1枚の写真から街を再発見する「兵動大樹の今昔さんぽ」。

今回の舞台は奈良県橿原市。近鉄・橿原神宮前駅からスタートです。

【兵動大樹さん】「これか~。これはすごいねえ」

兵動さんに手渡されたのは昭和50年代(1975年~1984年)に撮影された写真ですが、映っているのは自転車に乗る学生たちと寺のような建物のみで、場所の特定につながる決定的な手がかりはありません。

兵動さんは写真の場所を見つけられるのでしょうか?

■日本のはじまりの地・橿原神宮

【兵動大樹さん】「一番のヒントは建物ですよね。お寺?それと、おれは駄菓子屋さんと踏んでいる」

自転車で集まっている学生がたくさん映っていることから、駄菓子屋と予想した兵動さん。早速聞き込み開始です。

まず橿原神宮を訪れた兵動大樹さん。橿原神宮は初代天皇・神武天皇が祀られている神社です。

【兵動大樹さん】「令和22年は紀元2700年を迎えます。ようこそ、日本のはじまりへ。橿原神宮、いいですね」

橿原神宮の参道からは畝傍山を見ることができます。


■出てないのにアニメの”聖地”に!?

参道で兵動さんは、風情のある喫茶店「サンド」を見つけます。

【兵動大樹さん】「すごいな。アニメのアクスタ(アクリルスタンド)立ってたり」

実は橿原神宮の辺りは、京都アニメーションの作品「境界の彼方」の舞台として人気で、毎年500〜600人ものファンが訪れるそうです。

店内にはファン交流ノートが置かれ、キャラクターのイラストや感想が記されていました。

【サンド 店主】「私のとこは出てません。けど、勝手にファンの方が『ここが出た』ということになって」

【兵動大樹さん】「出たということになってしまった!?(笑)」

ちなみに、「サンド」の由来は神宮の”参道”だそうです。

■”道”を覚えられない「今井町」

「サンド」にいた地元の方々に写真を見せると、撮影場所は「今井町」ではないかという情報が!

【地元の方】「古い街並みいうたら『今井』。50年ぐらい住んでるけど、(今井町の)道を覚えられないんですよ。路地みたいなところがいっぱい」

【兵動大樹さん】「ずっと住んでても分からんような道なんや」

”バチ当たり”にならないよう、「日本建国の地」とも呼ばれる橿原神宮を参拝してから「今井町」に向かいます。

今井町の資料館「今井まちなみ交流センター華甍(はないらか)」を見つけた兵動さんは、展示されていたジオラマを見て驚きます。

【兵動大樹さん】「町のレベル超えてない?すごくない?」

なんと、今井町は南北約310m、東西約600mに広がる大きな町なんだそうです。

【ボランティアガイド 川元さん】「お寺が拠点となってできた町なんです」

そのお寺は浄土真宗「称念寺」。室町時代末に創建されたと言れています。

■浄土真宗の町として繁栄

今井町は浄土真宗の寺院「称念寺」を中心に発展した町だと判明します。

【ボランティアガイド 川元さん】「お念仏を唱えたら浄土に生まれますよという優しい画期的な教えなんで、みんなが集まってきて、ここで住み着いたんです。寺内町です。浄土真宗の信者の町です」

浄土真宗は一向宗とも呼ばれ、対立していた織田信長と和睦を結んだことで今井町は経済的発展を遂げました。

各地から商人が集まり、金融業者まで現れたんだそう。

今井町では綿関連の商売が盛んになり、「海の堺、陸の今井」と呼ばれる商工業都市となったのです。

■道が覚えられないのは「ぐいち」だから

ところで、地元民でさえ今井町の”道”が覚えられないのはなぜでしょうか?

【ボランティアガイド 川元さん】「ずっと筋通ってるように見えるんですけどね、『武装都市』でしたのでね。ちょっと”ぐいち”に道を作ってるんですね」

※ぐいち=互い違いにずれていること

防衛の観点から、敵が攻めてきた時に時間を稼ぐため、あえて複雑な道路構造にしていたのです。

そして、写真について聞くと、写っているお寺が「称念寺」だということも分かりました。

■今井町のユニークすぎる?製薬会社

「称念寺」を目指して今井町を歩く兵動さん。

【兵動大樹さん】「この1本道歩くだけでもええやんか。似た景色が多いから、道覚えられへんというのも気持ちわからんでもないな」

まるでタイムスリップしたかのような情緒あふれる街並みを歩いていくと、「おにみみコーラ」という商品を販売するユニークな店を見つけました。

それが、明治38年創業の「端壮薬品工業」。生薬の風邪薬の製造販売をしていて、「おにみみ」の由来は、鬼のマークを使って100年ほど営業していて、”みみづ”と呼ばれる漢方薬・地竜を含んでいることから名づけられたそうです。

そして、「鬼耳コーラ」ができたのは、コロナ以降で風邪薬の売上が9割減となったことがきっかけだということです。

【兵動大樹さん】「美味しい!めちゃくちゃ飲みやすいし、コーラ大好きやから。コーラくぅっと飲んで、炭酸きついし、この歳になったら『アアア』ってなるんやけど、がないねん言うほど」

経営を立て直そうとする中、店主はボランティアで子どもたちのために自作の被り物でショートコントを披露するなど町の活性化に尽力しています。

■駄菓子屋の予想は…

ついに兵動大樹さんは、今井町誕生のきっかけとなった「称念寺」に到着。

隣で理髪店を営む福田さんに話を聞くと、写真の謎が解けます。

【兵動大樹さん】「(写真に)学生がよく入ってるのは、駄菓子屋さんがあるから?」

【福田さん】「駄菓子屋さんいうてもね、スマートボールもあったとか言うてやんねんけど」

実際に駄菓子屋さんがあったということです。


■”街並み”が残ったのは「鉄道反対」のおかげ

最後に兵動さんは、なぜこれほど古い町並みが残されたのかを教えてもらいました。

明治時代に鉄道駅が今井町の近くに造られる計画があったそうですが…

【福田さん】「今井の方は『いらん』って言うはったんです。治安が悪くなりますやろ。だから(街並みが)残ってる。火事が少なかったし戦争でも免れました」

昔の方たちの判断と、偶然が積み重なり、歴史的な街並みが残ったのです。

【兵動大樹さん】「すごかったですね今井町。いろんな景色があって、散歩には最高です。街が覚えられませんよ。覚えられへんけど、ふうっと歩くだけで最高でございます」

平成5年に「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された今井町。

現在も約190世帯が暮らす情緒あふれる町並みは、まさに歴史へのタイムスリップを体験できる特別な場所です。

(関西テレビ「newsランナー 兵動大樹の今昔さんぽ」2025年10月10日放送)

関西テレビ
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