日本の刃物メーカー「貝印」がインドで人気

カミソリや包丁、爪切りなどの刃物メーカーとして知られる日本の「貝印」が、いま国境を越えたインドで高い支持を得ているという。

その、人気の商品がこちらだ。

提供:貝印株式会社
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その名も「KAI Tsumekiri」

名前の通り“爪切り”なのだが、日本で売られているものとは違い、インドの生活習慣に合わせた仕様になっているのが特徴だ。それは、爪切りの内側に付いている刃物のようなピック部分。

提供:貝印株式会社

このピックは、素手でご飯を食べるインドの習慣に合わせて作られている。食時の際に爪と皮膚の隙間に汚れなどがたまるため、その汚れを取るためのものなのだ。

このインド仕様の爪切りは人気となり、現状前年比で売上数量が272%。特にオンライン販売が好調で、Amazonインドの海外爪切り部門でNo.1も獲得したという。

2012年のインド進出から年々全体売上も上がっているそうで、売上高前年比は3.2倍(18/19年度)、さらには輸出も加わり、5.6倍(19/20年度)と激増。新型コロナによるロックダウンで今年4月は完全に販売がストップしたにも関わらず、6月にはインド国内売り上げが史上最高を記録したとのことだ。

インド仕様に開発したのは分かるが、なぜこれほどの人気となっているのか? インドの爪事情などと合わせて、貝印株式会社の担当者に詳しい話を聞いた。

インドでは爪を歯でかじる人も

ーーインドで爪切りを販売したのはなぜ?

現在、現地にて生産・販売をしているツメキリ・カミソリ・包丁の3つは、日本の幅広いラインナップの中で特に生活必需品としてインドで需要が高いのではないかという狙いがありました。

インドでは食事を手で食べる文化が残っていながら、いまだにナイフなどでツメを切る人も多く、ツメキリメーカーのトップランナーとして、ツメキリを販売するだけでなく、ツメキリで衛生的に爪を切る文化を作っていけないかという思いがありました。

ーーインドではどうやって爪の手入れをしていたの?

日本ほど衛生に対する意識が高くなく、貧富の格差も大きいです。そのため、生活のレベルによって爪の処理に対する意識のばらつきが大きくなり、中には、文房具のはさみで処理をしたり、自分の歯でかじったりする人もいます。家庭にツメキリがなく、理髪店で散髪する際に、あわせて爪を切ってもらうこともあります。

デリー、ムンバイ、ベンガルールなどの大都市では爪の処理への意識が比較的高いですが、そうではない農村部などでは、そもそも爪の処理が必要という教育がいきわたっていない人も大勢います。


ーーなぜインドで支持を得られているの?

具体的な反響の声は届いていませんが、コロナの影響で、インド人の間で健康や衛生に対する意識が高まり、爪を短く清潔に保つことの大切さが、より理解されやすくなっているので、それが売上に繋がっていると推測しています。

爪切りについて、お客様のフィードバックには、「切れ味抜群」との声をいただいております。やはり、品質の良さが評価されています。


ーーコロナで爪に対する考えが変わった?

衛生観念については急激に変化していますが、爪をきれいにしようという意識は、まだまだそれほどでもないように感じます。

インド人は手でものを食べます。だからこそ、我々のような企業がミッションとして、インドに衛生観念と清潔感を新たな文化として取りいれていくための活動を行っていかなければならないと強く感じています。

その第一弾として、デリーの公立学校の生徒1,500人にツメキリの無償配布を行いました。教育用のチラシとともに一人一人手渡しています。

提供:貝印株式会社 インド向けの教育用チラシ

インドの家庭を訪問して制作

ーー「KAI Tsumekiri」について教えて

爪の間の汚れを取るピックが大きな特長です。日本では切った爪が飛び散らないようケースが付いているのが一般的ですが、インドではあまり見かけないため、差別化するため爪飛び散り防止トレイを付けています。

また、さまざまな層に届きやすいように、カラーリングも豊富に仕上げました。現在現地で売られているツメキリは刃先の質が良くないので爪を切るというよりも、ちぎっているイメージに近いため、刃先の質の高さも差別化ポイントになっています。

提供:貝印株式会社

ーーこだわった部分は?

インドの家庭にデザイナーと開発者が実際に訪問し、使用しているツメキリの調査確認と貝印の製品を見せ、手に取ってもらったモニタリングよりツメキリを作りました。爪の間の汚れを取るピックの形状についても、数種の試作品を現地インドの家庭を訪問し、実際に試していただき、モニタリングを行い選定して製作しました。


ーー今後の活動は?

新型コロナの感染拡大防止に向けて、3月からツメキリを公立学校や警察に無料配布する活動を開始しております。南部アンドラプラデシュ州ビシャカパトナムの学校にも約3,500個を送付済みで、全土封鎖が始まった影響で未配布の状態ですが、措置緩和で現地の準備が整い次第、生徒に配る予定になっています。

新型コロナウイルス感染拡大防止に向け、衛生面から皆様に一人一個の“Myツメキリ”をお持ちいただき、ツメを短く清潔に保つことを推奨していきます。


ーーちなみに、日本で買えるの?

日本の国内営業本部でも発売当初から販売を検討しておりますが、現在国内流通はしておりません。インド以外では、韓国・中国で一部流通しています。Amazonインドからが、日本国内の方が手に入れられる手段です。今後の日本での販売予定は未定です。

提供:貝印株式会社

なおAmazonインドでは199ルピー(日本円で約283円)で販売しているという。

インドの手で食事する文化に、日本の“爪切り文化”をうまく持ち込んだことで、人気となった貝印の爪切り。さらに、新型コロナウイルスによって衛生への意識が高まったことも追い風となったようだ。

このように普段我々が使っている日本の製品が、まだまだ海外で人気となる可能性はありそうだ。

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