「オムライスの名店」の復活です。長野県須坂市で長年愛されてきた洋食店「かねき」は営業してきたショッピングセンターの閉鎖を受け2024年秋に閉店しました。店主は引退を考えていましたが、常連客だった男性が経営を引き継ぎ、移転してオープンします。

ケチャップライスを炒め、薄焼きの卵で包めば、オムライスの完成。

客:
「おいしい、ばっちり!」

客:
「かねきの味だね、おいしいね」

ボリュームたっぷりの昔ながらのオムライス。須坂市の洋食店「かねき」です。客が口にするのは約1年2カ月ぶり。なじみの味が復活しました。

「かねき」は1972年オープン。須坂市のショッピングセンター「パルム」の中で営業してきました。

当初は洋食を広く提供していましたが、親戚から店を引き継いだ2代目の山口さん夫婦が厨房に立ち始めてからはオムライスが人気メニューとなりました。

「かねき」2代目・山口英昭さん:
「ボリュームがあることが高校生に気に入られたというのもあったと思いますけど、お客さんが勝手にオムライスを食べに来るようになっちゃっただけで、自分たちはそんなに意識していないです」

しかし、2024年9月、「パルム」が閉鎖。山口さん夫婦も「やり尽くした」と「かねき」を閉じることを決めました。

山口英昭さん(64):
「再オープンするほどお金をかけてやるような年齢ではないのも分かっていたので、一応、踏ん切りはついていた」

ただ、店のSNSには―。

(店のSNS)
「いつも、美味しいボリュームあるオムライスで幸せを感じておりました」「また営業再開されることを期待しつつ」
「かねきさんのオムライス大好きなので再開していただけたら嬉しいです」

再開を望む多くの声が―。

閉店から1年余り。再びあのオムライスが作られています。味を受け継ごうと立ち上がったのは小森広樹(43)さん。高校時代から通い詰める常連客です。

小森広樹さん:
「大げさですけど、心の一部が欠けたようなそんな思いはありました。復活するかなと思っていたけど、なかなかそんな動きもなかったもので、それなら私の力で何かできないかなという思いがあって」

小森さんは前の店主・山口さんの了承を得て経営会社を設立。そして10月、須坂市臥竜に新店舗を構えました。グランドオープンは11月27日に決めました。

前店主・山口英昭さん:
「『かねき』のオムライスをまた復活するってことは、すごくありがたく思っています」

基本的にメニューはこれまでと同じ。主役はもちろん「オムライス」です。

通常サイズで700グラム。LLの卵を2つ使いボリュームたっぷり。

また、常連客に人気だった裏メニュー「かねきライス」もメニューに追加しました。カレーピラフの上に、豚のしょうが焼きが乗り、こちらもボリューム満点。


新たな店長に就任するのが、小森さんの高校の同級生で飲食店で長年働いてきた鶴田智克さん(43)です。前店主の山口さんも営業が軌道に乗るまでは鶴田さんと共に厨房に立ち味の継承を図ります。

鶴田さん:
「オムライスを作る経験はなかったですけど、頑張ってやりますということで受けました」

グランドオープンを2週間後に控えたこの日、オムライスのチェックです。

鶴田さん:
「全体的にケチャップが混ざるようにしたいですね」

まずはケチャップライス。調味料を加えていきますが―。

山口さん:
「忙しい時に火から離しちゃうと冷めちゃうから、調味料をここでやっちゃった方が早い」

山口さん:
「味見してください」
「割と良いね、思ったより良かった」

続いてオムレツを作り、ライスを盛りつけますが―。

山口さん:
「うちのはもっとでかい。こことここを小さくしないで」

完成するも―。

鶴田さん:
「だいぶできるようになったので50点」

山口さん:
「ないよ、見た目悪いのでまたやり直しです。最後、卵の焼き方も真ん中が薄くなっていっちゃうので、そこを気を付けないとだめですね」

鶴田さん:
「やるからには一生懸命やって、『かねき』さんの味を継げるようにがんばりたい」

グランドオープン1週間前の11月21日。

山口さん:
「五升炊きです。40人分くらいですかね」

近所の住民向けのプレーオープンの日です。

再オープンを待ちわびた客が続々と―。

客:
「オムライス、スープ付き、S(サイズ)で」

厨房は一気に忙しく―。

山口さん:
「初めなんともなかったけど今ちょっと不安で。間に合うかなって、待たせちゃったらかわいそうだなって」

山口さんと鶴田さんが協力して調理―。

スタッフ:
「お待たせしました」

客:
「懐かしいです、1年ぶり」
「同じ味、おいしいです」

2皿注文の常連客も―。

2皿注文の常連客:
「普通盛りにしたら、ちょっと足りないかなと思ってSをもう1回頼みました。やっぱり『かねき』さんのオムライスは違うなと思って」

3時間の営業に約50人が訪れた―。

プレオープン初日を終えて―。

鶴田さん:
「オーダーの順番だったり、順番見て作る量を多めにしたり、少なくしたり、その感じがまだまだ難しかった。昔の『かねき』みたいに長い間やっていけたら」

山口さん:
「いつも県民の皆さんの頭の隅に『かねき』って思ってもらえるような、息の長い商売ができるように頑張りたい」

閉店から1年2カ月。常連客の思いで復活した「オムライス」。長年愛されてきた味とボリュームをこれからも守り続けます。

小森さん:
「お店がなかった1年2カ月間、待ち望んでいたお客さんが多いと思うので、同じものが提供できてすごくうれしい。味は変えず、量も変えず、長く続ける。それが一番の私の目標です」

11月27日グランドオープンします。

長野放送
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