知っておきたい!気象・防災のキホン、気象予報士と防災士の資格を持つ伊藤瞳アナウンサーがお伝えします。

今回のテーマは「天気予報ができるまで」です。
私たちの暮らしに欠かせない天気予報ですが、雨が降ったか降らないかということだけで見れば、ここ10年で8割が的中しています。
精度の高い天気予報は、様々な観測機器を駆使して日々進化しています。

仙台市宮城野区にある仙台管区気象台。
気象庁の地方機関で、宮城県だけでなく、東北地方全域の気象業務を統括しています。

仙台管区気象台観測整備課 毛利光志さん
「観測データは非常に重要です」

温度計や湿度計、約50mの高さに設置された風向・風速計など、気象台内には全部で12種類の観測機器が設置されています。

地上の雨量を計る「転倒ます型雨量計」です。

仙台管区気象台観測整備課 毛利光志さん
「中にシーソーのような転倒ますと呼んでいるものがありまして、そこに0、5mm分の雨がたまるとカタンと倒れる」

1時間に20回転倒すれば、その地点で10mmの雨が降ったということになります。

一方、雨を、地点ごと、つまり「点」ではなく「面」として観測できるのが…

仙台管区気象台観測整備課 毛利光志さん
「あちらが気象レーダーです」
伊藤瞳アナウンサー
「気象台のシンボル」
仙台管区気象台観測整備課 毛利光志さん
「レドームと呼んでいて直径7mのドームの中にパラボラアンテナが入っています」

アンテナを回転させながら半径400kmの範囲に電波を発射。
発射した電波から雨粒までの距離や強さを観測します。

仙台管区気象台観測整備課 毛利光志さん
「全国で20カ所、日本全土を覆うように設置していまして、日本の雨の分布を観測する強力な観測機械」

こうして観測されたデータは気象庁のスーパーコンピューターに送られます。


コンピューター上では観測値をもとに現在の大気の状態を面として把握し、さらに、その後の変化も計算して「将来」の状態まで予測します。
これが普段私たちが見聞きする天気予報のおおもとです。

しかし、これがそのまま天気予報になるわけではありません。
最後に必要となるのは人の力です。

予報課 山中力主任予報官
「24時間365日、誰かがいる」

一年中眠らない部屋、予報現業室。
ここにいる「予報官」がコンピューターによる予測を確認し、細かく修正。
天気予報はそうなって初めて「完成」し、私たちに伝えられます。

予報課 山中力主任予報官
「小さなスケールの現象とか、地域の特性が出てしまうような現象は、どうしてもコンピューターの予測が十分ではないので人の手で修正を加える」

例えば、宮城県で言うと、奥羽山脈が予報の大きなポイントになるそうです。

西よりの風が吹くときどの程度山を超えて強く吹くのかが難しいポイント。
コンピューター上では奥羽山脈を細部までは表現することができませんが、風の吹き方の細かい違いで天気も変わってしまいます。
こうしたところを予報官がこれまでの経験や知識で判断し、修正します。

さらに連携をとるのがこちらの解析担当。

予報課 山中力主任予報官
「今の気象の状況がどうなっているか、気圧の線を引っ張っている」

宮城の気圧や気象衛星の雲の動きなど、目先の天気の状況を手作業で確認。
「前線の北上が予想より早まっている」など、気付いた点を予報官に伝えます。

予報官はさらに予報を修正し、予報の精度を高めます。

伊藤瞳アナウンサー
「宮城の地形を知り尽くしたプロフェッショナル?」
予報課 山中力主任予報官
「そこを目指している」

こうしてできあがった天気予報。
しかしそれでも及ばないところがあるといいます。

予報課 山中力主任予報官
「100%当てるのはなかなか難しい。激しい現象、大雨は線状降水帯もそうですが、スケールの小さな現象は数値予報が苦手とするところでもありますし、過去の経験で補っているが、最近気象現象が激甚化・頻発に起きて変化が見られるので」

地球温暖化などの影響による近年の気象の変化で、予報が難しくなっている側面があります。

例えば10月1日、上空の寒気と地上の暖かく湿った空気の影響で大気の状態が不安定になり、県内で雨雲が発達。
気象台は宮城野区に「記録的短時間大雨情報」を発表し、警戒を呼びかけましたが…

予報課 山中力主任予報官
「前の日の段階から大雨警報の可能性はあるということで、注意警戒は呼びかけていたが、実際に降った雨の量が予想よりも多くなって被害が出てしまった」

どの場所で雨雲が発生・発達しやすいのかをピンポイントで予測するところまでは現代の予報技術は追い付いていません。

気象台では次の予報の精度を高めるため、予報と実際を照らし合わせて振り返り、そのデータを蓄積しているといいます。

また気象庁では気象衛星や気象観測船などの性能の強化も続けています。

激変する地球環境の中で、天気予報も絶えず進化を続けながら、私たちの暮らしを支えています。

こうしてできたものが日頃アナウンサーが読む天気予報です。

一方、ニュース番組の気象予報士の場合はそれで終わりではなく、気象庁の予報やデータは参考にしながらも、予報士としての経験や知見をもとによりきめ細かく、より分かりやすく、独自の分析で伝えています。
それこそが予報士としての腕の見せ所・個性で、気象予報士の天気予報にはそこにも大きな意味があります。

仙台放送
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