2025年12月に発表された調査によると、2025年1月から11月までの飲食店の倒産件数は、820件。

年間での倒産件数が過去最多を更新するペースという事態に陥り、老舗の飲食店にもその波が来ているようです。

大阪で最も古いといわれる喫茶店は建物が老朽化したものの、決して多くはない利益から建て替え費用を賄えず閉店。

多くの有名芸人に愛されたうどんの名店は、店主の高齢化で閉店。こうした例がたくさんあるようです。

しかしこの2店に共通しているのは、”後継者”が現れたこと。喫茶店の後継者は別の場所で間借り営業で再開する予定で、うどんの名店の後継者は一度は失われた味を再現したところ、多店舗経営につながりました。

店の場所や名前が変わっても受け継がれていく「名店の魅力」に迫りました。

■100年超の老舗喫茶店、閉店の理由と店主の本音

【田中友梨奈アナウンサー】「大阪市中央区にやってきています。100年以上続く喫茶店があす(2025年12月27日取材)閉店を迎えるということで取材に来たんですが、まだ開店から30分もたっていないのに、行列ができています」

田中アナがやってきたのは大正10年(1920年)創業、大阪で最も古い喫茶店ともいわれている平岡珈琲店。

100年以上続く歴史に幕を下ろす理由とは…。3代目店主・小川さんにお話を伺いました。

【平岡珈琲店3代目店主 小川流水さん(68)】「2018年の大阪北部地震ってありましたよね。あの時に、この建物もかなり傷んだんですよ。建て替えをするか、それか建て替えできないんだったら移転するか、考えないといけない。どちらにしたって、相当な額のお金がかかる」

【田中アナ】「どれくらいかかるものなんですか?」

【平岡珈琲店3代目店主 小川さん】「建て替えするとしたら4000万円、5000万円ぐらい。ずるずる続けて南海トラフの地震が来たらどうしよう。私の年齢も68歳ですから、一旦この店での営業は、年末で終わりにしよう」

建物の老朽化と自身の年齢を考え、祖父の代から100年以上続くお店を閉めるという決断を下した小川さん。

かなりのプレッシャーを感じながら、お店を続けてきたそうです。

【平岡珈琲店3代目店主 小川さん】「僕がやらなきゃいけないから、やってたんですよ。もうずっと辞めちゃいけない、休んじゃいけないって。僕はプライベートでは、コーヒー飲むことってないんです。仕事だからやっているだけで」

【田中アナ】「コーヒーはお好き?」
【平岡珈琲店3代目店主 小川さん】「そんな好きじゃない。やっと終わったかっていう、解放感でいっぱいですよね」
【田中アナ】「本当にお疲れさまでした」

■「第2の故郷」消滅…常連客の反応と名物ドーナツ

一方、常連客は閉店についてどう考えているのでしょうか。

【常連客】「第二の故郷というんですかね。懐かしいというか、故郷というか、原点ですね。それがなくなりますんで」

【常連客】「あした終わるっていうのも、なかなか…信じられなくて。まだ実感ないです」

せっかくなので、田中アナも、お店を長年支えてきたコーヒーをいただきます。

【田中アナ】「おいしい。そんなに苦すぎず、後の香りがふわっと優しくて、コーヒーだめって方も飲みやすい。寒かったので余計においしく感じる」

さらにこちらの揚げドーナツも大人気。創業当時から受け継がれているそうです。

■店主引退も”救世主”出現!平岡珈琲店の未来

この場所での営業は終了し、小川さんは引退しますが、間借り営業という形で平岡珈琲店は、受け継がれるのだそう。

【平岡珈琲店3代目店主 小川さん】「うちの店長、長年勤めてくれている“たむ”という女の子なんですけれども、『私がやってもいいかな』(と言ってくれた)」
【田中アナ】「救世主」

【平岡珈琲店3代目店主 小川さん】「うれしいのは、うれしいです。100年の歴史に幕を下ろしてしまうというのは、やっぱり罪悪感があるし、僕の代で終わりかいう。3代目になりますから、やっぱりいいのかなというのはあったので、継いでくれると言ってくれたときは、うれしかったですけれど。

長時間労働でもあるし、その割には収入は高くはない。計算してみたことあるんですけれども、自分の年収を自分の1年間の労働時間でざっとで割ってみたら、時給大体400円ぐらい。最低賃金の半分以下ですよ。

『本当にそれでいいの?』って、『いつでも辞めていいからね』って(伝えた)」

なぜ、たむさんはお店を継ぐ決心をしたのでしょうか。

【平岡珈琲店店長 たむさん】「100年以上続いてる喫茶店がなくなるのは、大問題だなと思いまして。

いずれ自分でもお店をやりたいなとは思っていたので、平岡がなくなるんだったら、私にやらせてくださいということで。確かにプレッシャーはあるんですけど、でも結構楽しみな方が今は多くて、頑張ろうかなと思っています」

間借り営業を行うのは、平岡珈琲店から徒歩5分ほどの場所にある、カフェ・周(あまね)。

次のお店の場所が決まるまで、ここで平岡珈琲店のコーヒーとドーナツを提供します。

【田中アナ】「(平岡珈琲店3代目)小川さんも『新しい形でまた味が残るのうれしい』とかおっしゃってました?」

【平岡珈琲店店長 たむさん】「特に。『好きにしていいよ』っていう方なので」

■珈琲店主が転身!第二の人生は剣術師範に

新たなスタートを切る平岡珈琲店。小川さんも第2の人生を歩むそうです。

【平岡珈琲店3代目店主 小川さん】「この店に入ってキャリア41年ですけど、ほぼ同じキャリア、実は剣術の稽古に費やしてきた。いわゆる剣道ではなくて、真剣や木刀を使うんですよ。メインの仕事というか、お金はもうからないでしょうけど、毎日稽古したい」

【田中アナ】「先生というか、師範みたいな感じ?」
【平岡珈琲店3代目店主 小川さん】「そうです。もうルンルンですよ。毎日、刀を振って、それ考えただけでも幸せになります」

在籍している生徒数は30人を超えるという小川さん。そのレッスン料はなんと…

【平岡珈琲店3代目店主 小川さん】「今ワンコインでやってます。一回500円で、1カ月じゃないんですよ」
【田中アナ】「私も行きたくなりました」

そして迎えた閉店の日。小川さんの最後の締め作業の様子を撮影した動画を、たむさんが送ってくれました。

長年使われてきた”のれん”は、たむさんが大事に受け継ぐそうです。

■閉店した「信濃そば」 味を再現!4年の苦闘

信頼できるスタッフが歴史を受け継いだ平岡珈琲店。

一方、一度完全に廃業となった名店の味を復活させたお店があるそうです。それが、千日前のうどん屋さん「いなの路」。

店主の山根正也さんにお話を伺いました。

【大阪うどんいなの路店主 山根正也さん】「”信濃そば”という名前のお店が、なんばグランド花月の近くにあって、芸人さんにすごく愛されたお店だった。それが2017年に廃業ということで、高齢化が原因なんですよ」

「信濃そば」は、山根さんの義理の両親が営んでいたお店。高齢化が進み、惜しまれつつも50年を超える歴史に幕を下ろしました。

■「この味を何とか残そう」4年で100万円で味を再現

当時はサラリーマンだった山根さん。一体なぜ、「信濃そば」の味を復活させようと思いたったのでしょうか。

【大阪うどんいなの路店主 山根さん】「SNSがすごかったんですよ。閉店して3年、4年たっても、『食べたかった』という声が続いていて、”信濃そば”のだしは、関西を代表する文化の一つ。この味を何とか残そうということで、私が味を再現するのに4年ぐらいかかったんですけど」

【田中アナ】「レシピとかないんですか?
【大阪うどんいなの路店主 山根さん】「ゼロです」

細かいレシピは作らず、味見をしながら感覚でだしを作っていた義父。そのため味の再現は、予想以上に困難を極めました。そんなときに背中を押してくれたのが、妻の宏美さん。

【大阪うどんいなの路店主 山根さん】「『お金でしんどかったら、私が働けばいい!大丈夫だから気にせんと行ってきなさい!』と言われたんですよ」
【田中アナ】「心強い」

【大阪うどんいなの路店主 山根さん】「『なんていい嫁さんだ。こんな嫁さんおらへんわ』と。「お小遣い制なので、そのお小遣いを全部、昆布とか鰹節とか、色んな節があるので、それに全部お金つぎ込んで」

【田中アナ】「4年で費やした金額はどれぐらい?」
【大阪うどんいなの路店主 山根さん】「多分100万円近くなると思います」

■ダウンタウンが愛した「信濃そば」 

味の復活へ突き進んだ山根さん。ある人物の存在も大きかったそうで…。

【大阪うどんいなの路店主 山根さん】「一番大きかったのがダウンタウンの2人なんですよね」

【大阪うどんいなの路店主 山根さん】「一番売れているのが肉うどんなんですけど、肉うどんは浜田さんが大好きで、2人とも『食べたい』と、ずっとテレビでも言われていたので」

ダウンタウンが愛した肉うどん。田中アナも食べさせてもらいました。

【田中アナ】「甘いですけど、スーって染み渡るような、ホッコリするような優しい味。肉うどん大好きなんです」

山根さんの努力は実を結び、なんと3店舗まで拡大。更なる野望を教えてくれました。

【大阪うどんいなの路店主 山根さん】「東京には出店したい。芸人さんたちが足しげく通っていただいた”信濃そば”の味を、東京でも食べられた方がうれしい。物件があったら教えてください」
【田中】「福岡ならご紹介します」
【大阪うどんいなの路店主 山根さん】「福岡も出したいと思っています」

飲食業界の荒波の中、いまだから見えてくる「受け継ぐ価値」。

老舗の味と伝統を守る人々の熱い思いが、未来への希望を照らしているのかもしれません。

(関西テレビ「newsランナー」2026年1月9日放送)

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