外国人実習生にアントキノヒノキ?愛媛の林業に新たな風

ヒノキの枝葉を使った「アントキノヒノキ」という商品。
担い手不足を補うのはインドネシアなどからの外国人実習生たち。

愛媛県は森林面積が県全体の約7割を占め、特にヒノキの素材生産量は過去5年間で、全国3位以内という林業県だが、直面する課題に新たな挑戦が続いている。

外国人技能実習生の活躍が新たな風になるかもしれない
外国人技能実習生の活躍が新たな風になるかもしれない
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愛媛の森林で技能実習に励むインドネシア出身のふたりの青年

愛媛県東温市の現場にやってきたのは、2人の技能実習生。
県森林組合連合会が受け入れているインドネシア出身のファジャル・ヌルハニフさん(29)と、エム・アルディラさん(25)だ。
去年7月に来日し、伐採作業の技術習得に挑戦している。

大きく育ったスギやヒノキをチェーンソーで切り、最後に楔を打ち込んで、決められた方向に倒していく。

ファジャル・ヌルハニフさん:
「狙い通り。自然の中で働けるので楽しいです」

エム・アルディラさん:
「倒す方向を変えながら作業するのが難しいです」

「倒す方向を変えながら作業するのが難しいです」
「倒す方向を変えながら作業するのが難しいです」

外国からの技能実習生は愛媛林業の希望

今、彼ら技能実習生は林業の未来への希望となっている。
豊かな自然に恵まれた愛媛県は面積の約7割を森林が占めていて、特にヒノキは過去5年間全国3位以内に入るなど、全国トップレベルの素材生産量を誇るが、そんな愛媛も今や担い手不足や高齢化といった課題に直面している。

県内で林業に従事する人の数は年々減少していて、全国有数の林業県として今後も経営を安定させるには、新たな人材の確保が急務。

そこで県森連は『外国人技能実習生』に注目した。

県森連は『外国人技能実習生』に注目
県森連は『外国人技能実習生』に注目

林業の技術を習得してもらうには1年では時間が足りない

ただ、これまで林業の技能実習は1号だけで、実習生の在留資格は1年しかなかった。

県森林組合連合会・芝芳亀代表理事専務:
「林業の技術を習得してもらうには1年では時間が足りませんので、色んな経験をしながら勉強しながら、2年3年とやっていただくことでスキルが身につきますので、とにかく時間が1年しかないというのが一番大きなネックだった」

そんな中、県森連を始め全国からの要望を受け、国は去年9月に制度を改正し、林業も技能実習2号、3号が追加された。

2人は早速今年3月に行われた林業技能検定の基礎級に合格して、技能実習2号となり、在留期間が2年伸びた。

エム・アルディラさん:
(Q.合格したときは?)「とてもうれしくて気持ちがホッとしました」
(Q.目標は?)「林業の仕事でさらに成長することです必要であれば『特定技能』への移行も考えています」

技能実習2号となり、在留期間が2年伸びた
技能実習2号となり、在留期間が2年伸びた

インドネシアに家族を残して5年の就労も視野に

国内だけでは人手不足の解消が困難とされる業種に、外国人材を受入れるための在留資格「特定技能」を得ることも夢ではなくなり、最長でさらに5年の就労も視野に入ってきた。

ファジャル・ヌルハニフさん:
「インドネシアで家を建てたいです」

ヌルハニフさんにはインドネシアに妻と2人の子どもがいる。

ファジャル・ヌルハニフさん:
「4歳と2歳です」
(Q.会いたくない?)「会いたいです」「毎日連絡しています」

家族を思いながら、彼らは日々まじめに林業に向き合っている。

「毎日連絡しています」
「毎日連絡しています」

除菌消臭ミスト『アントキノヒノキ』

一方で愛媛の林業資源を生かした新たな取り組みも注目されている。
除菌消臭ミスト、名前は『アントキノヒノキ』。
内子町の武田林業が2018年に開発した。原料となるのは、伐採現場に放置され邪魔者扱いされていたヒノキの枝葉だ。

ヒノキの枝葉を2時間ほどかけて蒸留し、ヒノキの香り成分である精油を抽出。
この精油をベースに蒸留水やアロマオイルをブレンドした商品だ。

鈴木瑠梨キャスター:
「爽やかです。目をつぶると本当に今山の中にいて木々に包み込まれているような気分になります」

ユニークなネーミングも気になるアントキノヒノキは、徐々に口コミが広まり、2022年以降は前年の1.2倍の売り上げが続いているということです。

ヒノキの香り成分である精油を抽出したミスト
ヒノキの香り成分である精油を抽出したミスト

「じいちゃんが林業をやっていて」

この商品には、「多くの人に森へ入るきっかけをつくりたい」という武田さんの思いが込められている。

松山市出身の武田さん。大学卒業後は福岡の広告代理店に勤務していたが、実は高校時代から林業に携わりたいという思いがあったという。

武田さん:
「砥部の広田でじいちゃんが林業をやってたんですね。僕ちっちゃいころにその産業山でたくさん楽しい思いを作らせてもらって」

祖父と同じ林業の道を歩む武田さん。商品のラベルには、大切に木を受け継いでくれた祖父への敬意が込められている。

祖父への敬意が込められている
祖父への敬意が込められている

”アノトキノヒノキ”があるから今がある

武田林業・武田惇奨社長:
「武田晴年と孫の武田惇奨という、もしかしたら息子じゃなくて、孫である僕たち世代に向けて植林したかもしれない。あの時植えてくれたヒノキをたくさんの人々にまずは香りという形で提供しようということで」

アノトキのヒノキがあるから今がある。

武田林業・武田惇奨社
「この商品が森の入り口となって、皆さんが山とか林業もいいなみたいなことを思うきっかけになってくれたらうれしいですね」

植えてから数十年後にようやく収益化する林業。若き技能実習生たちの挑戦と、自然の恵みを生かした新たな取り組みが、これからの愛媛の林業を支える希望の礎となるかも知れない。

若き技能実習生たちの挑戦と新たな取り組み
若き技能実習生たちの挑戦と新たな取り組み
テレビ愛媛
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