特集は小中学校での水泳の授業についてです。かつては夏休みといえば、各学校のプール開放で子供たちが楽しく泳ぐのが恒例となっていましたが、今は仙台市内でも多くの学校で小中学校のプール開放は行われていません。それだけでなく、学期中の授業としての水泳も今、大きく変わりつつあります。背景には水泳の授業をめぐって学校が抱える課題があります。
仙台市青葉区の中山小学校。この日は、1年生約80人が初めて水泳の授業を受けました。学校のプールにはしゃぐ子供たち。一方、大人たちは事故がないよう、細心の注意を払います。
中山小学校では教員のみならず、ボランティアで保護者も参加し、一度の授業に6人から7人の大人が立ち会います。
教員
「プールの授業の期間は短い期間で、夏休み前で終わる所が増えているが、この期間のための労力と授業の緊張感、命を預かっているので、そういった所の負担は他の授業に比べると大きい部分はある」
教員の負担。それは授業時間だけに留まりません。
この1週間ほど前。中山小学校では校長や教頭を含む教員や学生のボランティアなどが、プールの一斉清掃を行いました。1年ぶりの清掃で汚れもひどく、排水にも時間がかかります。
清掃作業が終わり、プールへの水張りが始まったのは、開始から3時間後でした。
水泳の授業はプールの清掃に始まり、さらには毎日の水質や水温の確認、消毒の作業など、管理の徹底が不可欠です。
仙台市立中山小学校 佐竹千織教頭
「プール掃除を見ても負担は大きい。教員の指導も難しい面がある」
今、水泳授業のあり方は全国の学校で検討が続いています。例えば、岩手県滝沢市では今年度から市内にある中学校全6校で水泳の実技指導を廃止。動画教材を用いて水難事故への対応を学ぶ授業などに切り替えました。
実技指導の廃止に踏み切った理由として、滝沢市教育委員会は教員の負担に加え、プールの老朽化や熱中症の懸念などを挙げています。
抱えている課題は仙台市も同様です。市立学校の187のプールのうち、73パーセントにあたる137のプールが、築31年以上となっています。さらにそのうちの36のプールは築51年以上。老朽化が深刻です。
また、熱中症の恐れがあるとして、水泳授業を中止した日のある学校は昨年度、60校以上に上りました。
こうした課題を受けて、市教委は今年度、水泳授業の民間委託を検討する会議を設置し、実証実験を進めています。例えば…。
記者リポート
「現在6年生の水泳の授業が行われています。指導しているのは先生ではなく、普段はスポーツクラブで水泳指導を行っているインストラクターです」
「民間指導員」による水泳授業です。泉区の高森小学校と宮城野区の高砂中学校をモデル校に今年度始まりました。
教員の負担軽減に加えて、子供たち一人一人のレベルに合わせた指導もしやすくなると授業の質向上も期待されています。
指導を受けた児童
「一人一人のことを気にしてくれて、一人一人に違う教え方をしている。民間指導員のコーチたちの方がいい」
教員
「複数の目で見て指導するのがとても大切だと思うので、インストラクターと一緒に指導できるのは、とてもいい指導方法だと思う。担任は子供たちの評価に専念でき、負担軽減になっている」
一方、学校から外に出向いて水泳授業を行う形もあります。スポーツクラブに委託し、民間指導員の指導で、施設のプールを使って授業を行うもの。今年度、市内6つの小中学校で試験的に実施されています。
教員の負担軽減に加えて期待されるのが費用の削減です。老朽化が進むプールの建て替えには1校あたり、2億円から3億円かかると見られています。それに対し、民間施設で水泳の授業をする場合、今年度の委託金額は6校で約2000万円と大幅に少なくなります。
市教委は、実証実験の効果を検証し、今後の水泳授業について年度内に基本方針を策定することを目指しています。
仙台市教育委員会健康教育課 保健体育係 波多野亮介係長
「子供たちに安全安心なプール授業を提供するために、今回の実証授業の結果も踏まえながら、授業のあり方について検討していきたい」
複合的な課題を抱え、転換期を迎えている水泳の授業。模索が続きます。