日本将棋連盟は、今月10日に福間女流六冠がタイトル戦の対局規定の見直しを求めて記者会見を開いたことを受け、「対局日程が産前6週間、産後8週間と重複時は対局者の変更を行う」という規定を削除すると発表しました。
また、「女流棋士公式戦番勝負対局規定」の公式戦番勝負対局規定(仮称)検討委員会を立ち上げることも発表しました。
この決定を受け、福間香奈女流六冠は「前向きに、またありがたく捉えております。よりよい環境整備がなされることを切に希望致します」などとコメントしました。
■福間女流六冠コメント全文
【福間香奈女流六冠のコメント】
「日本将棋連盟が問題規定を削除し、また検討委員会を立ち上げることについて、私どもとしても前向きに、またありがたく捉えております。
もっとも、未だ報を受けたばかりであり、今後具体的にどのような対応がなされるのかについては引き続き注視して参りたいと思います。
将棋界の発展のため、今後も前向きな実りある議論が進められ、よりよい環境整備がなされることを切に希望致します。そのために我々もできうる限り尽力して参る所存です。
いつも支えてくださるスポンサーの皆様、そしてファンの皆様には深くお礼申し上げます。取り急ぎのコメントとさせていただきます」
■これまでの経緯は…
女流棋士のトップ、福間香奈女流六冠(33)は去年10月に行われたタイトル戦で、重いつわりなどを理由に、日本将棋連盟に対し、対局の延期を求めましたが認められず「不戦敗」となりました。
当時は、妊娠・出産についての規定はなく、「感染症の”り患”や総合的に妥当と判断される場合に、対局日を変更できる」とされていました。
さらに連盟は、ことし4月、『タイトル戦の日程に出産予定日の6週間前から産後8週間までの期間が一部でも重なる場合は、対局者を変更する』という新たな規定を設けました。
つまり、タイトル保持者の妊娠が、その期間に重なると対局ができず「事実上の不戦敗」となり、タイトルを手放すことになります。
■福間女流六冠「将棋界の未来に不安」
こうした状況を受け、福間女流六冠は今月10日に記者会見を開きました。
【福間香奈女流六冠】「私にとって将棋は全てであり、何にも代えがたいもの。本来なら素直に喜ばしいはずの妊娠を素直に喜べず、どうしようもなく苦しかったです。 今いる女流棋士やこれから目指す女の子たちが安心して頂点を目指せる将棋界であってほしい
明るい将棋界になってほしいと望んでいるのですが、将棋界の未来に強い不安があります。これがずっと運用されていくと、将来『女流棋士になりたい』と思う子が少なくなると私は思うので、なんとかしないといけない」
福間女流六冠は「産前6週・産後8週の期間内でも、本人の体調や医師の意見に応じて出場可能とすること」や「タイトル保持者の場合、暫定王者制度を設けるなどし、妊娠・出産で地位が事実上降格することがないようにすること」などを求めていました。
■日本将棋連盟の対応は…
日本将棋連盟は会見を受け、15日、緊急常務会を開催し、「対局日程が産前6週間、産後8週間と重複時は対局者の変更を行う」という規定を削除することを決定。
そのうえで、「妊娠・出産が対局日等の変更事由に該当すること」を規定上明示した上で、可能な限りの調整を行うことも決めたと明らかにしました。
これにより、対局者が変更されるのは「対局日変更の検討・調整を行ったものの、母体の安全や棋戦の進行上、委員会により今期の番勝負の出場が困難と認定された場合」となり、「対局者が妊娠している場合、その他健康上の特別な事情を有する場合には、委員会は、対局日の変更等を含め番勝負の実施方法について検討し、可能な限りの調整を行う」こととなります。
そして、「公式戦番勝負対局規定(仮称)検討委員会」を立ち上げ、「妊娠・出産による影響で対局者変更となった場合の代替え措置」について、来年4月までに案を提出する方針だということです。
■清水市代会長のコメント
【日本将棋連盟・清水市代会長のコメント】
「本件に関しまして、日頃から将棋界を支えてくださっているファンの皆様、関係者の皆様にご心配とご不安をおかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。
妊娠・出産を含む人生のさまざまな局面において、棋士・女流棋士が安心して対局に臨むことができる環境を整えることは、将棋連盟の責務であると強く認識しております。
今回の見直しを一つの出発点とし、検討委員会での議論や女流棋士、主催者、ファンの皆様のお声を真摯に受け止めながら、より良い制度と運営体制の構築に全力で取り組んでまいります」