熱中症の予防や疲労回復に効果的とされているのが、ビタミンB1が豊富な豚肉。しかし、この食材にも連日の厳しい暑さで危機が訪れていた。“日本一暑い養豚場”を取材した。
■豚肉 半世紀ぶりの高値更新!?
日本食肉市場卸売協会によると、2025年1月から5月頃まで1キロあたり600円台前半で推移していた豚肉の取引価格は、6月に入り高騰。7月15日には940円と半世紀ぶりに高値を更新した。
■日本一暑い養豚場
年間、約6000頭の豚を出荷している「しまざき牧場」は、モモを餌に混ぜて脂を甘くする「ロイヤルポーク」などのブランド豚を育てている。
養豚場は、今シーズン39.9℃を記録した福島県伊達市にあり、いま全国で最も暑い養豚場だ。
しまざき牧場の嶋崎裕吉社長は「20~30年前は40℃なんて想像もしていなかった。朝晩は本当に涼しかったので養豚場には適した場所だったけど、今はなんでこんなことになってしまったのか」と語る。
■豚も夏バテ
猛暑が続く影響で、豚も夏バテに。食欲が落ちて、餌を思うように食べてくれない。生育が遅れれば、その分経費も増えていく。
また暑さで母豚の乳も出ずらくなり子豚の成長や、繁殖にも大きな影響が出ているという。
■来年の出荷量にも影響
嶋崎社長は「栄養失調に陥っているので、なかなか発情うまくすることができず、なかなか種付けができない状況が続いている」と話す。
この時期に種付けが進まないと、来年の出荷量や価格にも大きな影響が出るため24時間扇風機を回すなど、暑さ対策に追われている。
「昼間は40℃近くになってしまうので、夕方から朝にかけて涼しい時間帯にどれだけ餌を食べてもらえるか、そこに工夫をしようと思っている」と嶋崎社長は話した。
■鶏卵も価格高騰
JA全農たまごが公表している卵の卸売価格の目安となる東京での平均価格は、5月・6月はMサイズ1キロあたり「340円」と、2023年の“エッグショック”に匹敵するほどの高値になった。
農林水産省によると、2024年の秋から2025年はじめにかけ鳥インフルエンザが流行し供給量が減った一方で、行楽シーズンで需要は増えたことなどが背景にあったという。ただその後は下落傾向にあり、8月4日までの平均は「313円」となった。
■ニワトリも夏バテ!?
農水省によると、夏バテでLサイズを産むはずがMサイズになってしまうなど卵のサイズが小さくなってしまっているという。
ただ鳥インフルの影響があった養鶏農家の生産が徐々に戻り供給量が増えていて、毎年夏は需要が減ることから価格は下落傾向にある。
しかし、2024年同月と比べると1キロあたり100円ほど高い状態だ。
今後の価格の見通しについて農水省は、通常は8月下旬から秋にかけて月見商戦などの影響で需要が増え価格はあがるが、様々な要因があり一概にはいえないとしている。人件費やエサの高騰なども農家を直撃していて、先行きは不透明だ。