熊本県内の小・中学生とその保護者が7月、合志市にある国立療養所菊池恵楓園をを訪れ、ハンセン病について学びました。いわれなき差別が続いていたことを知り、親子はどんなことを考えたのでしょうか?

【菊池恵楓園 歴史資料館 原田 寿真 学芸員】
「目の前に見えてきたのが監禁室。恵楓園の入所者はかつて療養所の外に出ることが認められませんでした。無断に外に出ていることが分かってしまった場合、発覚した際には、こちらの『監禁室』と呼ばれる建物に閉じ込められるという罰を受けていました」

合志市にある、国立国立療養所 菊池恵楓園です。ハンセン病の元患者たちが暮らしています。

7月31日、熊本県内の小・中学生とその保護者、合わせて46人がここを訪れました。

『菊池恵楓園で学ぶ旅』。ハンセン病について正しく知識を身につけ偏見や差別をなくそうと、熊本県が毎年開いているものです。

参加者は学芸員の原田 寿真さんの説明を聞きながら園内を歩きました。

こちらは『監禁室』です。無断外出や規則違反などの問題行動があった入所者を閉じ込めていた建物です。

「真っ暗の中、夜ここで一人で過ごさなといけないことになります。入所者の心情にも近づいてほしい」
「こちらの方、『地獄』という文字が書いてあるのが見えますか。入所者の人がペン先や万年筆の先、もしくは鉛筆などで書き込んだいろんな文字が見えますね。入所者の心情といったものが読み取れるかなと思います」

参加者は、監禁室の壁をライトで照らし、当時、監禁された入所者たちの思いに触れていました。

そして、歴史資料館でも親子で学びを深めます。

【隔離の壁の資料を見た親子の会話】
母「カントリーパークとの道沿いの所をずっと壁があって。外が見えないじゃん。壁があると、外がどうなっているかって。(壁を)削ってから、外が見たいから。ここ(壁)に足をかけて乗り越えて外に出て行ったり」

2003年、阿蘇の温泉ホテルに菊池恵楓園の入所者たちが宿泊を拒否され、『宿泊拒否事件』として、大きく報道されました。

その際、全国から被害者であるはずの入所者の自治会宛てに、誹謗中傷の手紙がたくさん届きました。

【親子の会話】
母「これ書いた人たちひどいよね」
娘「ひどい」

また、当事者からも話を聞きました。

【菊池恵楓園 入所者自治会 太田 明 会長代行】
「らい予防法改正運動の時には私は小学3年だったが、患者の自治会の集会やデモ行進に参加しました。これが私の患者運動の原点だったんでしょうね」

8歳でハンセン病を発症して入所した太田 明さんです。参加者からの質問に答えました。

【司会】
「特に印象に深く残っている思い出があったら教えてください」

【菊池恵楓園 入所者自治会 太田 明 会長代行】
「ハンセン病患者のための高校の野球部のメンバー10人で、東日本5つの療養所に野球の遠征に行ったんです。最後の最後、負けましたが、いい思い出でした。高校にも行けない、社会復帰もできない人が大体3分の1ずつでした。皆さんは立派な学校で立派な先生に習っているから大きな希望と大志を抱いて勉強してほしいですね」

【武蔵ヶ丘中学校2年 丸目 瑛介さん】
「『世の中には楽しいことがいっぱいあるから』という言葉が心に残った。〈学校や部活でつらいことがあっても前向きに捉えて頑張ろう〉と思いました」

【武蔵ヶ丘中学校3年 辻 夢花さん】
「監禁室で壁に人をののしる言葉や日付など、さまざまなことが書かれていて、そこに閉じ込められていた人の心情が知れて、印象に残りました」

【母/辻由衣菜さん】
「県外から引っ越してきて熊本に住んで数年ですが、恵楓園を最初に見たときに、ここが何なのか分からなくて、そもそも〈入っていい施設ではない〉と思っていました。話を聞いてみたら、〈意外と入っていい施設なんだ〉と知れて、まずそこが驚いた。『ハンセン病』という言葉もよく知らなかったので、本当に知るいいきっかけになったと思いました」

【菊池恵楓園 歴史資料館 原田 寿真 学芸員】
「入所者の方々が作り上げてきた空間を実際に歩いてもらうことで感じてもらえるかなと思っています」

【旧納骨堂の写真を見た親子】
娘「これ、なに?」
母「ここに亡くなった人とかがまつってあって、お参りしたりするんじゃないかな」娘「慰霊の場?」
母「うん、納骨。ここに骨とか」
娘「赤ちゃん死んじゃったら、ここに入れるの?」
母「入れるんじゃないけど、ここにいないけど、いるの」
娘「〈いないのにいる〉ってどういうこと?」

自分の足で歩くことでそれぞれが様々な疑問を抱く。それがハンセン病を知る第一歩かもしれません。

8月19日、合志市の夜空に花火が打ち上げられました。

菊池恵楓園入所者自治会による園内で亡くなった仲間のための鎮魂の花火です。

菊池恵楓園では1909(明治42)年の開設以来3894人が亡くなりました。
(2025年7月29日時点)

熊本県が主催する『菊池恵楓園で学ぶ旅』、次回は一般の人も対象に10月31日に開催予定です。

熊本県では10月1日から30日にかけて応募を受け付けています。
※2026年3月27日にも開催予定各日程40人の定員で応募多数の場合は抽選。

テレビ熊本
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