動画配信大手NETFLIXによるメディア大手ワーナーの買収計画に、パラマウントがNETFLIXを上回る買収額で“敵対的買収”を仕掛け、激しい争奪戦になっている。この買収劇にトランプ大統領も“参戦”。大統領に近い“大富豪親子”との関係性も含め、これまでの動きを解説する。
ワーナーにパラマウントが“敵対的買収”
エンタメ界の勢力図が変わろうとしているニュースだ。

アメリカの動画配信大手「NETFLIX」が、映画で有名なメディア大手「ワーナー・ブラザーズ」の買収を発表したばかりだが、その買収劇に同じくメディア大手の「パラマウント」が参戦。NETFLIXよりも高い買収額で「待った!」をかけた。
そのウラに大富豪2人と仲良しの、あの人の影があった。
青井実キャスター:
NETFLIXが高くなるのか、映画館がなくなってしまうのか。まず、NETFLIX。皆さんご存知かと思いますが、全世界に3億人以上の会員数を誇る配信サイトです。
日本だけでも1000万人以上の会員がいますが、そのNETFLIXが今回ワーナーを約11兆1700億円で買収することで合意しました。その規模を見ていきますが、買収が実現するとシェア30%で、アメリカでの有料動画配信サービスの約30%のシェアを握るとされています。

遠藤玲子キャスター:
買収しているワーナーと言えば、古くは「風と共に去りぬ」や「カサブランカ」さらには「スーパーマン」「バットマン」「ハリーポッターシリーズ」などの名作を多く配給している会社です。NETFLIXでワーナーの新作が一足早く、今後はもしかしたら見られるかもしれないですね。
青井キャスター:
ここまでは我々にとって嬉しい話ですよね。動画配信のNETFLIXが買収した場合、ワーナー系の映画館がなくなったりとか、NETFLIXの値段が高くなったりとかするんですか?
立石修解説委員:
心配する声もありますが、アメリカでは今一部の市民から、もしワーナーへの買収が実現した場合、NETFLIXが大きくなりすぎて競争が働かなくなると。そして値上げなどが起きて、消費者のサービスの質が低下するなどと訴えた一部の市民が、買収差し止めの訴訟を起こしています。ただ、これに対してNETFLIX側は「訴訟には根拠がない」という形で反論をしている状態です。

青井キャスター:
そこで登場してきたのがパラマウントです。「ミッションインポッシブル」「ローマの休日」などで有名ですが、約17兆円で“敵対的買収”に乗り出しました。どちらが買収していくのかという中で出てきた人物が、トランプ大統領でした。
実はトランプ大統領、今回のNETFLIXの買収に否定的です。市場のシェアが大幅に上昇してしまうことで、独禁法に当たるのではないかと言っているわけです。
つまり、どちらかというとトランプ大統領はパラマウント寄りの方だということです。NETFLIXとパラマウント、買収する事業にも差があります。
そこで出てくるのがCNN。CNNはワーナーの傘下です。今回NETFLIXはワーナーを買収しますが、「CNNは要らないですよ」と言っているんです。
一方でパラマウントは「CNNは買いますよ」と言っています。そのCNNを「嫌いだ」と公言しているのがトランプ大統領です。トランプさん、なぜCNNが嫌いなんですかね。

立石修解説委員:
この2者は長い因縁がありまして、10年近く前、2016年の最初の大統領選の時からトランプさんは、CNNはフェイクニュースであると批判をしてきました。特にロシア問題やトランプさんの女性問題などを厳しく追及したケイトラン・コリンズさん。女性キャスターです。人気のある有名な女性キャスターをホワイトハウスの会見場に出入り禁止にしたこともある。つい1週間ほど前にも、コリンズさんを「バカで不愉快だ」とSNSで罵倒したんです。
CNNめぐりネトフリの買収に否定的
CNNの傘下にあるワーナーの買収について、トランプ大統領は10日に、次のような発言をしている。

アメリカ・トランプ大統領(10日):
いかなる取引であっても、その一部としてCNNが確実に含まれるか。あるいは別途に売却されることが保証されるべきだ。
青井キャスター:
買収するならCNNも含まれるべきなんだ、ということですね。つまり、CNNを不要とするNETFLIXに改めて今回、否定的な考えを示した形です。
では、トランプ大統領はパラマウント寄りなのかとなりますが、そこで気になるのがこの2人です。(世界2位の富豪である)父のラリー・エリソンさんと子のデービッド・エリソンさん(パラマウントCEO)です。

立石修解説委員:
トランプさんとこの親子は近いと言われています。アメリカの新聞ウォールストリートジャーナルによると、お父さんのラリー・エリソンさんがNETFLIXのワーナー買収計画が発表された際に、トランプさんに直接電話をかけて、もしNETFLIXがワーナーを買収すれば市場の競争に悪影響が出るだろうと伝えた。つまり、トランプさんに直接電話をかけるような関係なんです。
SPキャスター金子恵美さん:
NETFLIXユーザーとすれば、コンテンツが拡充することは大変嬉しいことですが、独禁法の指摘がどうなるのかと。そしてCNN、報道機関を買収ということは、報道介入の恐れも出てくるという問題も。

立石修解説委員:
今回の買収合戦に乗じるような形で、トランプさんがCNNの経営陣を総取り替えしたいという思惑もみられます。今のところ市場を見ると、関係各社の株価に極端な動きが見られるわけではないんです。今回のトランプさんの介入や、規制当局がどういう動きをするか、かなり複雑な買収劇です。投資家も、これは長期化するのではないかと見込んでいると考えられます。
青井キャスター:
立石さん的にはどうですか?NETFLIXとパラマウント。
立石修解説委員:
判断は難しいですよね。ただし、トランプさんは明確なような気がします。
(「イット!」12月11日放送より)
