2025年参院選の投開票を目前に控えた7月19日、石破茂首相は仙台市で街頭演説を行い、自民党が単独過半数を確保できない情勢のなか、支持拡大を呼びかけた。防災庁創設、人口減少対策、経済再建、安全保障まで多岐にわたる政策課題について訴え、「今の政治に必要なのはその場しのぎではなく、未来への責任だ」と訴えた。

街頭演説する石破茂首相(7月19日JR仙台駅前)
街頭演説する石破茂首相(7月19日JR仙台駅前)
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単独過半数見えず 選挙終盤で危機感あらわに

複数の情勢調査で、自民党は今回の参院選で単独過半数に届かない見通しとなっていて、政権の先行きに影を落としている。石破首相は選挙戦最終盤の19日、東日本大震災の被災地・仙台で「この国を守る責任政党として、逃げずに正論を語る」と危機感をにじませながら訴えた。
石破首相:「調子のいいことを並べて分断を煽っても、最後に苦しむのは国民だ」

防災庁構想に強い執念

石破首相が特に強調したのが、2026年度中の創設を目指す「防災庁」(仮称)だ。2011年の東日本大震災時に野党として被災地を訪れた経験から、「被災者に『なぜ俺たちが国交省から農水省、経産省までたらい回しされるのか』と怒鳴られた。あの声は一生忘れない」と語った。

「今の内閣府防災担当では経験が蓄積できない。常設機関として防災庁が必要だ」と制度の限界を指摘し、「仙台に防災の拠点を置き、世界一の防災大国にする」と明言。現場の混乱を最小限にとどめる体制の構築を強く訴えた。

人口減少に警鐘

続いて首相が言及したのは、深刻な「人口減少問題」だ。石破氏は「2100年には日本の人口は半減、200年後には10分の1になると言われている」と警鐘を鳴らし、「仙台でも年2200人ずつ人口が減っている。若者が結婚・出産に希望を持てる社会をつくらなければ」と力説した。

そのうえで「宮城県は女性1人あたりの出生率が全国46位。構造的な対策が必要だ」と述べ、所得向上、雇用安定、子育て支援の強化を掲げた。

経済再生と減税論への疑念

石破首相は「企業の利益は増えているのに給料が増えない。これを変えなければならない」と語り、「株主と経営者だけでなく、社員と地域が利益を分かち合える経済へ」と構造転換の必要性を訴えた。

一方、他党が掲げるガソリン税減税や消費税減税については、「響きは良いが、宮城県の財源が131億円減る。子育てや医療、年金をどうするのか」と疑問を投げかけ、「財源なき減税では、社会保障が立ちゆかなくなる」と釘を刺した。

農業と安全保障にも言及

宮城の農業についても、石破首相は「『だて正夢』のような新品種を広げ、輸出可能な農業を支援する」と言及。農地基盤整備や農業所得の向上にも取り組む姿勢を示した。

また北朝鮮や中国情勢にも触れ、「今、日本の周辺は最も危険な状況にある。自衛官の定年後の活用など、安全保障政策を正面から語れる政党は我々だけだ」と述べた。

「調子の良いことを言えば国が滅びる」

演説の終盤、石破首相は「調子の良いことばかりを言って選挙を勝とうとする政治では、この国は滅びる」と語り、「一番つらい思いをしている人に、一番温かい手を差し伸べる。それが国家だ」と訴えた。

仙台放送
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