特集は選挙企画です。
コメ余りから一転して品不足となり、価格の高騰、備蓄米の放出へとつながった令和の米騒動。
今回の参院選では、私たちの日々の食に直結する「コメ政策」も争点の1つとなってます。
農地を守り、コメを安定供給するために必要な政策とは何か。生産と流通の現場を取材しました。
スーパーや飲食店、病院などにコメを販売する都城市のみやざきライス卸協同組合です。
(みやざきライス卸協同組合・丸山将史代表理事)
「普段は倉庫が2カ所ありまして使ってるんですが、現状、1カ所は在庫が無くて使われていない」
現在の在庫は、青森県や鹿児島県など令和6年産のコメで、仕入れ価格は1.5倍まで高騰。
利益を削って、店頭価格の上昇を抑えていますが、人件費や配送費をまかなえず、毎月、赤字の状態です。
(みやざきライス卸協同組合 丸山将史代表理事)
「直近で(店頭価格が5kg)4000円まで上がり、我々も価格の動きはびっくりしている。主食となるコメが安心して、安定して食べることができる環境は大事なのかなと」
コメの価格安定を目的に2017年まで約半世紀続いた減反政策。
農林水産省の統計によりますと、加工用米を含め県内でコメの作付面積は年々減少し、去年は1万4500ヘクタールと減反政策前の4割以下となりました。
こうした中、発生したコメ不足と価格の高騰に政府は一転して「コメ増産」へと政策を転換する方針を示しました。
(農家 田口宏明さん)
「対応は遅かった、後手後手に回っているイメージはある」
宮崎県内有数のコメの産地・えびの市。
約5ヘクタールの農地でヒノヒカリなどを栽培する田口宏明さんです。
コメの価格低迷に加え肥料などの生産コストも上昇し、稲作だけでは赤字に…。
牛の繁殖農家を兼ねたり、約30戸の農家から稲刈りや籾摺りなどの作業を請け負って収入を確保し、農地を守って来ました。
(農家 田口宏明さん)
「ここ最近ですかね。ようやく経営をしっかりしながら、いろいろなことを計画してやってこれていると思う。情勢は厳しく大変だと思う」
去年は硫黄山の影響と見られる水質悪化で稲作を断念。
大幅に収入が減少しました。
一方、今年は主食用米での収入を増やすため、飼料用の稲は植えず、ヒノヒカリの作付面積を全体の8割まで増やしました。
(農家 田口宏明さん)
「今年もコメの値段は、去年程はいかないかもしれないけど、そこまで下がらないかという思いで、転作とかより米を増産した方が確実に利益が出るんじゃないかというチャレンジになると思う」
「(店頭価格で5kg)3000円から3500円くらいの平均的な値段を何十年も確立してもらいたい。それくらいないとコメ農家は生活できない」
今回の参院選でも重要な争点の1つとなっている「コメ政策」。
それぞれの政党が生産基盤の強化や適正なコメ価格の実現などの公約を掲げる中、コメを作って日本の農地を守る人。安定して消費者にコメを届ける役割を担う人。
いま現場が求める政策とは…
(みやざきライス卸協同組合 丸山将史代表理事)
「人々の暮らしが安定すること、一番大事である食事が安定していること。しっかりコメが生産から一般消費者に届く状況がしっかり落ち着いて、環境が整ってほしいと思いますし、そういった政策を願っている」
(農家 田口宏明さん)
「(主食なので)米価が高くなると色々言われたり、安いときには農家が儲からない、やめていく方が続々出ると。そういう悪循環を無くすような政策、収入が上がるような施策をお願いしたい」
各政党のコメや農業に関する公約を見ていきます。
NHK党は、企業などが農林水産業に参入しやすくするための規制緩和や食料輸入に関する関税の引き下げを挙げています。
参政党は、転作補助金などの実質減反政策から米の増産や輸出奨励へ転換。農林水産業の従事者を公務員化し、担い手を確保するとしています。
立憲民主党は、個別補償制度を復活させ米の生産調整を政府主導に戻すことや備蓄米制度の見直しを掲げています。
自民党は、将来も安定経営できるように水田政策を見直すことや米の安定供給と円滑な流通確保へ事前契約の推進を行うとしています。
コメ政策が転換期を迎える中、農家が安心して増産へと臨める施策が求められています。参院選では、食の安定を待ち望む有権者の思いも一票に託されます。