父が自らの歩みを息子に語り継いだ、あるラジオ番組が話題を呼んでいる。

ジョン・カビラさんと父・川平朝清さん。
親子の対話の枠にとどまらない沖縄の戦後史に光を当てた物語が、わたしたちに与えてくれるものとは。

戦後史を息子に語るラジオ「ストーリーズ・オブ・オキナワ」

FMラジオ局「J-WAVE」で、2019年6月23日に放送された「ストーリーズ・オブ・オキナワ」。

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ナビゲーターのジョン・カビラさんが対談するのは、当時92歳の父・川平朝清さん。

ジョンカビラさん:
6月23日の沖縄慰霊の日の夜、私ジョンカビラが、父・川平朝清に行ったインタビューをお届けしています。ジェネレーション TO ジェネレーション、ストーリーズ・オブ・オキナワ

父が自らの歩みを息子へと語り継ぐ番組が高い評価を得て、今も話題が話題を呼ぶのはなぜなのか?

ジョン・カビラさんの父、川平朝清さん。

台湾で生まれ育ち、17歳の時、大日本帝国陸軍2等兵として敗戦を迎えた。家族と沖縄に引き揚げたのは、沖縄戦の翌年1946年のことだった。

ジョン・カビラさん:
お父さんは初めて沖縄の島の土を踏む。どんな印象でしたか?

川平朝清さん:
もう別世界でしたね。かねがね沖縄の良さ、沖縄の自然の良さ、特に首里城。母からあそこは木々が豊かに茂っていてね、実にきれいなところでねっていう話ばかり聞いていた。「戦破れて山河あり」。母はこれを見て、「戦破れて山河も残らなかったわね」。この言葉忘れられないですね

「テレビ局を沖縄で」 夢のためアメリカに留学

川平さんが最初についた仕事。焼け野原に散逸した文化財を拾い集めた博物館で、アメリカ軍の将兵を相手に務めた通訳だった。

川平朝清さん:
占領軍の将兵に沖縄にもこのような文化はあったという、沖縄の遺産を見せるという目的があったわけですね

沖縄文化の復興と普及に尽力した兄・朝申さんの勧めで、川平さんはアメリカ軍が運営したラジオ局「AKAR」で戦後、沖縄のアナウンサー第1号となった。

川平朝清さん:
「AKARは、アメリカ軍琉球列島軍司令部 民間情報教育部によって所有され、運営されている放送局であります」ということを言わなければいけなかった。

1953年、26歳の川平さんは、ある夢をもってアメリカに留学する。

ジョン・カビラさん:
そもそも留学を志したときに、テレビ局を沖縄で、という発想はもうあったんですか?

川平朝清さん:
ありましたね。放送というものはパブリック(人々の)、インタレスト(関心) & ベネフィット(利益) & ウェルフェア(福祉)のためにあるべきだ。この3つの言葉は非常にこびりついていますから、これこそ沖縄に必要なメディアだという、そういう確信を得ましたね

留学の間に沖縄テレビが開局し、アメリカで結婚した川平さんは琉球放送に声をかけられた。

まだテレビ放送がなかった先島諸島をカバーする沖縄放送協会の設立に携わるなど、その歩みは人々に情報と教育、娯楽を届けてきたラジオ、テレビの黎明期からその後の発展とともにあった。

川平朝清さん:
もうこういうのをジョンさんがやっているということは

ジョン・カビラさん:
面白いですね、何の因果か

川平朝清さん:
因果じゃないですよ、これは冥加ですよ

ジョン・カビラさん:
そうですね、なんの冥加か(笑)

川平朝清さん:
嬉しいことです

父から託されたバトンに息子は…

メディア人として一線で活躍するジョン・カビラさん。父から新たなバトンを託された。そんな気がしたそうだ。

ジョン・カビラさん:
戦火によって荒廃しきった沖縄に戻って、何かしなくてはならない。何か沖縄のみなさんのために奉仕したい。たぶん、生き残ったからこそ、そういう義務があるんじゃないかという強い思いというものは感じましたね

ジョン・カビラさん:
そういう思いに触れることができて、身が引き締まると同時に、その放送の役割は一体何なんだろうかということを、あらためて感じさせてくれる貴重な時間でした

沖縄が抱える基地問題… 今の放送の役割とは?

番組では、沖縄の今にも焦点を当てる。

ジョン・カビラさん:
観光の島でもありつつ、当然避けてはならないのが基地の問題ですよね

川平朝清さん:
中央政府の沖縄施策、特に基地に関する施策についてはもう失望が大きいですね

ジョン・カビラさん:
なぜでしょう?

川平朝清さん:
大浦湾というところは、海が深いので原子力潜水艦も着けられる。場合によっては航空母艦だって入ってこれるっていう

川平朝清さん:
普天間の代替基地「+α」がすっごく大きい規模を持っているということを感じているから、何度も国会議員の選挙でも、県知事の選挙でも基地に対する反対をする。また、県民投票でも大多数がこれに反対する。ということからすると、あの基地は造るべきでないという気持ちは、わたしも同意するところですね

ジョン・カビラさん:
60年近く放送に関わった父が思う、いまの放送の役割とはなんでしょうか?

川平朝清さん:
グッドクエスチョンですね。でも、わたしは原点に返ると思うんですよ。人々の興味関心と利益と、そして福祉のためにあるべきだと。そのためにメディアは使われるべきだと思うんです

時代を映し出す沖縄の物語の数々は、いまを生きる私たちに新たな気付きをもたらしてくれるようだ。

(沖縄テレビ)

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