アメリカのトランプ大統領と、高市早苗首相が10月28日、首脳会談を行いました。対日貿易赤字削減に向け、トヨタ自動車はアメリカで生産した車を逆輸入する案を伝える方針で、日本国内の雇用などへの影響が注目されています。
■トランプ大統領が来日…トヨタは「逆輸入」伝達へ
6年ぶりに来日したアメリカ・トランプ大統領は、滞在2日目の28日、東京・元赤坂の迎賓館に登場すると、出迎えた高市早苗首相とおよそ40分間にわたって会談しました。
高市首相:
「日米同盟の新たな黄金時代を、トランプ大統領とともに作り上げていきたい」
トランプ大統領:
「初の女性首相はとても大きな出来事だ。素晴らしい仕事をし、私たちは素晴らしい関係を築くだろう」
高市首相は防衛費増額への決意を伝え、会談後には日米関税合意や、レアアースなどの重要鉱物分野での協力文書に署名しました。
そんな中、注目されるのが、トヨタの自動車の「逆輸入」です。
トランプ大統領はかねてから対日貿易赤字に苦言を呈しています。こうした中で、トヨタ自動車が、アメリカで生産した車を日本に逆輸入する方針であることが、関係者への取材で明らかになりました。
トヨタのアメリカ工場では、全長5メートルを超えるグランドハイランダーや、セコイアなど大型SUVが生産されていて、広大な大地を走る車が日本の自動車市場で流通する可能性が高まっているのです。
豊田章男会長は、28日夜に予定されている、トランプ大統領と企業の経営者との懇談会に出席し、逆輸入の方針について説明するものとみられます。
■トヨタ車「逆輸入」へ…国内部品メーカーは
愛知県大口町の巴製作所は、トヨタの人気SUV・ランドクルーザーなどに搭載する車載レンチを年間250万本ほど生産していますが、これらはすべて国内生産のトヨタ車向けに納品しています。
巴製作所の坂井聡佑社長:
「結局、日本で走っているトヨタさん向けに今仕事をしているので、海外で作られたものには、うちの製品は基本的に載らないと思いますので。国内のサプライヤーとしては、ちょっと不安感があったのは事実です」
逆輸入によってアメリカ産の車が多くなる分、国内生産の車が減ってしまうことへの不安もありますが…。
坂井社長:
「正直まだ何も分からないので、どうなっても対応できるように、会社としては備えていく必要があるのかなと思います」
自動車業界の専門家は、国内への影響は限定的だと見ています。
S&Pグローバル・モビリティの川野義昭さん:
「今回の件に関しましては、日本国内の市場への台数的なインパクトというのは、最小限に抑えられるだろうと」
軽自動車がおよそ4割を占める日本の市場では、そもそも大きな需要が見込まれず、国内の雇用への影響も小さいとの見立てです。
川野さん:
「アメリカの工場の雇用も確保できるということもありますし、アメリカの製品を輸出することによって、アメリカの貿易の赤字を少しでも削減すると。トランプ大統領のいう不公平感を少しでも軽減するという意味は、日本政府としてはおそらくあるんだろうなと」
あくまで狙いは、日米貿易バランス是正への貢献にあるとしますが、別の狙いも指摘します。
川野さん:
「アメリカから輸入することによって、商品の選択肢を広げるということもあると思います」
世界のトヨタの逆輸入はどんな展開をもたらすのか。豊田章男会長ら日本企業のトップたちとトランプ大統領は、28日夜に会談する予定です。
■「日米首脳会談」暮らしへの影響も?
今回の日米首脳会談の注目ポイントには、私たちの生活に影響を及ぼす話も多く含まれています。
日米関税交渉の合意に伴う、およそ80兆円にのぼるアメリカへの巨額の投資に関する文書に、高市首相は28日、署名しました。
ロシアへの経済制裁強化として、ロシア産LNG(液化天然ガス)の輸入停止も、アメリカは日本に求めていて、27日に行われた片山財務相とベッセント財務長官の会談で話題に上りました。
ロシアからの輸入を停止すると、全体の10%弱を占めるロシアからの輸入分を他国からの調達に切り替えることになり、輸送費などがより多くかかることになります。
野村総合研究所のエコノミスト・木内登英さんによりますと、LNGの輸入コスト増加分は電気代に転嫁させるので、家庭の電気代が最大で5%程度上昇する可能性があるということです。
