2025年は昭和100年。
いま開催されているのが、懐かしいあの頃の街並みを再現したアート展です。

精巧な技術で作られているのですが、すべて“紙”なんです。

紙を切り貼りしてパーツを重ね、立体的に表現されたペーパーアートで、かつて銀座の繁華街を走っていた昭和の都電の懐かしい風景を再現しています。
ほかにも、近所の人が集まり餅つきをする情景もあります。

これらは、人の息遣いが聞こえる“昭和の日常風景”です。

東京・練馬区の「練馬区立石神井公園ふるさと文化館」で開かれている展覧会「昭和100年 日常の風景 -太田隆司ペーパーアートの世界-」では、ペーパーアーティストの太田隆司さんが、昭和をテーマに制作した作品35点が展示されています。

東京の下町を描いた作品「東京下町 人を、暮らしを乗せて・・Ⅰ」は、市民の足だった昭和の都電や当時の下町の情景を忠実に再現しています。

作品中には、当時はやった“ベーゴマ遊び”もあります。

花嫁として嫁ぐ日の情景を描いた作品「巣立つ日のわが家」では、結婚式の正装として定着していた白無垢の花嫁衣装やまげを高く結う文金高島田の髪形など、嫁入りする娘を見送る感傷的な情景が再現されています。

練馬区立石神井公園ふるさと文化館の学芸員・相川詩織さんは「昭和を懐かしく思う方もいると思いますし、昭和に生まれていない方も新鮮に作品を楽しんでくれたらうれしい」と話します。

ペーパーアーティストの太田隆司さんが作品を制作するアトリエには、趣味のプラモデルが飾られています。

制作では、顔や髪の毛などのパーツをカッターナイフで切り出す細かな作業を行っていて、接着剤で慎重に型紙に貼り付けたり、立体感を出すためにパーツを湾曲させたりしていました。

太田さんによると、「一番小さな部品は人物の歯。白い歯が見えるところまで裏からくっつけている」といいます。

これまでに200以上の作品を手がけてきた太田さんに、器用さが大事なのか聞くと「器用さよりも好きなことにのめり込む。そこじゃないかと思う」と話していました。

今回の展覧会に合わせて、新作「Enjoy the Show-WA!としまえん amusement park」も初公開されました。

テーマは“昭和のとしまえん”です。
日本最古の回転木馬カルーセルエルドラドなど、多くのアトラクションでにぎわった遊園地は2020年に閉園しました。

太田さんは、それらを1つの風景の中に配置し、昭和の遊園地のにぎわいを立体アートとしてよみがえらせました。

展覧会では、ワークショップも開催されました。

子供たちは、太田さんの作品をもとに昭和のとしまえんに挑戦すると、夢中でイラストを切り抜き、世界で1つだけのペーパーアートを完成させていました。

ワークショップに参加した子供は「これが作れると感動した」と話していました。

展覧会では当時の貴重な写真も展示されていて、11月3日まで開催されます。