長野県安曇野市の新たな特産を目指す取り組みです。週末、市内に栗スイーツの店がオープンしました。10年前から栽培を始めた男性の念願だった店。「安曇野を栗の産地に」と意気込んでいます。
先日、安曇野インター近くにオープンした「わの栗のわ AZUMINO」。店内には栗を使った菓子がずらり。
日本和栗協会に所属する岐阜県恵那市、長野県小布施町、飯島町の菓子店の商品が並ぶほか、安曇野市産の栗を使ったスイーツがイートインコーナーで食べられます。
(記者リポート)
「安曇野栗のモンブランをいただきます。口どけが軽やかで豊かな栗の風味がふわーっと広がります。栗のほくほくした味わいも楽しめます」
岐阜県恵那市や長野県小布施町、飯島町は栗の産地として知られていますが、その中に安曇野も?
安曇野の特産といえば、ワサビにリンゴ、そして近年は夏秋イチゴなど。「栗」はあまりなじみがありませんが―。
信州あづみ野栗・原文典社長:
「鮮度にこだわって、毎朝拾うとこからやってます。けさも2時間ほど畑で拾ってきた」
店をオープンした「信州あづみ野栗」の原文典社長。「安曇野を栗の名産地に」と夢見て10年以上。ついに店のオープンまでこぎつけました。
信州あづみ野栗・原文典社長:
「この地で栗を産地にして、地域に貢献したいという夢を描いてきました。地元にこれだけ誇りにできるものがあると分かっていただきたいし、伝わる場ができたことがとてもうれしい」
信州あづみ野栗・原文典社長:
「これが、うちの栗畑です」
原さんは現在6ヘクタールの畑で10種類・2000本を育てています。
今は早生品種の収穫の最盛期。栗栽培に力を注ぐ原さんですが、元々は、松本市のビルメンテナンス業の経営者です。
40年ほど前に兄と2人で創業し、今ではグループ全体で従業員約600人の企業に成長させました。「信州あづみ野栗」はその子会社という位置づけです。
会社を後継に譲ったタイミングで、地域貢献する事業を探していた原さん。10年ほど前に、知り合いだった岐阜県恵那市の菓子店の社長から、栗の栽培で町おこしを進めている事例を紹介され、「これならば」と農業への進出を決めました。
信州あづみ野栗・原文典社長:
「従事者の不足、耕作放棄地の問題が今クローズアップされてきてます。それらの問題もわれわれが農業に携わることで解決し、栗を植えるということで地域の活性化に貢献できたらという思いもありまして、安曇野の地でも栗を新たなブランドとして生産していこうと」
「信州あづみ野栗」を立ち上げた原さん。市内の耕作放棄地を借り、2015年に苗を植え始めます。3年ほど経ち収穫できるようになると他の産地にも負けない香りの高い栗に育っていました。秘密は北アルプスの伏流水と寒暖差のある気候です。
信州あづみ野栗・原文典社長:
「安曇野の地は晴天率、気温差を含めていくと最適な地ではないか」
2024年は3.5トンを収穫、5年後には20トンを見込んでいます。
収穫量増加を見越し、2025年導入したのが「イガ」を取り除き実と分ける機械です。
省人化も進めていますが、虫食いなどを見つける作業は、すべて手作業。一日に使う量を、毎朝収穫しています。手間はかかりますが、「鮮度」を重視する原社長のこだわりです。
信州あづみ野栗・原文典社長:
「鮮度を保つことで栗のきれいな黄色、それから香りがすごいですね。(選別も)手間のかかる作業ですけど、これにもしっかりとこだわって、良い栗をお届けしたい」
これまで地元の道の駅で「焼き栗」として販売し人気に。2024年はキッチンカーで、シェイクなどの加工品も販売しました。
そして、栗栽培を始めてから10年。ついに初の店舗を構えました。まだ収量が少ないため、安曇野産の栗を使った商品はイートインのモンブランとソフトクリームのみです。
店長を任されたのは長男の周平さんです。
周平さん:
「純粋にすごくうれしい。ようやくここまで提供できるようになった。試作に試作を重ねて作らせていただきました」
自慢のモンブランは、生クリームとカスタードの上にサクサクのメレンゲを乗せ―。
周平さん:
「安曇野の栗を使ったペーストです」
栗のペーストをたっぷり搾ります。
周平さん:
「できる限り栗を感じられる、最低限の砂糖の分量にこだわって作ってます」
プレオープンで大好評。
栗スイーツを食べた客:
「濃厚で、栗だらけっていう感じ。(観光地の)地域柄、栗ってマッチすると思うので、これからどんどん伸びていくんじゃないか」
一方、店には産地の恵那市・小布施町・飯島町の菓子店の商品も豊富にそろえました。生産者の減少という共通の課題がある中、連携して和栗の魅力を発信しようというコンセプトです。
恵那川上屋(岐阜)・鎌田真悟社長:
「(安曇野産は)香りも強いですし、本当においしい栗ができてます。僕たちは負けてられないなという気持ちですけども、産地が永年続いていけるような、そういったものを目指してるので、4社がうまくまとまってくれば日本の和栗を背負っていけるんじゃないかな」
小布施の栗菓子店も―。
井筒屋鐡治(小布施)・藤沢邦考さん:
「それぞれの地域の特徴があると思うので、お互い刺激し合いながら、高めあっていければ面白いんじゃないかなと」
安曇野を栗の産地に。原社長の挑戦は始まったばかりです。
信州あづみ野栗・原文典社長:
「僕らを拠点にして、生産者の皆さんがこの地域で作っていただいて、自慢のものができるということは、地域にとっても生産者にとってもうれしいこと。そんなみんなが喜ぶような事業に育てていきたい」