが、こういったことが続けば市民は当局への不信感を募らせ、コロナ対策そのものへの信頼は揺るぎかねません。

(FNN北京支局 河村忠徳)

河村忠徳
河村忠徳

「現場に誠実に」「仕事は楽しく」が信条。
FNN北京支局特派員。これまでに警視庁や埼玉県警、宮内庁と主に社会部担当の記者を経験。
また報道番組や情報制作局でディレクター業務も担当し、日本全国だけでなくアジア地域でも取材を行う。