東京都と千葉県の境を流れる旧江戸川で、無許可で係留された放置船が増加し、「船の墓場」と化している。中には20年以上も放置され、沈没したままの船も多い。
千葉県側では違法に杭や桟橋を設置して係留するケースも見られ、川底の堆積物が水流を妨げて洪水の原因になるおそれがあるという。

許可を得ずに放置された大量の違法船

東京都と千葉県の境に流れる旧江戸川に広がるのは、まるで“船の墓場”のような光景だった。

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無数の船が停泊していて、中には沈没した船も見られた。
船の一部が朽ち果て、中にはゴミがたまった“ゴミ屋敷船”や横倒しになり、半分が沈んでしまっている船もある。

​公益社団法人 関東小型船安全協会・榎本茂理事
​公益社団法人 関東小型船安全協会・榎本茂理事

公益社団法人 関東小型船安全協会・榎本茂理事:
もう無法地帯。やっぱり一度きれいにして、どこかでリセットボタンを押さないとダメだと思う。

こうした放置船が連なっていて、河川や水路で停泊許可の取っていない、いわゆる水上の駐車違反が増えている。

「イット!」は、「不法係留」の問題を訴える、関東小型船安全協会の榎本茂理事と現場を取材した。

公益社団法人 関東小型船安全協会・榎本茂理事:
これ草生えてるでしょ。ほったらかしだから。ここ一面船が沈んでいる。下ね、泥に半分以上埋まっていっぱい沈んでいる。

ひっくり返り大部分が沈んだ船や、水面に黒い影ができ、完全に沈没している船もある。

川沿いにずらりと並ぶこれらの船は、いずれも許可を得ずに放置された違法な船だ。
中には、20年以上も船舶検査の期限が切れたままの放置船もあった。

「無法地帯」ともいえる状態に、近隣住民はどう思っているのか。

近隣住民:
見栄えは悪い。よく見たら、初めての光景でびっくりしました。きれいな日本を維持するためにも要請はしてもいいし、誰かしないといけない。

問題は、不法係留だけではない。
旧江戸川は、川の真ん中を境界に東京都と千葉県で管理が分かれていて、東京都側は暫定係留施設で船を整備しているが、千葉県側の船は「木」で係留された船が違法で放置されている。

公益社団法人 関東小型船安全協会・榎本茂理事:
「もう違法に止めちゃえ」って、勝手に桟橋作って止めちゃう。

千葉県側では、船をつなぐための“くい”を木で不法に打ち込んだり、桟橋を勝手に造る行為があとを絶たない。

不法に造られた桟橋や“くい”は朽ちて川底に堆積し、水の流れを妨げる原因となって洪水被害につながるおそれがあるという。

千葉県が撤去指導へ…災害時の流出や火災のリスク懸念

さらに、川の河口に近づいてみると、川の真ん中に船が沈んでいた。

航路のど真ん中に沈没船が陣取っていて、ブイで囲んではあるが衝突のおそれもあり、危険な状態になっている。

公益社団法人 関東小型船安全協会・榎本茂理事:
航行上の危険を考えると、絶対よろしいわけじゃない。上流から流れてきたんだろうね。こうやって船って流されてくるんだ。

約10メートルの放置された船が流され、2年以上放置されているという。

そして、長年放置された状況に、千葉県側に住む人は火災の不安を口にしていた。

近隣住民:
(火災)怖いです。動植物もみんな一緒で地球にいるから、こういうのは放置してほしくない。

2024年11月、沖縄県では実際に放置船による火災が発生した。

榎本理事は、災害時に船が流されることで2次災害が起きる危険性もあると話す。

公益社団法人 関東小型船安全協会・榎本茂理事:
1隻あたり、相当燃料と油積んでるんですよ。自動車とは桁違いに積んでるから、それが連鎖的に燃えれば大火災ですよ。

こうした“不法係留問題”を受け、千葉県葛南土木事務所は「所有者不明の船については、追跡調査をする」としたうえで、「今後、所有者に対し、移動・撤去を促す文書を送付していきます。放置船舶等の撤去は基本的に所有者本人が行うものであるため、まずは撤去指導を進めていきます」としている。
(「イット!」10月29日放送より)

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