きょうの特集は2020年7月豪雨の被害から5年が経過した八代市坂本町です。東側は宮崎県に接する東西に広い八代市。その市街地から南東へ車で15分程のところに坂本町があります。

球磨川の氾濫ではこの坂本町の坂本橋や深水橋(ふかみばし)など、人吉から八代の間に架かっていた10の橋が流失しました。球磨川沿いを走るJR肥薩線は今も県内全区間で不通となっています。

今回取材したのはこの八代市坂本町に暮らす御夫婦です。5年前の豪雨のとき、タオルや着替え、懐中電灯などを詰めた非常用バッグを用意して乗り切ったご夫婦。災害など、非常時を生き延びるヒントをくれた御夫婦のバッグが今どうなっているのか取材してきました。

【2020年7月4日・坂本町に架かる深水橋流失】
【尾谷いずみ】「ガードレールが垂れ下がり道路のアスファルトもめくれ上がってガタガタになっています」「この先7キロほどのところに八代市坂本町の支所がありますが近づくことはできません」「この先に孤立している世帯があるということで、片側だけでも通れるようにしようと土砂を取り除く作業が行われています」

豪雨によって球磨川、そしてその支流も氾濫しました。八代市坂本町では4人が亡くなり、いまも1人の行方が分かっていません。

5年前、八代市の避難所に身を寄せていた坂本町の本田忠義さんと妻の泰代さんです。2人は停電した自宅で孤立状態を経験。発災3日目、近くの山に亀裂が入ったとして市が避難指示を出したため消防の誘導で八代市中心部の体育館に避難しました。

【妻・泰代さん(当時66)】
「さっと持ち出せますからね」
【夫・忠義さん(当時75)】
「集合してくださいと言われた時、さっと行ったですよ。あっち行ってこっち行って(持っていくものを)探すというのはなくて」

慌てず、素早く家を出ることができたのはいつも備えていたバッグがあったから。バッグには夫婦それぞれのタオルや着替え、懐中電灯、マスクなどを入れいつも決まった場所に置いていたそうです。

あれから5年、御夫婦を訪ねました。今月1日の朝、本田忠義さんの姿は八代市中心部の河川緑地にありました。

【本田忠義さん】Qいくつになられますか「(今年で)81になります」

この広場も発災当時は一面濁流に覆われ、1年以上使えない状態が続きました。本田さんは八代市のグラウンド・ゴルフクラブ『お達者会』に所属、ここで日々腕を磨いていて来月滋賀で開催される『国スポ』に出場が決まっています。練習が終わると車で坂本町の自宅へ戻ります。

5年前の発災後しばらく通行できなかった国道219号線。今も道路や護岸の復旧工事のため大型車両が行き交い、片側通行の区間が複数あります。時間帯によっては交通渋滞が発生し、時間が見通せなくなることも。

ここは流失した深水橋があった場所です。数百メートル下流に新しい橋が架けられることになっています。そして、坂本支所を中心に病院や銀行、郵便局などが集まっていた町中心部は。

【尾谷いずみ】
「かさ上げされた土地に道路が整備され、坂本支所などが入る建物が建設されています」高台の整地された場所で現在坂本支所や災害公営住宅などの建設工事が行われています。かつての町の拠点はまだ復旧の途中です。

本田さんが帰宅した午前10時半すぎ、妻の泰代さんは買い物に出かけようとしていました。

【本田泰代さん】「唯一のお店です」

週に1度やってくるJAの移動販売車です。過疎化が進む地区の心強い味方です。被災前3322人だった坂本町の人口は先月末現在2262人となっています。

【夫・忠義さん】Qあれから生活は?「生活は変わらんですね。そんなに大きい災害はないから」

【妻・泰代さん】「今でも(用意)してます」

本田さん夫婦のバッグ、5年たった今もちゃんとありました。

【妻・泰代さん】
「一人一人のバッグと、これは非常食とか水とか懐中電灯とか軍手。これはもうずっと入れ替えながら」水や食料の期限を見ながら中身を時々入れ替える、そしてバッグはいつも決まった場所に置いています。

【妻・泰代さん】Q5年たちましたがバッグの中身は変わりましたか?「あんまり変わりないですね」Qバッグの数は増えましたね「増えましたね(笑)」

1つ目のバッグにはパックご飯や水、乾電池、携帯ラジオ、ティッシュペーパー類、プラスチック皿やコップ、箸、飴、軍手。避難所でも自宅避難でも使うものです。そして・・・。

【妻・泰代さん】豪雨災害後に用意した別のバッグにはタオルや毛布を入れています。下着や着替え、洗面用具などはそれぞれ1つずつのバッグに分けました。さらに避難所での生活に備えスリッパやマスク、洗濯物を入れる袋などをまとめてバッグは全部で5つです。

【妻・泰代さん】「やっぱり普段から準備はしていた方がいいなと思ってましたが慌てないことですよね」Q慌てないために先にできることを準備?「今は80代、70代だからいつ入院とか(あるかも)、だから一人一人のを別にしてあります」

いつ何があっても慌てないように・・。夫婦のバッグはバージョンアップされていました。

テレビ熊本
テレビ熊本

熊本の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。