菅政権で支援も…「不妊治療を考えるきっかけに」

2019年に日本で生まれた赤ちゃんは86万4000人で、過去最少となった。さらに2021年の予測として、70万人台まで減り、さらに減ると予測されている。

女性のライフスタイルの変化で、「産む」「産まない」、さまざまな選択肢がある中、今、「産みたくても産めない」人が多くいる。

2020年4月、広島駅前にある高度な不妊治療専門クリニック「広島HARTクリニック」に、香川県から通う女性がいた。不妊治療を始めて4年目となる。

香川県から通院する三好妃美さん:
いつ授かれるかわからない状態で、コロナもいつ落ち着くかわからない状況で、年に12回しかないチャンスなんで、1回でも無駄にしたくないという気持ちはある

不妊とは、妊娠を望む健康なカップルが、1年たっても妊娠に至らない状態を言い、日本では5.5組に1組が不妊に悩んでいると言われる。

不妊治療はさまざまなものがあり、保険が適用される「タイミング療法」、保険適用外で精子を子宮に注入する「人口授精」、高度な治療となる「体外受精」、「顕微授精」まであり、段階的に費用も上がっていく。

高度な不妊治療で産まれる赤ちゃんは増え続け、現在、年間約5万7,000人。約15人に1人の割合で誕生している。

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生殖補助医療を行うクリニックは、全国に約600施設あり、広島には約5施設ある。

香川にはないため、2020年から広島に通う三好さん。
これまで4年間の治療費は、約300万円。金銭面だけでなく、体と時間、そして心の負担が重くのしかかる。

香川県から通院する三好妃美さん:
不安はありますよね。不妊治療って、先が見えない状況で、授かれるかどうかもだし、金銭的なこともそうだし、さらに先が見えないというか、闇が深くなったというか

新型コロナウイルスの感染拡大が、患者をより不安にする中、9月、菅政権の誕生で風向きが変わる。

2022年度の開始を目指し、不妊治療の保険適用の拡大を検討。
その前段階として、2021年4月から支援を広げ、年収制限など制度を見直す方針を打ち出した。

治療中の広島の女性たちは…。

治療歴3年・30代女性:
すごくいいことだと思いました。(これまでの制度は)助成金もいろいろ条件があって、年収(制限)が低めに設定してあるので、(夫婦)2人で共働きだと、(これまでは)そこでひっかかっちゃうんですよね。すごく期待しています

治療歴半年・40代女性:
ぜひぜひ実現してほしいです。年齢の制限がなければ、まだまだ治療したいという思いもありますし、ぜひとも助成制度を利用して希望をかなえられたらいいなと思います

一方、医師は、これを機に社会の理解を深めたいという。

広島HARTクリニック・向田哲規院長:
不妊症治療を1つの病気ととらえて、みんなで考えていくきっかけになると思う。不妊治療を受ける手助けになる、そういう社会や組織や会社になっていけば、ゆくゆくは子どもを育てやすい世の中になっていくことにつながる

企業が“休暇”の新たな取り組み 職場で理解深めることの重要性

不妊治療への理解を深めていく必要性がある。中でも特に、企業や職場にそれが求められる。

実は、不妊治療中の働く女性のうち、95.6%が「不妊治療と仕事の両立が困難」と明らかにしている。さらに、4人に1人が、両立できず退職している。

退職の理由としては、治療の計画が立てづらいため「急な休みが必要」、「通院回数が多い」、「周囲に相談しづらい」などが挙げられている。

ただ、こうした中、今、県内で新たな取り組みをする企業も出てきている。2020年4月、新たな制度を作ったのが広島銀行。従業員は5000人で、その半分以上の2624人が女性。

新制度「ケアキュア休暇」は、これまでの有給とは別に、介護や参観日、体調不良など、家族や自分のために年間7日、半日単位からでも取得可能な休暇制度で、不妊治療にも利用可能としている。

広島銀行人事総務部 人事企画課・木村善行課長代理:
昨今の晩婚化というところもありまして、不妊治療で休暇を取得したいという声が非常に多く出ていました。不妊治療でその方だけが休みを取ってしまうという組織風土にしてしまうと、本人も若干後ろめたさを感じてしまうと思うので、誰でも取得可能な制度にした

敢えて不妊治療に特化せず、誰もが気軽に理由を言わず休める。最初の1カ月だけで、約200人が利用した。

広島銀行人事総務部 人事企画課・木村善行課長代理:
ワークライフバランスの中で、家族と過ごす時間、自分の体調を整える時間は必要になってくると思いますので、休暇を率先して、積極的に取得してもらえたらいいと思っています

一方、廿日市市の医療法人「ハートフル」。

病院や福祉施設など、13の事業所で540人が働く。そのうち、約8割が女性従業員という中、2019年12月に新たに設けたのは、不妊やがんの治療に使える10日間の特別休暇。

働き方改革のためのプロジェクトチームを作ったのが始まりで、職員の声を聞く中で生まれた制度だった。

医療法人ハートフル 多様な働き方改革プロジェクトチーム・立花英美チームリーダー:
(制度を)作ることが、その職員を応援しているよということにつながと思う。今、人出不足の状況の中で、この法人で働き続けたいと思ってくれる、そういう制度があるなら、わたしも入って仕事がしたいと思ってくれるとか。そういうことで法人の発展につながる

不妊治療は「恥ずかしいことでも悪いことでもない」

今回、取材に協力してくれた、今、不妊治療をする女性たちは、「家族に内緒だから」、「職場には言っていないから」顔は出せない、でも知ってほしい、そんな思いを伝えてくれた。

患者を支援する団体の代表が、その現状を代弁する。

NPO法人Fine・松本亜樹子理事長:
不妊治療をしている人は、なかなか自分から言わないから知られていない。病院に行くことを後ろめたく思ったり、罪悪感を持ってしまう方がすごく多い。その辺が改善されることがすごく望まれていて、治療を受けることは、恥ずかしいことでも悪いことでもないんだよということを、たくさんの方に知っていただけたらすごくありがたい

香川県から治療に通っていた三好さんから、うれしい報告があった。体外受精で赤ちゃんを授かり、現在妊娠6カ月とのこと。

香川県から通院していた三好妃美さん:
最近、胎動を少しずつ感じるようになって、やっと実感が沸いてきた。(不妊治療を)続けて良かったなと思っています

国の支援拡充があれば、2人目の挑戦も検討できそうだと話す三好さん。笑顔が広がっていくことを願うばかりだ。

(テレビ新広島)