洪水被害の軽減や地下水の保全など多面的な機能を持つ『雨庭』の普及を進めようと人吉市で4日、勉強会が開かれました。

人吉市は今年度、県内の自治体では初めて『雨庭』を整備する個人や企業に補助金を出す制度を創設、勉強会には関心のある多くの市民が参加しました。

【人吉市の担当者】
「人吉市は今年度、市内の企業や市民の皆さんを対象に『雨庭』整備に関する補助金制度を立ち上げた。市としても『雨庭』の普及を促進していきたい」

『雨庭』は屋根などに降った雨を水路に直接流さず浅いくぼ地に一時的にため、地中にゆっくりと浸透させる植栽空間です。

河川に雨水が一気に流れ込むのを抑え、洪水を防ぐことができるほか、地下水保全にも効果があるとされています。

2020年の7月豪雨をきっかけに、熊本県立大学や肥後銀行など産学官でつくる『くまもと雨庭パートナーシップ』が県内での普及に取り組んでいます。

【熊本県立大学 共創の流域治水研究室 所谷 茜 特任講師】
「『助成金があったら、〈雨庭〉がつくれるのにな』といろんな人から言われてきたので〈雨庭〉整備の補助金ができたことはすばらしい取り組みだと思う」

人吉市は今年度、『雨庭』を整備する個人や企業に対して費用の2分の1を補助する制度を創設しました。【補助の上限は個人50万円、企業200万円】

県内の市町村では初めての取り組みで、『雨庭』の普及に力を入れています。

11月4日、人吉市役所で開かれた勉強会には『雨庭』に関心がある商工会や旅館組合のメンバーや造園業者など約70人が参加。

熊本県立大学の所谷 茜 特任講師が『雨庭』の治水効果などについて説明。「『雨庭』は色んな場所につくることで治水効果を発揮するので、多くの人が参加することが重要」と話しました。

また、5年前の7月豪雨で被災した『人吉温泉しらさぎ荘』の女将が新築した旅館に整備した『雨庭』を紹介しました。

【人吉温泉しらさぎ荘 女将 高山 多磨 さん】
「自然の力を信じて〈水が還る〉場所をつくる。そんな考え方で生まれた庭」

日本庭園風のつくりで雨水が川のように流れるしらさぎ荘の『雨庭』。雨量が増えると両脇から水が地中に染み込む工夫が施されています

【人吉温泉しらさぎ荘 女将 高山 多磨 さん】
「被災した経験を悲しみの記憶で終わらせるのではなくて次の災害を少しでも減らす学びへと変えていく、人吉温泉しらさぎ荘の『雨庭』がその一つのきっかけになればうれしく思う」

【人吉市防災課 伊賀上 健司 係長】
「多くの人に補助金制度を知ってもらい多くの市民が取り組むことで流域の安全安心につながっていくものと考えている」

人吉市は今回の勉強会を通じて多くの市民に関心を持ってもらい『雨庭』の普及につなげていきたいとしています。

テレビ熊本
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