「あのニュースの今」3回目は、日本中が注目したコメ問題の1年を振り返る。生産者だけでなく、消費者も農業のこれからを考えるきっかけになった1年だったかもしれない。

(吉村知事)
「名称は“ゆきまんてん”」

2025年2月、県はコメの新品種の2027年デビューを目指すと発表。
応募された3112件の中から、村山市の小学5年生が考えた「ゆきまんてん」が選ばれた。

(吉村知事)
「“つや姫”“雪若丸”に続くブランド米になってほしい」

「ゆきまんてん」は「雪若丸」と「やまがた122号」の2つを交配した品種で、最大の特徴は「高温に強い」こと。

進む温暖化や異常気象に、コメ作りの現場も対応を迫られた。

(リポート)
「暑さと水不足の影響で、土が乾いてひび割れています」

7月、穂が出る出穂の時期に雨が降らず、田んぼの一部が干上がっていた。

(グループ農夫の会・稲村和之代表)
「我々もかつて経験したことがない被害になってくるのではないかと心配していて、夜も寝られない状態」

「これが今年のコメです」

船山ファームの船山隼人さん。
白鷹町で、総面積約45ヘクタールの田んぼでコメを育てている。

(船山ファーム・船山隼人さん)
「(Q.田植え前の苗を育てる段階が負担?)ビニールをはがすまでが一番大変」

季節外れの高温で、苗の成長が止まらないよう徹底した管理をしていた。

(船山ファーム・船山隼人さん)
「当初の冷害・寒さへの対応から、暑さに対応するコメ作りに変わってきている。毎年ビクビクしながらっていうのが正直なところ」

(おーばん山形東店・縄研史店長/2024年8月)
「きのう入荷して並んでいたが、ほしい客にコメが提供できないのは心苦しい」

2024年、コメ不足でスーパーからはコメがなくなった。
「令和のコメ騒動」と呼ばれるほどで、その影響は2025年も続いた。

コメの価格は最高値を更新し続け、3月には5キロあたり4000円台に。
こうした状態を打開しようと、政府が放出したのが「備蓄米」。

(リポート)
「県内でも流通が始まっている備蓄米。ヤマザワでも販売が始まりました。オープン10分前にすでに200人近い人が列を作っています」

県内のスーパーでも2021年度産の「古古古米」120トンを調達し、6月に発売を始めた。

(購入した人)
「家族8人いるので10日で10キロ、1カ月で30キロ食べる。何万円もかかる。銘柄米は去年の2倍。いかに安くておいしいものを買うか」

放出された政府備蓄米は約61万トン。
これによりコメの価格は7月に5キロあたり3542円まで下がった。

(リポート)
「とても強い日差しが照りつけていますが、季節はしっかり秋へと進んでいます。私の後ろでは稲刈りが行われています」

新米が流通すれば、価格は落ち着く。
みながそう期待していたが…。

2025年、JA全農山形は農家への前払い金にあたる概算金を一等米60キロあたり、はえぬき・雪若丸・つや姫いずれも2024年から1万1500円引き上げ、過去最大の上げ幅に。
コメの在庫を確保するための対応だったが、価格の高止まりは続いた。

(客)
「新米を食べたいが手が伸びない」
「今週孫が来るから新米を食べさせようと。今後は古米に戻るかもしれない」
「新米を待っていた買うつもり。きっと高いが生産者のことも考えないと」

一時は下がったコメの価格だが、新米の流通が価格を押し上げる結果となり、11月には平均価格が5キロ4335円と、最高値を更新している。

(鈴木憲和農水相)
「生産者・消費者も先が見通せる農政を実現したい」

10月に発足した高市政権で農林水産大臣に抜てきされたのは、県2区選出の鈴木憲和衆院議員。

(鈴木憲和農水相)
「価格も含めて安定性が先の投資も含めれば考えなければならない一番の要素。需給バランスがこういう状況なので、来年の目安はこのくらいと生産していくのが基本」

早速、鈴木大臣が示したのは2026年産の主食用米を「減産」とする方針。
石破政権の「増産」からの方針転換だった。
過剰な供給による価格の下落を防ぐのが目的の1つで、2025年の収穫量の見込みから大幅に減らし、711万トンにする方向で検討が進められている。

11月に行われた「令和の百姓一揆やまがた」。
県の内外から約140人が集まり、日本の農業の危機的状況に声を上げた。

(消費者)
「若い人が農業に就けるような基盤があればいいと思う。自分たちが生きられる山形県であってほしい」

(生産者)
「農業を守ってもらいたい、日本全国の農業を。跡継ぎがいない。そういうのをなくしてもらいたい、それが一番」

県内の農家の平均年齢は67.5歳。
また、65歳以上の農家が占める割合は7割を超えている。
そして2月1日の時点で、県内で「自営農業」を主な仕事とする農家は3万109人と、5年前から2割以上減少。高齢化と担い手不足の問題は進む一方。

(船山ファーム・船山隼人さん)
「なぜ農業界に人がいないかというともうからないから。設備投資・機械更新ができないと農業を続けられない。『高米価・借金返した、ああ安心して辞められる』その方が賢いのかもしれない」

12月、白鷹町の農家・船山さんの元を再び訪れると、あるものを見せてくれた。
11月に納車されたばかりの大型トラクター、価格は1400万円。

(船山ファーム・船山隼人さん)
「これかなり大きいやつ。機械代・資材代・人件費…毎年上がるので、昔の米価に戻ったらとてもじゃないけどやっていけない」

これだけ大型のものを購入したのには理由がある。
この先、地域でコメ作りを辞める農家がどんどん増え、その田んぼでも作付けすることを見据えているから。
「農業を守ることが地域、そして地方を守る」船山さんはそう信じている。

(船山ファーム・船山隼人さん)
「物価高で、目先の生活に目は向くが、長い目で見ると未来に食べられるか・食べられないのか。しっかり農業者・消費者の理解を深めて、国産でしっかり食べられる10年後を創造したい」

※権利の関係で映像を一部編集して公開しています

さくらんぼテレビ
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