被害生徒は通院継続 学校が調査開始

全国高校サッカー選手権宮城県大会で優勝した仙台育英高校サッカー部で、3年生の男子部員が複数の部員から暴言を受け、抑うつ症状と診断されていたことが分かった。学校は「いじめ重大事態」として調査を進めている。

仙台育英高校によると、いじめを受けたのはサッカー部に所属する3年生の男子部員で、1年生の2023年春ごろから他の複数の部員から「うざい」「デブ」などの言葉を繰り返し浴びせられていたという。
男子部員は去年、病院で「抑うつ症状」と診断され、現在も通院を続けている。

学校がいじめを把握したのは10月14日。男子部員がサッカー部の指導者に「部活に出られない」と訴えたことで発覚した。

学校はいじめ防止対策推進法に基づいて調査を開始しており、暴言をかけたとされるのは主に同学年の複数部員だという。詳しい内容については「調査中」としている。

仙台育英サッカー部は11月2日、全国高校サッカー選手権宮城県大会の決勝で聖和学園高校に勝利し、2年ぶりに優勝した。
学校はいじめを把握していたが、「辞退を判断するには調査時間が不足していたため、被害生徒と保護者の了承を得て出場した」と説明している。

年末に開幕する全国大会への出場については「現時点では判断できない。調査結果を踏まえて対応する」としており、調査が終わり次第、県高体連に報告する方針だ。

仙台育英高校は県内最多となる37回の全国大会出場を誇る強豪校。

校長が保護者に謝罪「顧問団の認識欠如が構造的課題に」

仙台育英高校は、決勝前日の11月1日付で「いじめ重大事態報告に寄せる校長所見」と題した文書を全保護者宛てに通知した。
文書では、当時の指導体制や部内の意識に関して次のように述べている。

「『いじり』と呼ばれる不適切な言動が繰り返されていたことが判明しました。被害を受けた部員の方に心より深くおわび申し上げます。当時の顧問団は、部員一人ひとりの心の状態に十分に目を配る体制を整えていたとは言えず、結果として、いじりの実態を把握できないまま被害が拡大し、3年次の重大事態へとつながったものと認識しております。
一方、加害側とされた生徒の中には、『いじり』と『いじめ』との間に明確な線引きをせず、他者の尊厳を損なう行為の重大さに対する理解が欠如していたことが推察されます。
指導にあたる顧問団にも同様の認識の欠如があった結果であり、指導体制そのものに構造的な課題が存在していたと考えます」

学校はこの中で、いじめの再発防止や人権尊重、心のケア体制の再構築を進める方針を示している。

決勝戦辞退の判断には「時間的制約があった」

同じ文書の中で学校は、決勝出場に関しても説明している。

「現時点で、加害行為を行ったとされる特定の複数生徒を完全に確認するには至っておりません。そのため、11月2日の決勝戦への出場辞退を即時に判断するには時間的制約があることを、部員およびご家族に誠実にお伝えしました。
しかしながら、被害者の方の心情に寄り添い、真相究明と再発防止に向けて、全力で取り組む決意です」

学校は今後、全部活動の指導体制の見直しを含め、再発防止策を検討するとしている。

仙台放送
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