北海道・函館市では不漁が続くスルメイカに代わって、近年取れるようになったブリを新たな名物にしようと取り組んできました。
しかし2025年は一転、このブリが不漁となる事態に。
漁業関係者は海の異変に翻弄されています。
船に揚がったのは主にインド太平洋の温帯や熱帯に生息するマンタ。
そしてジンベエザメです。
どれも函館近海で見られることはありませんでした。
ブリもかつては函館で水揚げされることがなかった魚です。
2005年にはブリと同じ魚でサイズが小さい「ハマチ」が約50トン、網にかかっていましたが、2010年代からブリが取れ始め、2024年はブリの水揚げが2800トンほどに達しました。
ブリが豊漁の一方で、函館名物のスルメイカは10年ほど前から不漁が続いています。
スルメイカが取れないことで函館では危機感が広がり、ブリを新たな名物として売り出そうとさまざまな商品開発が行われてきました。
「例えば朝市の中にブリラーメンの店が出店したり、学校給食の中にブリのタレカツバーガーが提供されたり、料理教室をやったり」
「ブリの知名度とおいしさを消費拡大に向けた動きをしていった」(函館市農林水産部市場・販路担当 佐々木光明課長)
ところがブリが網に入る時期を迎えても、2025年は様子が違います。
10月10日には重さが10キロクラスの大きなものもいくつか見られましたが…
「全然少ない。きょうはブリの水揚げは1.5トンくらい。今年はちょっと少ない。走りがあんまり良くない。これからだと思う」(イジルシ佐藤漁業 佐藤伴篤さん)
この日、18本のブリを競り落とした卸売業者は不安を募らせていました。
「『秋の主力商品はブリ』でだんだん定着していたのは事実です。僕が扱っている量でいったら(去年の)1/10以下ですね。小ぶりの魚体が多い」(小西鮮魚店 小西一人さん)
函館市の卸売市場で4月から9月までに扱ったブリは約579トン。
2024年の同じ時期と比べて半分にも届きません。
ブリのだしでとったスープ。
「函館ブリ塩ラーメン」もスルメイカに代わる名物を目指して誕生しました。
「いただきます。すごい味はあっさりしてるんですけども、その中でもブリの風味が感じられて、コクのある味わいになっています」(阿部空知記者)
「ブリ塩ラーメンのダシに使っているブリ節は、原料のブリを節に加工してやっているもの。その原料のブリが集まりにくくなっていくと思う」
「価格に影響したり製造に影響したりするなとみている」(いずれも小西鮮魚店 小西一人さん)
このままブリの水揚げが減り続けると値上げの可能性も…
「きのうも函館でブリ食べました。いっぱい取れた方がいいんですけどね」(観光客)
ブリの水揚げはなぜ減ったのでしょうか。
専門家はこう推測します。
「(ブリは)道東エリアまで生息域が広がってたくさん取れるようになったという経緯がある。黒潮の流れが大きく変わって、大蛇行の状態から今年は通常の流れに収まりつつある」
「西から東に行く流れになってきたので、今のメインの漁場が千葉沖にできている。その分、去年まで北海道に来ていた魚があまり来ていない」(近畿大学 有路昌彦教授)
ここ数日は1日50トン以上に漁獲が回復し始めていて、関係者はこのまま安定するようにと願っています。