「場外」で2つのサプライズ
G20大阪サミットは予想通り各国の思惑がバラバラで、貿易、データ、環境などいずれも玉虫色の合意だったが、「場外」で2つのサプライズがあった。
どちらもトランプ絡みで、まず米中首脳会談では習近平に対し関税先送りとファーウエイへの輸出を容認。さらに帰り道に板門店で金正恩と会談した。
米中貿易戦争の落としどころは見えていないし、北の核廃棄も交渉が再開されたわけでもないと言われればそれまでだが、これで経済、安保ともに危機を脱したことを週明けの市場は好感して株は上がった。みんなホッとしたのだ。
「無差別」と「公平」

G20で議長国の日本が奔走し、貿易で米国の嫌がる「無差別」、中国の嫌がる「公平」というワードを両方入れて、何とか首脳宣言を出し、トランプも習近平も孤立させなかったことは米中の休戦と無関係ではない。
地政学的強み

G20を今年日本で開催したことは地政学的に意味があった。これが欧州なら反トランプでまとまらなかっただろう。しかもメイ、メルケルはレームダックで、マクロンも弱い。その点、唯一政治経済ともに安定し、米中にも近い日本は仲介役に適している。
去年のG7で政権基盤の弱いカナダのトルドー首相が欧州に引っ張られて米国に強く出すぎトランプを怒らせて決裂してしまったのに比べて今回の安倍首相の仕切りはグッジョブだった。
もうひとつはまさに地理的な要因で、習近平は直前に平壌に行って金正恩と会い、大阪でトランプと会った後、トランプは板門店で金正恩と会った。この3つの会談は「つながって」いると思う。
主役はトランプと習近平

今回のG20プラスαの外交舞台の配役は、
主演男優ドナルド・トランプ、
主演女優が習近平、
金正恩が子役デビューといったところか。
そして劇場支配人は安倍晋三。
癖のある役者ばかりで、仕切りが悪いとまさに世界危機の引き金を引いてしまう怖さはあったが、終わってみるとなかなか面白い見世物だった。
【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】
【4コマ漫画:横川寛人】

