全国でいま急増している“マダニ感染症”。ことしの感染者数がすでに去年を上回っていることが分かった。

夏休み真っ只中!山や川などで自然を満喫する人も多いのではないか。

しかし、そこにはマダニの危険性が。

先月末に、広島県の80代の男性が死亡するなど、ことしに入り死亡者が相次いでいる“マダニ感染症”。

その致死率は最大30パーセントとも。拡大するマダニ感染症の背景に迫った。

マダニ
マダニ
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■奈良公園のシカにも「マダニ」

取材班がまず向かったのは、奈良市にある奈良公園。

記者リポート:観光客の方がシカをなでていますね。

ここには、野生のシカおよそ1300頭が生息している。観光客からも大人気のシカ。

しかしそのシカをよく見てみると…

記者リポート:シカの首元にマダニがついています。下のほうにもマダニですね。元気に動いています。

からだの表面には、活発に動き回るマダニの姿が…さらに

記者リポート:あっここにも!耳の下にマダニ、その下にもいますね。

取材班は、このシカだけで少なくとも“4匹”のマダニを確認した。

その後も、次々にマダニが寄生するシカを発見。

これには観光客も…

観光客:ちょっと触るの躊躇しますね。
観光客:マダニって山の中とかにいるイメージなのでびっくりしました。もう何も思わず触っていたので。

日本全国に分布するマダニは、動物に寄生して吸血するが、人にも寄生する恐れがあるため奈良県もむやみにシカに触らないように注意を呼びかけている。

奈良公園のシカ
奈良公園のシカ

■“マダニ感染症”「SFTS」致死率は10%~30%とも 刺された男性は…

実際、マダニに刺されたことがあるという40代の男性は…。

マダニに刺された男性(40代):梅園に入って1~2日後くらいにプチっとなっていて。よく見たらマダニだったので無理やり取って。そしたらやっぱり案の定(マダニの)口が残ったかでしばらく2~3週間くらいはチクチクした。徐々に大きくなっていきその間、痛みも何もない。

男性は幸い、大きな症状も出ず大事には至らなかったが、マダニに刺されることで引き起こす感染症がある。

男性が刺された跡
男性が刺された跡

■「マダニ感染症」SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は過去最悪のペースで急増

それが、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)です。

「マダニ感染症」とも呼ばれ、発症すると高熱や嘔吐のほか出血などの症状があり、厚労省によると、致死率は10パーセントから30パーセント。現状、有効なワクチンはありません。

国の機関が12日、発表したデータによると、ことしの感染者数は、過去最悪のペースで増えていて、今月3日時点ですでに去年の120人を上回っています。

SFTS発症数
SFTS発症数

■獣道の『シダ植物』にいやすいというマダニ

なぜ今、マダニ感染症が増えているのか…。

取材班は、マダニに詳しい専門家とその生態を調査した。

まず向かったのは、兵庫県の山中にある遊歩道。

モリ環境衛生センター森重樹社長:これは獣が下りたり、上ったりする獣道なんですけど、こういったところの際にあるシダ植物にいやすい。

モリ環境衛生センター森重樹社長
モリ環境衛生センター森重樹社長

■たった数分でおよそ20匹のマダニを捕獲

マダニを捕獲する道具「マダニホイホイ」を使って、周辺の草木をなぞってみると…

モリ環境衛生センター森重樹社長:大量に捕れました!パッとみてわかりますか?ほぼごみですよね。これが(マダニの)固まりです。卵が破裂した最初の段階のよーく見てると動くと思います。

肉眼ではよく見えませんが…顕微鏡で覗いてみると…

記者:うわ!動いていますね。顕微鏡で見ると活発。めちゃくちゃいますね!

たった数分で捕獲したマダニの数は、およそ20匹。

マダニは本来このように、人との接触が少ない山の中に多くいますが、最近はその生息場所にも変化があるようだ。

たった数分で捕獲したマダニの数は、およそ20匹
たった数分で捕獲したマダニの数は、およそ20匹

■公園の遊具近くにもマダニが

向かったのは、子供用の遊具がある公園。

モリ環境衛生センター森重樹社長:当然、山にはマダニと野生動物、獣がいます。その獣が公園の中までマダニをつけた状態で持ってきてしまう。

マダニを探してみると…

モリ環境衛生センター森重樹社長:いた!成体です。取れました。腕をあげている。

遊具のすぐ近くの茂みでマダニを捕獲した。子供が遊ぶ場所にも潜むマダニの危険。

公園にもマダニが
公園にもマダニが

■「里山が消失」マダニが人の住むエリアに頻繁に出没 温暖化の影響も

一体なぜ、このような場所に生息するようになったのか。

モリ環境衛生センター森重樹社長:(マダニは)山間部だとかそういうところの問題だったが、里山が消失してしまって、野生動物が無抵抗に住宅の周りにより一層入り込んでくる。そうなると我々人間も刺されやすくなる。

さらに近年の「気温の変化」も影響しているそうだ。

モリ環境衛生センター森重樹社長:(温暖化で)野生動物も越冬する時期が後ろ倒しになっている。行動する時間も長くなるのでマダニが落ちやすくなる。

里山が無くなり、行動時間も長くなった野生動物が人の住むエリアに頻繁に出没。

この野生動物が多くのマダニを運び、人への被害が増えているということだ。

人と交わることが決して多くはなかった「マダニ」。今は身近に潜む危険な生き物として注意が必要だ。

モリ環境衛生センター森重樹社長
モリ環境衛生センター森重樹社長

■自然が多いところに行くときに注意したいマダニ対策

【マダニ対策の注意点】
・長袖に長ズボンを着用し、帽子をかぶる。
・上着はズボンに入れて、隙間を作らない

特にペットは対策が必要だ。ペットも感染症にかかる可能性があり、そこから人間に移ることも考えられる。もしマダニが付着していたり、赤い斑点などの症状がある場合は、皮膚科へ相談することが大事だ。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年8月12日放送)

マダニ対策の注意点
マダニ対策の注意点
関西テレビ
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