秋田・湯沢市の住宅内に20日朝からクマがとどまり続けている。クマが居座っている場所の周辺には、多くの住宅や飲食店があるため、市は「緊急銃猟」は該当しないと判断。箱わなでの捕獲を待っているが24日午後8時時点で動きはない。なぜクマは住宅内にとどまり続けているのか、クマの生態を研究している秋田県立大学の星崎和彦教授に聞いた。

周辺に民家多く「緊急銃猟」は厳しい

20日朝、JR湯沢駅周辺で男性4人が立て続けにクマに襲われ、このうち1人の住宅にクマが入り込んだ。

以来、クマは住宅の中に居座り続けている。

赤で示した地点がクマが居座っている住宅
赤で示した地点がクマが居座っている住宅
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現場周辺には住宅や飲食店が立ち並び、すぐ近くに国道13号があるため車通りもかなり多い。飲食店の営業を制限したり、周辺の小中学校では保護者による送迎が続いたり、週末のイベントも中止になるなど住民生活に大きな影響が出ている。

少しでも早い解決が望まれるが、いまだ捕獲には至らず対応が長引いている。

湯沢市産業振興部の高橋聰部長
湯沢市産業振興部の高橋聰部長

湯沢市産業振興部の高橋聰部長は「隣の民家には生活している人がいるので、銃弾の跳ね返りなどの危険性があり、対処方法としては、緊急銃猟には該当しないと判断している。人の気配をできるだけ遠ざけて箱わなに入るのを待つのが、現段階で確実に安全に捕獲できるという判断のため、今の状況を保っている」と話す。

湯沢市は次なる手段も視野に入れているものの、周辺の状況から「緊急銃猟」やクマを刺激するような捕獲方法は実施できないのが現状だ。

クマの生態を研究する秋田県立大学・星崎和彦教授
クマの生態を研究する秋田県立大学・星崎和彦教授

クマが住宅に入り込んだ状況について、クマの生態を研究する秋田県立大学の星崎和彦教授は、「『この辺にクマがいるから気を付けてください』と周知をすることがクマにとってはプレッシャー。その時点でクマは人間やパトカーから隠れたい。湯沢市の事例はシチュエーション的に、どこに隠れようかという時にドアを開けた人がいる。襲われた住人は不運でしかない」と話す。

クマはなぜ住宅内にとどまっているのか

星崎教授は「湯沢市に居座っているクマは、警察官が周りを囲んでいるため、出るに出られない。居座っている住宅に食べ物がいっぱいあって、外の状況などはともかく、ハッピーだった可能性もある」とみている。

県内では10月に入ってから、クマが人の生活圏にとどまるケースが相次いでいて、横手市と仙北市では「緊急銃猟」が実施された。

星崎教授は「いつどこで人身被害が起きるか、いつどこで居座りが発生するか分からない状況にすでになっている。それが一番大きなリスク」と話し、高齢化などが理由でクマと人の生活圏の境界線を押し返すことができず、クマが街中に近づいていると指摘する。

クマの隠れ場所にならない対策を

クマは“隠れる場所”を探して住宅などに入ってしまうという(資料画像)
クマは“隠れる場所”を探して住宅などに入ってしまうという(資料画像)

星崎教授によると、何かの拍子でクマが本来の境界よりも人が生活する人里側に入ってしまった場合、クマは隠れる場所を探すという。

その“隠れる場所”として、「人通りの少ない通り」や「あまり使わない部屋を長い間キープしている家」「出入りの少ない家」などが選ばれてしまう可能性があることを想定しなければならない、と星崎教授は警鐘を鳴らす。

クマには個体差があり、“人には遭いたくない”クマがいる一方で、“人は大丈夫だ”と考えているクマもいるという。しかし、どちらにも共通しているのは“食べ物への執着心”だ。クマは学習能力や記憶力があり、人里で一度おいしい思いをすると、二度、三度と訪れるという。

クマの隠れ場所となるかもしれない暗い場所にはセンサーライトを設置する。クマの餌となるごみを放置しないなど、できる対策をした上で、「クマがすぐそばいる」ことを忘れずに生活する必要がある。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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