「被告人を懲役30年に処する」

 まっすぐ前を見つめ、裁判長の判決を聞いていた住所不定・無職の宮西浩隆被告(45)。

 廷内には関係者のすすり泣く声が響いていました。

 宮西被告は2024年2月、札幌市北区のコンビニで店員3人を刃物で次々と襲い、40歳の男性を殺害、ほか男女2人に大ケガを負わせた罪などに問われています。

 事件当時、「妄想型統合失調症」を患っていた宮西被告。

 刑事責任能力があったのかが争点でした。

 これまでの裁判で明らかになったのは宮西被告だけに聞こえる声と妄想の数々です。

 2年ほど前からスーパーで女性店員と目が合わず、レジなどを対応してもらえない「異常」が起きていたと主張していた宮西被告。

 事件当日はこれに加え、ある声が聞こえてきたといいます。

 「声が『これから嫌な思いをさせてやるからな』と言った」(宮西 浩隆被告)

 宮西被告はコンビニに向かいましたが、女性店員の声がするのに姿が見えない「異常」が起きていたといいます。

 「声に『ざまあみろ』と言われた。コンビニで異常が解消しないのに絶望した」(宮西被告)

 「なぜ刃物を取り出したんですか?」(弁護側)

 「絶望が大きい。嫌がらせがエスカレートしていくから」(宮西被告)

 検察側は「妄想で追い詰められたとはいえ自らの意思で犯行を実行している」ことから宮西被告に責任能力を問えると主張。

 懲役30年を求刑しました。

 一方、弁護側は「妄想の力が圧倒的で、客観的に判断できなかった」として宮西被告は刑事責任を問えない心神喪失だったと無罪を主張しました。

 そして2025年7月2日、札幌地裁の井戸俊一裁判長は「無差別的な犯行で、人命を軽視する被告の考えが表れていて厳しい非難が妥当」として、宮西被告に懲役30年の実刑判決を言い渡しました。

 表情を変えることなく判決を聞いていた宮西被告。

 殺害された当時40歳の男性の妻は2日も裁判を傍聴。

 閉廷後には泣き崩れてしまっていました。

 弁護人を通して「この判決を受けても夫が戻ってこないことが悔しい」とコメントしています。

 井戸裁判長は、心神耗弱という点を考慮しなければ無期懲役が相当に思われるほど重い部類であり、無差別的な犯行で人命を軽視する被告の考えというのが表れているとしています。

 今回の裁判に参加した裁判員は、この裁判後に行われた会見で、「被告人にはこの30年という期間をしっかりと受け止めてほしい」と話しました。

北海道文化放送
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