早朝の瀬戸内海、漁船が向かった先にあるのは、旬の時期をこれから迎えるカキの養殖場です。

しかし、水揚げされたばかりのカキには思いもよらぬ異変が起きていたのです。

栄養豊富で“海のミルク”とも呼ばれるカキの中身が空っぽ。
養殖するカキの9割が死滅する事態となっていました。

冬の味覚の代表格であるカキ。

辛さが選べる鍋が人気の飲食店では、4日火曜日から期間限定でカキフェアを開催しています。

この店で提供しているカキは広島県産。
生産量が日本一のその広島県で、カキに何が起きているのでしょうか。

夜明け前の午前5時半過ぎ、「イット!」取材班は東広島市で行われるカキの水揚げ作業に同行させてもらいました。

船は港を出て10分ほどで、カキの養殖場へ。

専用のクレーンを使い、カキがびっしりとついた約10メートルのロープを海中から引き揚げます。
次々と新鮮なカキが水揚げされていきますが、目につくのは殻の開いているもの。
一体何が起こっているのでしょうか。

島村水産・島村広司社長:
(Q.口が開いている)からばっかりでしょ?生きていたらこういうふうにちゃんと口がつむってるんですよ。死んだら口が開いて中身がなくなってる状態です。今年は9割死んでいるので。

殻の開いているカキは中身がなく、水揚げしたカキの9割が死滅した状態だといいます。

島村水産・島村広司社長:
ダメージは大きいですよ。商売が成り立つか成り立たないかくらい(カキ)死んでいるので、激甚災害といんですか、それ並みにやられています。本当に言葉にならない、どうしていいかもわからないし…。

聞けば、異変に気が付いたのは9月の中旬ごろ。
大量死の原因が何なのかははっきりしないといいます。

島村水産・島村広司社長:
(漁に出ると)毎日マイナスです。でも死んだカキをずっと置いておくわけにはいかない。夏の高水温が原因ではないかとか、海の中の酸素が酸欠状態になったのではないかなどあるが、真相はまだわかっていません。

新鮮なカキをフライなどで味わえる店では、これまで東広島市安芸津でとれた地元産のカキを提供していました。

しかし、今は地元産の水揚げが減ったことから県内産の別のカキに切り替えて提供しているといいます。

海の味処「藤田屋」安芸津本店店主・藤田寬治さん:
安芸津産ではなくて、広島の中央市場から仕入れたカキです。うちは22年目になるんですけど初めてです。できるだけ安芸津産を使おうとしたが今回ばかりは無理かな。

こうした状況を受けて、広島・呉市では生のカキを返礼品とするふるさと納税の募集をいったん停止する事態に追い込まれました。

影響が広がりつつあるカキの死滅。
水揚げ量が安定するまでには、しばらく時間がかかりそうです。