プレスリリース配信元:特定非営利活動法人School Voice Project
多くの初任者が一般教員とほぼ同じ「一人前」の業務を背負う現状が明らかに。学校間での支援体制の格差や、いきなり担任を任されることへの疑問の声も。
日本の学校では、初任者教員も新年度から学級担任や授業を一手に担うことが一般的となっています。早い段階から「一人前」として仕事を任せる仕組みと言える一方、現場へのスムーズな適応や精神的なサポートを求める声も高まっています。
今回のアンケートでは、初任者教員が直面している環境について、現場の実態を伺いました。また、若手教員にとって望ましい環境づくりについても、みなさんのご意見をいただいています。
アンケートの概要
■対象 :全国の小~高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2025年5月2日(金)~2025年6月2日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :50件
アンケート結果
Q1. 今年度、あなたの勤務校には、教員としての勤務経験のない初任者は何人いますか。(今回は正規採用のみをカウントしてください)
回答校の62%(31校)で教員経験のない初任者が在籍していました。最も多いのは1人配置の13校(26%)で、2人配置が10校(20%)、3人配置が5校(10%)と続きます。4人配置の学校が2校、5人以上配置の学校が1校ありました。1校あたりの平均は約1.2人でした。
初任者が4人配置の2校は小学校と高等学校で、いずれも在籍児童・生徒数が700名以上の比較的大規模な私立学校でした。一方、在籍児童・生徒数が51~100名の小規模な小学校/中学校でも5人の初任者が配置されているケースもありました。
校種別では、小学校で初任者の配置が比較的多い傾向が見られ(平均約1.5人)、中学校・高等学校では配置数にばらつきがある様子でした。
Q2. 今年度、あなたの勤務校には、教員としての勤務経験(非正規教員・他自治体での正規教員など)のある初任者は何人いますか。(今回は正規採用のみをカウントしてください)
教員経験のある初任者については、25校(50%)で「0人」との回答でしたが、残りの50%の学校では経験のある初任者が配置されています。1人配置が15校(30%)と最も多く、2人配置が4校(8%)、3人配置が3校(6%)、4人配置が1校(2%)、5人以上配置が2校(4%)となっています。
また、1校あたりの平均は約0.9人となり、教員経験のない初任者と合わせると平均で約2.1人の初任者が各校に配置されていることが分かりました。
Q3. あなたの勤務校の初任者の持ちコマ数はどの程度ですか(授業・会議・研修などの時間を含む)。※初任者の経験別に回答し、該当する初任者が複数いる場合には、最も多い方のコマ数をお答えください。
教員経験のない初任者の持ちコマ数は、「15~19コマ」「20~24コマ」の回答が多く見られました。小学校・中学校では、週25コマ以上を担当している初任者も一定数いました。
校種別の平均は小学校が22.3コマ、中学校が17.4コマ、高等学校が16.4コマ程度となっており、小学校・中学校・高等学校の順に初任者の担当コマ数が少なくなる傾向が見られました。
過去の調査(【教職員アンケート結果】教員の持ちコマ数、適正だと思いますか?)では、小学校の一般教員でも74%が20コマ以上を担当し、その多くが「充実した授業ができていない」と回答していることを考えると、初任者が同等のコマ数を担当することの負担の大きさが推察されます。
教員経験のある初任者については「20~24コマ」「25コマ以上」の回答が多いですが、校種別の平均は小学校が22.0コマ、中学校が18.2コマ、高等学校が15.6コマ程度と、経験のない初任者と比べても大きな差はありませんでした。
Q4. あなたの勤務校の初任者で、学級担任を担当している方はいますか。※初任者の経験別に回答してください。
教員経験のない初任者でも、多くが学級担任を担当している現状が見られました。特に小学校では教員経験のあるなしにかかわらず9割以上の学校で初任者が学級担任を担当しています。一方、学級担任をもつ初任者の割合は中学校で5~6割、高等学校では2割弱~4割と減少していき、教科担任制の中学校・高校では学級担任以外での初任者配置が広く行われている様子が見られました。
また、教員経験の有無で比較すると、教員経験のある初任者はない初任者と比べ若干担任をもつ割合が増える傾向は見られたものの、ほぼ同様の傾向と見られました。
Q5. あなたの勤務校の初任者で、指導教科・科目を1人のみで担当している方はいますか。※初任者の経験別に回答してください。
教員経験の有無にかかわらず、多くの初任者が指導教科・科目を1人で担当しています。
教科担任制の中学校・高等学校では、教員経験のない初任者でもそれぞれ45%(中学校)、17%(高等学校)の学校で1人で教科・科目を担当しています。
教員経験のある初任者になるとその割合はさらに多くなり、中学校で67%、高等学校で60%の学校で初任者1人で教科・科目を担当しています。
Q6. あなたの勤務校の初任者で、部活動の主顧問を担当している方はいますか。
※初任者の経験別に回答してください。
教員経験のない初任者では、「副顧問ありで主顧問を担当」している場合が一定数見られました。小学校・高等学校では見られなかったものの、中学校では「副顧問なしで主顧問を担当」のケースもあり、初年度から重い責任を負っている現状が伺えます。
教員経験のある初任者では、特に小学校・中学校で「副顧問ありで主顧問を担当」の割合が経験のない初任者よりも高くなる傾向が見られました。
全体として、初任者のいる学校の約28%で初任者が部活動の主顧問を担当していました。
まとめ
今回のアンケートでは、経験の有無にかかわらず多くの初任者が一般教員とほぼ同等の業務負担を担っている現状が明らかになりました。特に小学校では学級担任として、中学校・高等学校では教科担任として、それぞれ「一人前」の業務を任されている傾向が伺えます。
初任者の持ちコマ数の校種別平均は小学校が22.3コマ、中学校が17.4コマ、高等学校が16.4コマ程度となっており、小学校で比較的多いコマ数を担当している傾向が見られました。過去の調査(【教職員アンケート結果】教員の持ちコマ数、適正だと思いますか?)で小学校教員の74%が20コマ以上で「充実した授業ができていない」と回答していることを考えると、初任者の負担の重さが懸念されます。
初任者への業務上の配慮・支援については、指導体制の整備、業務負担の軽減、担任配置への配慮などの工夫が見られます。一方で、「何もない」「特に行われていない」という回答も多数見られ、学校間で大きな支援体制の格差があることが分かりました。
初任者に必要な支援として最も多く挙げられたのは、段階的な業務移行の仕組みでした。「1年目は担任を持たない」「副担任からスタート」といった声が校種を問わず多数寄せられ、現行の「採用初日から担任」という体制への疑問が挙げられています。
また、相談しやすい環境づくりや職場全体の余裕の必要性も重要な課題として浮かび上がりました。
初任者が安心して成長できる環境を整えることは、教員の定着率向上や子どもたちへの教育の質の確保にもつながります。全国的に「教員不足」や「教員採用試験の採用倍率低下」がニュースになっているなか、学校現場における初任者の育成のあり方を見直しつつ、持続可能な教育環境を築いていくことが求められています。
※WEBメディア「メガホン」の記事はこちら https://megaphone.school-voice-pj.org/2025/07/post-6305/ からご覧いただけます。
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