神戸市のマンションで24歳の女性が殺害された事件。

発生から3日で2週間が経ちますが、事件について多くのことが謎のままとなっています。そんな中、谷本容疑者の同級生に独自に接触。その証言から人物像に迫りました。

過去、2度にわたりストーカー行為で処分を受けた末に起きた今回の事件。

事件の状況を再現し、検証を実施すると、見えてきたのは「尾行」の容易さと、尾行されていることに気が付くのは難しい実態でした。

見知らぬ人から後を付けられる恐怖…どうすれば自分の身を守ることができるのか。その術に迫ります。

■「好みのタイプの女性だと思って後をつけた」容疑者はどういった人物なのか

殺人の疑いで逮捕された谷本将志容疑者(35)は、過去2度にわたりストーカー行為で略式命令を受けたり、執行猶予付きの有罪判決を受けるなどの過去があったことが明らかになっています。

さらに事件の3日前には別の女性の後を付けマンションのオートロックをすり抜ける行為を実行。そして今回の事件が起きました。

「好みのタイプの女性だと思って後をつけた」

警察の調べに対してこう語っているという谷本容疑者とは一体どういった人物なのか。

■「気に入った女の子について行く」容疑者の同級生からの証言も

今回、姿を映さないことを条件に、谷本容疑者の小中学校の同級生に独自に話を聞くことができました。

(Q:谷本容疑者はどんな人物か)
【谷本容疑者の小中学校の同級生】「不良とかではなくて普通な、割と静かなタイプではあった」

谷本容疑者について、そこまで目立つようなタイプではなかったと振り返る男性。

一方でその人間性について“ある一面”が記憶に残っているといいます。

【谷本容疑者の小中学校の同級生】「おとなしいグループの中で威張り気味…ボス。にぎやかなグループでは威張らない」

(Q:人を選んでいるのか)
【谷本容疑者の小中学校の同級生】「そうですね」

さらに”異性との関係”についてこんな話も耳にしたそうです。

【谷本容疑者の小中学校の同級生】「うろ覚えですけど。気に入った女の子について行くみたいなのが一回あった気がする」

(Q:いつぐらいのことか)
【谷本容疑者の小中学校の同級生】「中学とかではなかったですかね」

谷本容疑者が気に入った女子生徒の家までついていったという話を中学校時代に聞いたと明かしました。

■ストーカー「面識なし」の事案は8.8%にも

これまでの取材で谷本容疑者は休暇をとって先月17日に神戸市を訪れ、翌日の18日に被害者の片山恵さん(24)を認識。後を付け回す行動をとりはじめました。

そして、事件当日の20日には、およそ50分もの間、片山さんを尾行し、犯行に及んだとみられています。

去年1年間で警察に相談があったストーカー事案はおよそ2万件。その中で「面識なし」の事案は8.8%にも上ります。

■見知らぬ相手に後を付けられていることに人は気が付くのか、検証

見知らぬ相手に後を付けられていることに人は気が付くのか?今回、番組では事件当時の状況を再現し検証を行うことにしました。

協力してもらうのは20代の一般女性。事件の検証とは伝えず「歩く時間を計測するための撮影」と伝え、JR元町駅から東遊園地まで歩いてもらいます。

「普段通りに歩いてきてください」と伝え、事件発生時と同じ時間帯で検証を始めます。

■スマホ・イヤホンが尾行を容易いものに

【記者】「およそ10メートルの距離をもって女性の後をついて行きたいと思います」

今回の事件で谷本容疑者は、防犯カメラの映像などからおよそ10メートル前後の距離を保ち、女性の後ろをついていったことが分かっています。

【記者】「このように間に人が入っても、女性を目視することができる。今、女性がまがりました。一度姿は見えなくなっています。我々も曲がるとすぐに女性の姿を確認することができます」

まず検証を始めて明らかになったのは、対象となった人物を認識することの容易さ。

多くの人が行き交う街中でも、特徴をはっきり認識していれば見失うことはありません。

そして、現代人が移動するときの特徴の一つといえるのが…

【記者】「片手にはスマートフォン、耳にはイヤホンをしているように見えます。後ろを一切振り返りません」

女性は移動中、終始イヤホンを装着し、スマートフォンを見ながら歩いていました。周囲への注意力をなくす要因のひとつになっているのでしょうか。

【記者】「前に女性がいるんですけど、気づかれる素振りまったくない」

■15分間の検証で、相手に気づかれず、容易に後をつけることができた

JR元町駅を出発しおよそ15分。ゴール地点である東遊園地に女性が到着しました。ここで、取材の趣旨を明かします。

【記者】「この人がずっと後ろをついてきていた」
【女性】「えっ、気付かなかった。後ろ見てなかったです」
(Q:結構近づいた時もあったんですけど)
【女性】「全くわかんなかった」

全く気が付くことはなかったと話す女性。

【女性】「地図見たりイヤホン付けて、インスタ見たりとかケータイに夢中になってました」

(Q:ついて行く側は簡単?)
【女性】「簡単でしたね。ある一定の距離をあけてればバレないし、振り返らないので」

検証で分かったのは面識がなければ気付かれずについて行くのは非常に簡単な一方、尾行されていることに気が付くのは難しい実態でした。

■自分の身を守るためには「歩きながらチラチラ後ろを見る」

では、一体どのようにしてこういった行為から自分自身で身を守ればいいのか?

大阪府警で20年以上の勤務していた経験のある防犯の専門家はこう指摘します。

【防犯アドバイザー折元洋巳さん】「スマホ見ながらとか音楽聞きながらみたいな注意散漫な状況に自分の身をおかない。歩きながらチラチラ後ろを見ているふうにスタイルづけ。ショーウィンドーがある店舗がある。そこの前に立つと後ろが反射して見えますよね。しばらく見てるとじっと見てるやつがいるとか、そういうやつを見ていく」

(Q:ささいなことでも後をつける側にとっては嫌なこと?)
【防犯アドバイザー折元洋巳さん】「嫌なことです。気づかれたらどうしようと思いながら追いかけていると思う。『あんたわかってるで』くらい意思表示をすることで、失敗したと思わせた方がいい。尾行している側に」

「気づかれているかもしれない」と意識させることの重要性を指摘しました。

■ストーカー被害から身を守るためには

ストーカー被害から身を守るためにできる対策です。

・横断歩道の途中で振り返る
横断歩道は一斉に歩き出します。歩行者と歩行者の距離が近くなっている状態で、不審者を発見しやすくなり、不審者やストーカー側も気づかれたと感じて、尾行をやめる可能性が高まるということです。

・入り口と出口を変えられる場所を把握しておく
ホテルや商業施設など入口とは別の出口を把握しておくことで、入口で出てくるのを待っている人物とは違う出口から逃げることができるということです。

■AERA元編集長の浜田さん「踏み込んだ捜査が必要だったのではないか」

AERA元編集長の浜田さんは、容疑者について、「踏み込んだ捜査が必要だったのではないか」と指摘し、「検証が必要」と述べました。

【ジャーナリスト 浜田敬子さん】「スマホ・イヤホンをしながら歩くのは、夜道ではやらない方がいいと思います。もしかして付けられてるなと思ったら、道を反対側渡ってみるとか、それでもついてきたらやっぱりつけられてるなとか。(後を付けられていると思った場合は)コンビニに入って、助けを求めるのもいいかもしれないです。

女性が被害に合うケースが多いと思うんですけど、女性側だけが気をつけるっておかしな話。今回の容疑者は過去にも何件か(事件を)起こしてるわけです。他にも余罪があるんじゃないかと踏み込んで捜査していれば…という気持ちにもなるんですけども、そこも含めて検証が必要なんじゃないかなと思います」

(関西テレビ「newsランナー」 2025年9月2日放送)

関西テレビ
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