9月に入っても厳しい暑さが続く中、SNSに投稿された“赤すぎる”トンボの写真が注目を集めている。あまり見慣れない“鮮やかな赤色”のトンボが伝える重要なサインとは。
SNSで話題 鮮やかな“赤トンボ”
パッと目を惹く鮮やかな赤色のトンボ。羽も赤味がかっている。

写真を撮影したのは、福岡市南区の昆虫写真家、集治洸太さん。「8月の末、職場に作っている“昆虫を呼ぶ庭”にとまっているところを撮影した」と話す。

そのトンボは、「混じり気のない赤というか、本当に凄くビビッドな赤。羽がキラキラ輝いていて、とても綺麗だと感じた」と集知さんは、シャッターを切った瞬間を思い返す。集治さんが、このトンボに遭遇したのは、写真を撮った時だけだという。

温暖化で日本の生息地も北上
見慣れない赤色のトンボの正体は?日本を代表する昆虫学の権威、九州大学総合研究博物館の丸山宗利准教授に写真を見せたところ、「これは『ベニトンボ』といって、いかにも熱帯という雰囲気のトンボ。もともとは、東南アジアにいるトンボだったが、温暖化と共に日本に入って来て北上してきた」と解説する。

丸山准教授によると、ベニトンボは、1980年代に沖縄や鹿児島で散発的に見られるようになり、2000年代に入ると九州北部でもよく見られるようになったという。

福岡で、ベニトンボの目撃例がある福岡市南区の花畑園芸公園を訪ねた。「そんなによく見かけるということではない」と花畑園芸公園の光嶋浩一副所長が話していた矢先、「あそこにいますね!」と指さした。池のほとりの枝に、小ぶりで鮮やかな赤い色のトンボを発見。

ベニトンボは、花畑園芸公園に住み着いている可能性が高く、探す時は、池のほとりの枝の突き出た所や開けた場所を見るといいとのことだ。

昔の“赤とんぼ”とは中身が違う
一方で丸山准教授は、温暖化による昆虫の生態系の変化に警鐘を鳴らす。

「本来、アカトンボというのは、アキアカネとかナツアカネというやつだった。それが福岡では、ほとんど見られなくなってしまった。一見、トンボが飛んでいる昔ながらの風景に見えても、実は、中身は全然、変わってきている」。

残暑の中で見つかった鮮やかなピンクのトンボは、気候変動を知らせる小さくも重要なサインかもしれない。
(テレビ西日本)