【専門店】ライトン(札幌)はコインランドリーと洗濯代行を手掛ける「ジャバリン」などの事業を手掛け、洗濯のイメージを大きく変えた。代表取締役の竹内康さんに洗濯サービスの進化とその未来について聞きました。 BOSS TALK#108
――どんなお子さんでしたか。
「出身は栃木県小山市。田舎なので、虫を捕ったり、釣りをしたり。理科が好きだったのでテレビの分解などの実験を楽しんでいました」
――どんな将来を思い描いていましたか。
「大学で応用化学を勉強し、卒業後は研究開発部門に入りました。最初は不織布の国内最大手、日本バイリーン(東京)に入り、電池内のプラス極とマイナス極を隔てるセパレーターに不織布が使われており、物質の中身を変えずに表面の性質を変える『表面改質技術』を研究しました。10年ぐらいして、別の研究に移りそうだったので、転職して表面改質の専門会社の三好化成(東京)に入りました。化粧品のパウダーファンデーションの原料メーカーで、原料の表面改質を研究しました」
震災を機に札幌に移住 研究職の仕事がなく、化学の知識を生かし起業
――独立のタイミングは?
「東日本大震災まで埼玉で暮らしていましたが、安心して生活できるところに移住しようと、札幌に移りました。研究員としては就職先がなく、繊維と界面活性剤、石鹸に詳しかったので、コインランドリーと洗濯代行の店ジャパリンを始めました。最初の月の売り上げが10万円しかなく、家賃も払えない状態。あまりに暇だったので、札幌市中央区の円山、宮の森地区で定期的にPRチラシのポスティングをしました。配った中に、たまたま新聞記者の方がいて、その記者が新聞記事に取り上げてくれ、そこから経営状況が変わりました。新聞の次はUHBさんに取り上げていただきました」
――テレビの取材はUHBが最初だったのですね。反響はどうでしたか。
「昔は布団洗いは干して、たたいていました。10年以上前までは、布団を水につけて洗うのは『変になったら困る』『コインランドリーでは洗えるわけない』という感じでした。ところが、新聞、テレビで紹介されると、『では、お願いします』になり、流れが変わりました。新聞、テレビを見て、疑問に思う人はいなくなり、洗って、ふっくらするので、評判が口コミで広がりました」
コインランドリーのカウンターでスタッフが相談に乗り、さまざまな助言も
――ダウンジャケット、ダウンコートはクリーニング以外の選択肢はないと思っていました。
「クリーニング屋さんで洗うより、コインランドリーで洗った方がきれいになったりしますが、多少ゆがむこともあります。それでも気にならない除雪用のダウンジャケットなどはコインランドリーで洗えば数百円ですみます。うちはスタッフがいるので、『これはクリーニングで洗ってください』とアドバイスでき、いろいろな対応ができるのが売りです」
――コインランドリーでお店の人が出てきてアドバイスしてくれるのは普通、あり得ないですよ。カウンターで全部見てくれ、仕分けをしてくださって「これはクリーニングに出した方が良いと思います」などと、アドバイスしていただけます。
「家族全員分のダウンジャケット持ってきて、奥さんが『私のものだけはクリーニングで洗ってください』というお客さんが結構います。実はあまり仕上がりに違いはありません。袋に入っているか、入っていないかの違いくらいです」
特定の汚れを落とすオーダーメイドの洗剤を開発 お客さんの困りごとを解決
――今、力を入れていることは?
「洗剤事業を1年半ぐらい前から始めました。もともとワイシャツの汚れ、特定の臭いを取ってほしいという要望が結構あり、自分の家でも洗えないかという相談が持ち込まれました。オーダーメイド洗剤を準備し、うちのやり方で洗えば家でもできます」
――具体的にどういうオーダーが来ますか。
「一番売れているのは野球のユニフォーム用の洗剤ですね。細かく成分を調整して作るうちに、各種の汚れが落ちる感じの洗剤ができました。『こんな汚れがあるのですが』と言われると、作った中から選んで『これで洗ってみてください』とサンプルとして渡し、『それで大丈夫です』となれば、販売します」
――事業の拡大ではどういうところに力を入れていますか。
「就労継続支援事業所の方に来ていただき、洗濯、乾燥、たたみ作業をしてもらっていましたが、コロナウイルス感染拡大時に自分たちで作業をしようと決め、3年ほど前に、就労継続支援B型事業所『ジャバメート』を立ち上げました。洗濯、乾燥、たたみ作業にプラスして洗剤を作る作業もやってもらっています。それ以外にもポスティング、ポスター張り、封入封かんの作業もあり、安心して通える環境を提供したいと思います」
”洗濯難民”の解消を図るサービスも アラワサッタの全国展開も計画
――これから先、北海道での事業をどのように成長させていきますか。
「後志管内積丹町でクリーニング屋さん、コインランドリーのない地域があり、お年寄りの方々は布団が洗えません。郵便局のゆうパックを使って、布団を送ってもらい、洗うサービスをテストマーケティング的にやっています。うちはコインランドリーを使って洗うので、値段が全然安く、配送料を加えても、そんなに高くなりません」
――これから、どういうことにチャレンジしていきたいと思っていますか。
「店のカウンターで洗濯を仕分けして、コインランドリーで洗うのか、クリーニングに出すのか、相談しながら進めるサービスを『アラワサッタ』という名称で展開しています。うちに出してもらえれば、お客さんは『きれいに洗わさった』と言って持ち帰るので、『アラワサッタ』という名前にしました。うちだけでは、もったいないので、全国に広めたいです。商標登録しており、商標貸しをしようと思っています」