海上自衛隊の潜水艦修理契約を巡り、川崎重工業が架空取引で捻出した裏金で潜水艦乗組員にゲーム機などの物品を提供していた問題などについて、防衛省は30日、特別防衛監察の最終結果を発表した。
特別防衛監察では、潜水艦乗組員の経験者に対するヒアリングにより、13人の隊員が、川崎重工業からゲーム機やゴルフ用品、財布などの私物を受け取っていたと認めたことが明らかとなった。
中には、合計で50万円相当の物品を受け取っていた隊員もいて、13人が不正に受け取った物品の総額は約140万円相当にのぼる。
防衛省は、物品を受け取った隊員の処分は、自衛隊の倫理審査会で審議した後で対処するとしている。
また、艦船の工事の仕様書を作成する監督官が乗組員の要望を聞き、造船会社に艦の作業に使う作業着や安全靴などの物品を要求し、その額に相当するよう、実際には行わない作業箇所や作業面積を水増していたことも明らかになった。
さらに、三菱重工、ジャパンマリンユナイテッド、佐世保重工業も、修理契約を一部水増しなどして、海自に隊員不正に物品を提供していた。
私物を要望した潜水艦乗組経験者の中には、ヒアリングで「先輩から私物も要望できることを教えてもらったから」と供述する隊員もいて、長く慣習となっていたとした。
防衛省は、今回の事態を受け、指揮監督義務違反として齋藤聡海上幕僚長を減給10分の1(1ヶ月)とした他、2018年度から24年度の監督官73人とその上司2人を訓戒、潜水艦長の経験者17人を注意とし、合わせて93人を処分した。
齋藤海幕長は30日の会見で、「国民の皆様の期待と信頼を大きく損なう不祥事を生起させたことに対し、改めて深くお詫び申し上げる」と陳謝した。
また、造船会社から不正な提供を止めるよう呼びかけがあったにも関わらず、長年、海自隊員が不正に物品を受け取っていたことについて、「この時の申し出をしっかり受け止めていれば、不正が慣習化され、看過されることが防げた可能性がある。十分に反省すべきだ」と述べた。