独特な構図や色使いで描かれたCGアート。

鹿児島県霧島市のお寺で現在、展覧会が開かれています。

作品は鹿児島市の27歳の自閉症の男性が少年時代に描いたもの。

男性が家族に言葉ではなく、アートで自分の気持ちを伝えるようになったのにはあるきっかけがあったそうです。

霧島市国分敷根の法円寺。

世界各国の絵本が並べられた絵本堂の一画に、色とりどりのアート作品が現在、展示されています。

みんなでいっしょに「1・2・3」!!

たくさんの動物が寄り添い前進する姿が印象的です。

作品を描いたのは鹿児島市の米盛大翔さん、子どもの頃に製作したそうです。

この絵について母親の章子さんは…

米盛章子さん
「これはブレーメンの音楽隊といって、原作は4匹です」
「これがこうです」
「僕たちが集まればこんなことだってできる。それを描いて教えてくれた気がして」

大翔さんは2歳の時に自閉症と診断されました。

会話によるコミュニケーションが難しく、大翔さんも家族も考えや感情が伝わりにくいもどかしさを抱えていました。

そんな中、転機が訪れたのは大翔さんが8歳の時、子供用のパソコンを手にしたことでした。

章子さん
「(パソコンを)大翔は使えないと思い込んでいたし、使わせてみようと思ったこともなかった。そうしたらドラえもんの塗り絵を1人で完璧に仕上げた。」
「『大翔はこれが分かるんだ』。ちゃんと説明したら分かるのに、私が説明することをしてなかったから分からなかっただけだと、その時に初めて気づいて。すごく申し訳ないなと思った」

大翔さんは夢中でパソコンに向かい、せきを切ったように次々と感性豊かなCG作品を描くように。

大好きな動物とともに表現したい風景や感情をアートに込めました。

こちらの絵は、その日見た雪景色を描いたものですが、大翔さんはさらに2日後、3日後を想像した風景を加え、連作にしました。

章子さん
「当時、自閉症の体はベタベタがだめだったり、手が汚れると気になってクレヨンが握れないから紙に絵は描けなかったけど、心の中ならいくらでも、仲間も増やせるし、空の色も変えられるし、ペイントの世界をすごく楽しんで、そして雪を楽しんで」

この絵は、夕日をながめる動物の仲間たちを描いた「ゆうやけ」。

後ろ姿の構図が見る人を穏やかな気持ちにさせてくれます。

緻密な構図で描かれた「おさんぽ」は、フランス・パリのルーブル美術館に展示されるほど、高く評価されました。

章子さんは、この絵から大翔さんの中にある共存や助け合いの精神を感じるそうです。

実は、これら大翔さんのCG作品は、8歳から11歳までのたった3年間で描かれたもの。

15年近く前の作品ですが、色あせることなく今もなお見る人の心を動かしています。

来場者
「見たときに楽しそうだと思って。想像する世界がわくわくしていると」

鹿児島市で大翔さんの作品をみたことがきっかけで、今回の展示を企画した法円寺の藤原住職は作品とともにその背景も見てほしいと話します。

法円寺・藤原徹住職
「お母さんの言葉を通してもう一回見ると、『かわいい』ということだけではなく、自分の普段のものの見方、価値観をもう一回問い返すきっかけになった」

成長し、ほかのコミュニケーション手段を身に着けるにつれ、次第に絵は描かなくなった大翔さん、今は刺しゅう作りに興味があるそうです。

そして母親の章子さんは、大翔さんの作品とそれにまつわる家族の体験を伝える活動を続けています。

章子さん
「私が今伝えているのは、自分が苦しかった時に助けてもらった言葉がある。私が大翔と過ごした時間の中でやってきたことがアドバイスになるのか」

この作品展は8月24日まで開かれています。

鹿児島テレビ
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