高市首相の「台湾有事」を巡る国会答弁を巡り、中国当局が相次いで日本への渡航自粛などを呼びかける事態となっています。
FNN北京支局の垣田友彦支局長に聞きます。
――高市首相の国会答弁に対し中国が怒っている理由。現地で取材していてどう感じますか?
中国側は韓国で行われた首脳会談の前、高市首相の歴史認識や台湾への姿勢をとても警戒していました。
中国側が日本の求めに応じ会談したと発表しているのは、会談に前向きでなかったことの表れともいえます。
その次の日に高市首相がAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の台湾代表と会談したことやSNSに投稿したことを、中国側は問題視し強く反発していました。
習近平政権にとって台湾問題は核心的利益の中の核心で、日本でいうところの“一丁目一番地”の政策。
絶対に譲れない問題という位置付けです。
こうしたことから、中国側の関係者は高市首相の対応を「習氏を平手打ちしたようなもの」と話し、強い反発の理由を説明しました。
そうした中で高市首相の国会での答弁があり、中国外務省は武力介入を示唆したと非難。
呼び出した金杉大使に対し、「中国14億人の人民は絶対に許さない」と強調しました。
この直後から一気に反発のトーンが強まったのですが、日本渡航自粛の呼びかけや国営メディアによる批判的な報道などは、習政権として絶対に譲れない問題の表れだと感じます。
青井実キャスター:
岩田さん、日本側としては中国の反発は想定していなかったのか、その辺りはどうでしょうか。
SPキャスター・岩田明子さん:
もともと中国の核心的利益だというのは歴代内閣分かっていますので、答弁はとにかく個別具体的な、総合的に判断するということで鉄壁の答弁をずっと繰り返してましたから、それはきちんと理解していると。ただ、個別具体的なケースを想定して質問されてしまったので、その時に仮の話として可能性はあり得ると答弁してしまったわけですが、次の日にすぐに軌道修正もしましたので、歴代内閣と同じ姿勢を示しているということをこれからも説明していくことですね。
青井実キャスター:
中国としては、怒っている状況は変わっていないということですね。
SPキャスター・岩田明子さん:
撤回を求めてくると思います。
こうした中で、中国政府から渡航自粛が呼びかけられているわけですが、日本を訪れている中国人観光客の方に取材すると、「あまり気にしない。でも平和は一番大事」「一般の人は政治的なものに基本手を出さない」などといった声が聞かれました。
再び垣田友彦支局長に聞きます。
――中国国内での影響ですけれども、中国にいる日本人の方には影響が出ているんでしょうか?
日本に行く中国の方に取材したところ、政治的な話として冷静に受け止めている人がいる一方で、この先悪化すれば考えるという人もいました。
また中国の地方政府では、一部で訪日の中止や延期の動きが出ています。
一方、北京にいる日本人にとってまだ目に見える影響は見られませんが、心理的な影響は聞かれます。
2012年の尖閣国有化の時にあったような大規模なデモと、日系企業や店舗への襲撃につながることや安全面を懸念する声があります。
日中の懸案だった日本産水産物の輸出規制が一部再開していますが、これが滞るなど経済的な対抗措置のほか、問題の長期化を心配する声も聞かれました。
こうした中、外務省の金井アジア大洋州局長が北京に向かい、中国外務省の劉勁松アジア局長と会談し高市首相の答弁を説明するということです。
――まだ会談の詳しい時間などは明らかにされていませんが、中国側はどんな姿勢で臨むとみられるんでしょうか?
現段階では解決の糸口の模索になると思われ、17日の局長協議の行方と中国側の出方が注目されます。
中国側は高市首相の発言の撤回を強く求めています。
一方、日本側は中国の薛剣大阪総領事のSNS投稿について説明などを求めているとみられますが、中国側は擁護する姿勢です。
また、今週末に南アフリカで行われるG20(20カ国・地域首脳会合)には李強首相が出席します。
高市首相と初めて接触する場となりますが、会談が実現するかは不透明な状況です。
青井実キャスター:
今、中国側について聞いていきましたけど岩田さん、日本政府としてはどんな対応が求められていくと思いますか?
SPキャスター・岩田明子さん:
G20で李強首相が出席するのは大事なポイントになりますので、会談は追求していくことになりますが、成立自体は難しいのではないかという見方ですね。ただ、会議をやる前に控室がありますので、そこで非公式な接触を試みる。それから、中国語の通訳を連れていくというところが1つアピールになりますので、こういうところもやるのではないかと思います。
青井実キャスター:
裏で交流があるのか、会談があるのかも含めて注目ということですね。