SNS上で流れる冷風サーキュレーターの広告。
ニセ広告より:なんと電源を入れた瞬間1秒でエアコンみたいな涼しい風を送り出します!送風距離は20メートル!残りわずか20台!
“超ハイテク商品”と思いきや…
(Q.360度回る?)
被害者:回らない、これだけ…しかも上下にってどういうことみたいな。やられたぞー。
届いたのは広告と似ても似つかぬ粗悪品…今、ニセの広告を巡り”詐欺被害”を訴える声が急増している。
専門家と商品を独自分析。中身は一体…
サーキュレーターのニセ広告に潜む巧妙な手口。悪質なその実態に迫った。

■吹き出す白い煙・上下左右に動き、広範囲に冷気を送る広告だったが
取材班が訪ねたのは、熊本県に住む坂口由美さん。
夫と暮らしていますが、梅雨があけてから室内の温度はしばしば30度超えに…
“詐欺被害”を訴える・坂口由美さん:ふー暑い、暑いしか出てこん。
夫・幸一さん:6月の梅雨明けがいかんと。
先月末、ユーチューブを見ていたところ、表示されたのが空気を循環させ、冷たい風を遠くまで届けるサーキュレーターの広告。
広告より:吹き出す風はエアコンよりも快適。
強烈な風量のアピールか、”吹き出す白い煙”。自動で上下左右に動き、広範囲に冷気を送る様子も。
さらに…「1秒で部屋の温度を下げる!」「室温が20度ダウン」「20mまで送風可能」などと魅力的な言葉が並び、値段はおよそ6000円。
”詐欺被害”を訴える・坂口由美さん:ヤマダ電機の名前が出てて売り切れ続出と書いてあった。品物自体がすごくいいのかなっていう印象だったんですよ。
大手家電量販店の名前や、「省エネ大賞受賞」のロゴマークなどが表示され、坂口さんは疑うことなく、購入を決めた。

■届いたのは首が回らない・風量も弱い商品だった
しかし、実はこれ”ニセ広告”だった。
”詐欺被害”を訴える・坂口由美さん:これです本当に別商品。
記者:軽っ!めっちゃ軽いですね中身がスカスカな気がします。
届いたのは中国製の商品で、USBケーブルをつないで使うタイプのもの。リモコンはついておらず、首も回らない。
(Q:360度回る?)
”詐欺被害”を訴える・坂口由美さん:回らない。これだけ…しかも上下にってどういうことみたいな。
そして、期待していた風量も…
”詐欺被害”を訴える・坂口由美さん:弱いですね。風来るなーくらいですね。
1秒で部屋の温度は下がることはなく…風は20メートル先には程遠く、3メートルほどしか届かなかった。業者に問い合わせても、連絡がつかないため、返金はされず、泣き寝入りの状況だという。
”詐欺被害”を訴える・坂口由美さん:冷静になれば確かに『そんなはずないやん!』って思うんですけど、その時はとにかく暑さをどうにかしたい思いしかなかったんで、ショックですよ~。やっぱり。

■専門家の協力のもと、商品の構造を分析
一体、商品の構造はどうなっているのか。専門家の協力のもと、分析することにした。
まず注目したのは商品のラベルに書かれていた電力表示。一般的なサーキュレーターの消費電力は20~30Wだが…
近畿大学・理工学部機械工学科・小坂学教授:55Wになります。これがエネルギーになるのでこれだけの仕事しかできない。冷やすのはこれが限界。
(Q:1秒間で冷やすことは?)
近畿大学・理工学部機械工学科・小坂学教授:できないです。5Wではできないです。エアコン300台分で一気に冷やせば1秒で計算上は可能性はあるという事です。
中身はどうなっているのか、調べてみると…
近畿大学・理工学部機械工学科・小坂学教授:あれ!スカスカですね。何も入っていないですね。
部品は、ほどんどなし。小さいコイルがあるだけだ。
広告でうたわれていた20m先まで風を届かせるには、この商品の60倍の力が必要だという。
近畿大学・理工学部機械工学科・小坂学教授:まわすだけなら500円くらいの材料しか使っていない。製品のサーキュレーターとしては考えられないくらい粗悪。
消費者生活センターへのサーキュレーターに関する”詐欺被害”などの4月から先月までの相談件数は近畿でも少なくとも125件。(番組調べ)
すでに昨年の2倍以上と急増していることがわかった。

■ヤマダデンキを取材すると…「一切関係がなく、正直憤っている」
広告自体にも悪質な仕掛けがニセ広告に名前が掲載されていたヤマダデンキを取材すると…
ヤマダデンキ担当者:名前やロゴを無断使用されている。一切関係がなく、正直憤っている。
さらに、省エネ大賞受賞のロゴマークもあるが…
一般財団法人・省エネルギーセンター 判治洋一さん:これはもう全くフェイクっていうか怪しいサイトで、毎年12月中旬に表彰者が決定するんですよ。2025年ってまさにいまだから、受賞もくそもないわけですよ。
広告に記された全ての企業や大学などが勝手に名前を使われていた実態が明らかになった。

■この商品を取り扱っているのは一体どんな会社なのか
広告も嘘、性能も嘘、この商品を取り扱っているのは一体どんな会社なのか…
取材班は中国にある販売サイトに取材を申し込みましたが、返信はなかった。
そこで商品の送り状を見てみると、大阪の業者から発送されていることがわかった。
記載されていた住所に向かってみると、そこにあったのはマンション。
記者レポート:発送元の会社に来てみたんですけども、表札にその会社の名前はありません。

■マンションに入る別の会社に話を聞くと…
マンションに入る別の会社に話を聞くと…
マンションに入る別の会社:全然わからない。聞いたこともない。
一方で、こちらの会社には6年ほど前から商品の発送元と勘違いした人から苦情の電話がかかるという。
マンションに入る別の会社:今年で2、3回ですかね。6月に集中してかかってきました。住所だけ使ってるん違いますか、勝手に。ネットでこの住所打ったら、”詐欺”って出て来られたらいやですね。
マンションのオーナーも取材に対し、送り状に書かれた業者は入居していないと話した。
増加するサーキュレーターのニセ広告の被害。いち早い対策が求められる。

■ネット販売で被害が増えている背景は
被害の申し出が多数ある商品。増田朋記弁護士によると、ネット販売で被害が増えている背景として…
・消費者が冷静に判断しづらい広告もある
・SNS広告に悪質業者が入りやすい。運営側の審査が甘いのでは
ということだ。
また、「詐欺罪や景品表示法違反にも」なる可能性があるということだ。
関西テレビ・神崎博報道デスク:テレビCMでは、テレビ局に広告の審査する部署があって、適切かを審査した上で広告を流している。SNSを運営しているプラットフォーム業者にとっては、広告料を取って出しているわけですから、責任は一定ある。業者がきっちり審査をして広告を出す・出さないを判断すべき。
京都大学大学院 藤井聡教授:経済学では『レモン市場問題』というのがありまして、レモンって見た目はきれいだけど切ってみたら中身が腐っているということがある。買う側は分からないから『注意しましょうね』というのが昔から言われている。ネットになると、より一層分からないので、消費者は自己防衛する感覚を身につけないといけないですね。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年7月11日放送)
