安倍元総理を手製の銃で撃ち、殺害した罪などに問われている山上徹也被告の11回目の裁判は25日午後1時過ぎから開かれる予定で、前回に続いて、山上被告本人への被告人質問が実施されます。

前回の裁判では、山上被告自身の生い立ちと母が旧統一教会への信仰にのめりこんでいった経緯、それによる苦境などが語られる一方、なぜ安倍元総理を狙うに至ったのかという確信部分についてはまだ語られていません。

一方、これまでの裁判では証人として出廷した旧統一教会の信者やその家族の支援に当たる、全国霊感商法対策弁護士連絡会のメンバーで自身も元信者である神谷慎一弁護士の口から、「安倍元総理が教団の関連団体に送ったメッセージ動画」の存在が、事件とのつながりとして語られていました。

25日は、弁護側が山上被告が教団への恨みを募らせるきっかけとなった家庭内での出来事や、周囲との関係を絶って事件に至るまでの心境などについて質問する予定です。

■旧統一教会の元信者であり“二世信者”たちを支援する神谷弁護士

19日の9回目の裁判で証人として出廷したのが、神谷慎一弁護士。自身も大学生時代に旧統一教会に入信し、その後脱会して弁護士になってからは旧統一教会の信者や家族たちの支援を行っています。

その神谷弁護士が語ったのが「安倍元総理が教団の関連団体に送ったメッセージ動画」が親に信仰によって苦しむ、いわゆる「宗教二世」に与えた“衝撃と絶望”でした。

まず、神谷弁護士は弁護側の質問を受けて「宗教二世の苦しみ」と山上被告を自身に「投影した」という「二世」たちの思いについて説明しました。

【神谷弁護士】「子供の頃から統一教会的な価値観を養成、植え付けられて、成長するにつれ自分の中の思いとギャップが生まれる。

周りの友達や社会と自分は違うギャップの中で葛藤して順応できる子もいれば出来ない子もいる。それで心身のバランスを崩す方もいる。

本当に追い詰められて絶望して自死する。そういうケースも少なくありません」

■「もし山上さんがやっていなければ私がやっていたんじゃないか」という“二世”も

(Q.事件について「宗教二世」の人はどういう感想を?)
【神谷弁護士】「正確にいうと、直接私が受けた方及び弁護団が相談を受けた声として聞いてほしいですが、『山上さんは自分だ』と投影する人が何人もいました。

『もし山上さんがやっていなければ私がやっていたんじゃないか』と言う人が、何人かいました。

安倍元首相が韓鶴子(ハン・ハクチャ=旧統一教会の総裁)に敬意を表しているのを見て、いつか何か起こるのではないかと不安だった。そうしたら本当に起きてしまったと」

■安倍元総理が旧統一教会の関連団体に送ったメッセージ動画の“衝撃・絶望”

安倍元総理が教団の関連団体に送ったメッセージ動画について、「宗教二世」たちが「非常に衝撃、絶望的と受け止めた」と語りました。

【神谷弁護士】「直接私が受けた方、及び弁護団が相談を受けた声として聞いてほしいですが、非常に衝撃、絶望的。自分たちの人生をめちゃくちゃにした統一教会を批判するのではなく、礼賛すること、国が後押しすることに絶望的な気持ちを覚えた。

自分の人生を壊された、将来の展望を失った。その教団を国が後押しした。有力な政治家が総裁を後押ししてしまった。先がない、救われない、絶望的で。言語化するなら絶望的な思いが近いです」

また自身の感想については、「表立って統一教会の後押しをすることに驚きました。それまでビデオに自ら出て敬意を表することはなかった統一教会と関係があると堂々と隠す必要がなくなったと言うことでしょうね。とても衝撃的でした」と述べました。

■裁判員の「政治家が来賓の挨拶をするのと何が違うのか?」質問には…

一方、神谷弁護士に対して、裁判員からはビデオメッセージを巡って「衝撃を受けた絶望したと言っていたが、その感覚がわかりません。政治家が来賓の挨拶をするのと何が違うのか?」と言う質問がありました。

それについては次のように答えています。

【神谷弁護士】「(『宗教二世は』)彼らも非常に統一教会に人生を壊された。将来への展望がなかった。『統一教会が無くなってほしい』という願いを持っているわけですね。

有力な政治家の方がビデオメッセージでインターネットで流れる形で、韓鶴子に敬意を表するメッセージを送られたら、『統一教会が続いてしまう。後ろ盾を与えてしまう』という衝撃を受けたと聞いております」

■検察側「旧統一教会関係者への刑事事件を起こした人はいるか?殺人があったか?」

一方検察側は神谷弁護士に対し、「神谷弁護士自身がかかわってきた中で、旧統一教会関係者への刑事事件を起こした人はいるか?殺人があったか?」などと質問しました。

(Q.2002年から2022年(今回の事件)までに旧統一教会への恨みから関係者への殺人があったか?)
【神谷弁護士】「承知していない」
(Q.なぜ起きなかったと思うか?)
【神谷弁護士】「『なんとかしたい』と思った人はいたが、そこまで頑張れなかったということなのかなと」
(Q.被告人がやっていなかったら自分がやっていたかもと言っていた「宗教二世」もいるということだが?)
【神谷弁護士】「どちらかというと自死を選ぶ人が多いと想像します」
(Q.先生が関わってきた人で教会関係者への刑事事件を起こした人はいたか?)
【神谷弁護士】「承知していません」

また神谷弁護士は、検察側の質問の後、弁護側の質問で「宗教二世は親をどう思っているのか」と聞かれ、「話を聞くと、親との葛藤はある。それでも結局親も教団に騙された被害者で、結局、原因は統一教会だと」と答えました。

山上被告本人の口から、安倍元総理を狙った理由について、どのように語られるでしょうか。

関西テレビ
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