10月28日に行われた王座戦五番勝負の最終局で、藤井聡太七冠は挑戦者の伊藤匠叡王に敗れ、「六冠」となりました。将棋界の八大タイトルを分け合う2人の今後について、師匠の杉本昌隆八段に聞きました。

■「同学年のライバル」ともに将棋界の頂点に
藤井六冠(28日):
「全体として終盤戦で競り負けるような形になってしまったかなと。実力不足だったかなと感じています」
敗因は「実力不足」と話した藤井聡太七冠、28日の対局に敗れ、「六冠」に後退しました。新しい王座についたのは、「二冠」の色紙を手にした伊藤匠叡王でした。
藤井六冠と同い年の伊藤二冠。プロになったのは、藤井六冠に遅れること4年、17歳の時でした。

伊藤二冠(2020年9月):
「趣味は野球観戦ぐらいで。中日ファンなんですけど、両親が名古屋出身ということもあって」
幼いころから注目されていた伊藤二冠は、小学3年生の時、全国大会の準決勝で藤井六冠と初めて対戦し、勝利しました。藤井六冠は大泣きして、ゲストの棋士がなだめる一幕もありました。

伊藤二冠はデビューから3年後、タイトルに初挑戦しますが、藤井六冠の前に引き分けを挟んで11連敗。
しかし、2024年の叡王戦では3勝2敗でタイトルを奪取し、「八冠」の壁を破りました。

伊藤叡王(2024年6月):
「藤井さんにはずっと勝てない状況が続いていて、幸運だったのかなと思います」
そして、2025月9月にシンガポールで開幕した王座戦五番勝負にも、挑戦者に名乗りを上げました。
藤井七冠(2025年9月):
「伊藤叡王とはおよそ1年ぶりの対局になります。1年間の成長を見せて、皆さまに将棋の魅力を存分に感じていただけるような熱戦にできるように、全力を尽くしたいと思います」
■「七冠」防衛を願い…大赤字の「カツ」メニューも
第一局に勝利した藤井七冠でしたが、その後はかど番に追い込まれ、二勝二敗で迎えた28日の最終局。

藤井七冠の地元・愛知県瀬戸市の喫茶店では、ファンが対局の行方を見守ります。
客ら:
「今日は勝ってほしいです」
「防衛できるか瀬戸際なので、みんなで応援しようと」
店ではこれまで、数々の応援メニューを考案してきました。
喫茶スマイルの鈴木店長:
「瀬戸焼きそばと瀬戸豚ロースカツを付けて、瀬戸の『藤井七冠”勝つ”』というメニューを作りました。今日決めてほしいということで、大赤字の1028円です。本当は1700円です」

対局は、積極的に攻撃をしかけた藤井七冠に対し、伊藤叡王が切り返してリードを奪います。
そして、両者持ち時間を使い切り、午後8時34分、伊藤叡王が勝ち二冠を達成、藤井七冠は六冠に後退しました。

瀬戸市民ら:
「言葉に出ないくらい悔しいです」
「また八冠を目指して、これからも応援を続けていきたいです」
■将棋界は「二強時代」に?師匠・杉本八段は
今後、将棋界はこの2人の時代になるのか。藤井六冠の師匠・杉本昌隆八段は…。
杉本八段:
「伊藤叡王の内容が非常に良くて、藤井王座もちょっと反撃が届かなかったなという印象でした。指し手の精度の高さもありますけど、形勢が不利になってからの粘り強さ、ここに関しては藤井六冠を上回るかもしれないなと」
将棋界が「二強時代」に突入したのかについても聞きました。
杉本八段:
「まだ『一強』ですね。今回は2つ目のタイトルを伊藤匠王座が獲得したわけですけど、もう1つ、3つ目を取った時が『二強時代』と言われる、そんな気がしていますね。必ずまたあの2人はタイトル戦でぶつかります。その時に向けて準備をしていると思います」

フルセットの激闘となった王座戦、対局を終えた二人は…。
伊藤二冠:
「最近は良い状態で対局に臨むことができたかなと思うので、その中で一つ結果を出すことができて良かったと思います」
藤井六冠:
「全体として終盤戦で競り負けるような形になってしまったかなと。少しずつ力を付けていくしかないのかなと思います」
