参議院選挙が、きょう=7月3日に公示されましたが、今や選挙に欠かせない存在となったのが「SNS」です。
メリットもデメリットもあるSNSに候補者たちはどう向き合うのか、注目の兵庫選挙区で聞きました。
ついに始まった選挙戦では、スマートフォンを手にした有権者や関係者が、候補者の演説を聞く姿も早速見られています。
■兵庫では、改選数3議席に対して13人が立候補する激戦区に
SNSを活用した選挙戦が注目される大きなきっかけになったのが、去年11月の兵庫県知事選挙。
選挙期間中には政治団体・NHK党の立花孝志党首が知事の疑惑を告発した元県幹部の私的情報を拡散するなど、SNSが投票行動に影響を与えたとして全国的に注目されました。
選挙におけるSNSの重要性が際立った兵庫では、改選数3議席に対して13人が立候補する激戦区に。立候補者たちのSNSとの向き合い方は多種多様です。
■自民現職・加田裕之さんは、SNSなどでの偽情報に対する法的な規制が重要と主張
自民党の現職、加田裕之さん(55)は、SNSなどでの偽情報に対する法的な規制が重要だと考えています。
【加田裕之候補(55)】「(偽情報が)あった時は法的に対応していきたいと思いますし、この点については毅然と言っていきたいと思います」
その上で、直接見たり聞いたりした地域の課題をより多くの人に届けるためのツールとしてはSNSを活用することも必要だとしています。
【加田裕之候補(55)】「基本は人と人とのつながりとか対話にあると思うのであくまでもSNSは伝えるツールだと思います。ですから何を伝えるかとか何をもとにしているかのフェイストゥーフェイス(対面)の関係はしっかり大事にしたい」
■公明現職・高橋光男さんは「慎重な発信が必要」と話す
もう1人の現職、公明党の高橋光男さん(48)。SNSを使うリスクも考えた慎重な発信が必要だと話します。
【高橋光男候補(48)】「ネガティブキャンペーンにも利用されるリスクもある中で、候補者の実像や姿を見ていただく上では、事実や真実とは異なるような内容で、出されてしまうと、候補はそういうものに気を付けないといけない」
一方で、有権者に親しみを持ってもらうためにSNSや動画サイトにも積極的に挑戦しています。
■維新新人・吉平敏孝さんは、慎重な発信を心がける一方で「拡散」につながらないというジレンマを抱える
日本維新の会から出馬する新人の吉平敏孝さん(44)。
SNSでは、慎重な発信を心がける一方、「拡散」にはつながらないというジレンマを抱えています。
【吉平敏孝候補(44)】「往々にして政治家は、過激な方に走ってしまうことがあるので、それはならないように私としては気を付けながらやっていますが、そうすると(閲覧回数が)伸びない、悩みながらやっているところはあります」
それでも、自身で課題とする「知名度アップ」にSNSの力を期待しています。
【吉平敏孝候補(44)】「30秒に抑えて、いろんな政策を説明してアップしていくことなどはやっていきたいと思っています。若い人は30秒超えると動画を見ないっていう話もあるんで」
■国民新人・多田ひとみさんは、連日YouTubeでライブ配信予定
SNSを駆使して支持を広げてきた国民民主党から出馬する新人の多田ひとみさん(45)。
政治への関心に課題がある若い世代への発信にはSNSが欠かせないと感じています。
【多田ひとみ候補(45)】「若い方の政治への関心が低いので、興味もっていただけるようにショート動画を作って、政治が変わればこんなに変わるんだよっていう面白い感じの動画を作ったり」
党の学生ボランティアの力を借りながら、選挙期間中は連日YouTubeでライブ配信をする予定です。
■無所属新人で前明石市長の泉房穂さんは、SNS時代だからこそ、離島で選挙戦をスタート
選挙戦を小さな離島でスタートさせた、無所属で前明石市長の泉房穂さん(61)。
ほかの候補が神戸市内などで選挙戦を始める中、離島を選んだのは、SNS時代だからこそ場所や時間を問わず発信ができるからだと話します。
【泉房穂候補(61)】「今はSNSの時代だから、大都会で第一声を上げなくても今ここの第一声がすぐ拡散できるので」
ライブ配信SNSや動画サイトでのライブ配信を積極的に行う泉さんは、ボランティアの募集なども対面とSNSの両方を柔軟に活用していく考えです。
【配信を見に来た人】「応援の動画を作ろうと思うんですけど」
【泉房穂候補(61)】「お願いします!ショート動画とかね、お作りいただけるとありがたいです。便利な時代やねえ、テレビ局頑張らなあかんでほんま!またあかんな口が悪いな(笑)」
■諸派元職・立花孝志さんは引き続きSNSを駆使した選挙戦を展開する模様
一方で、兵庫県知事選挙で斎藤知事の支持を呼びかける2馬力選挙や、SNSや街頭演説で真偽不明な情報を発信してきたNHK党の立花党首は。
【立花孝志候補(57)】「ネットを使えばお金もかからない。メディアのように忖度せずにメッセージを伝えられる。ネットの方が真実ではないことが多いから逆にオールドメディアに期待することも多々あって、僕の中での中立というか、ちゃんと確認したうえで発信していこうと」
といいながら、Xでは攻撃的な発言や、「選挙運動期間に入ったら、泉房穂候補の選挙演説の後に私が選挙演説をしていく」、など引き続きSNSを駆使した選挙戦を展開する模様です。
■SNSの利用や影響について、そのほかの候補者の声は
このほか、共産党の新人、金田峰生さん(59)、れいわ新選組の新人、米村明美さん(65)、参政党の新人、藤原誠也さん(37)がSNSの利用や影響について、以下の発言をしています。
共産党・金田峰生候補(59):SNSなどによる誹謗中傷について、「力で黙らせるのは許されない」
れいわ新選組・米村明美候補(65):立候補のきっかけは「YouTubeで山本太郎代表の動画を見た」
参政党・藤原誠也候補(37)「SNSで参政党を知ってくれた人が明らかに増えている」
メディアやSNSから得られる様々な情報。デマに惑わされず1人1人が見極めていく必要があります。
■「ネットは溝を深めて選挙が終わっても影響が残ってしまう」と菊地弁護士
7月3日から参議院議員選挙の選挙戦が始まりました。
去年の衆議院議員選挙で、有権者が「参考にしたメディア」についての調査があります(JX通信社×選挙ドットコム調べ)。
グラフの赤で示された「インターネット」。30代では新聞やテレビよりもインターネットを参考にしたという人が多くなっています。
さらに20代では、およそ半数以上がインターネットを参考にして投票したという結果になっています。
インターネットは、候補者の主張や政策に触れやすいというメリットはありますが、一方で誹謗中傷やデマが出回る課題もあります。
【菊地幸夫弁護士】「民主主義というのは議論を重ねて、多数決をする。要するに血を流さない、平和的な多数決という方法で決着がついたら、あとはみんなそれに従って協力していこうというのが民主主義だと思うんです」
【菊地幸夫弁護士】「だけどネットですと、デマやフェイクも含めて、余計に分断が進み、溝が深まってしまう。選挙が終わっても、その影響が残ってしまうような、そんな弊害も出ているような気がします」
■関西テレビの選挙報道の方針
選挙期間中に、テレビメディアがどのように伝えていくのかというところも問われています。
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「テレビメディアはこれまで“公平性”をあまりにも重視するために、例えば各候補者の発言の”秒数”を合わせたりとかしていて、どうしても紋切型と言いますか、平板な放送になってしまっていた」
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「しかも選挙期間中に入ると、本来であれば有権者・視聴者に情報をたくさん提供して、選択肢を与えなければいけないのに、どうしても放送時間が減ってきたということがあった。結果として、去年の兵庫県知事選であれば、テレビの放送時間があまりにも少ないので、有権者の皆さんがネットに情報を取りに行って判断されることになってしまった」
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「これではテレビとしてはだめだろうということで、我々としては態度を改めようという形になっています」
【関西テレビ 吉原功兼キャスター】「私たち関西テレビとしては、今回の参議院選挙で、有権者にとって有益な情報をお伝えすることを第一に考え、選挙で問われている社会的課題について柔軟にお伝えする報道をしてまいります」
【関西テレビ 吉原功兼キャスター】「また選挙期間中であっても、“大きな影響が出そうなデマなど”があれば私たちが取材した上で事実を提示する『ファクトチェック』を行ない、お伝えしてまいります」
(関西テレビ「newsランナー」 2025年7月3日放送)