海外を拠点とする詐欺グループで今、日本人が人身売買の標的になっています。
リクルート役を取材すると、その実態が明らかになりました。
FNNの取材に「日本人は新しいマーケットです。日本人のメンバーを1人見つけられれば、大きなお金になります」と話す人物は、カンボジアで特殊詐欺グループの仲介役をしているリクルーターです。
東南アジア各国の警察が取り締まりを強化しても、広がり続ける詐欺拠点。
日本人を狙った人身売買の実態も証言から見えてきました。
カンボジア南部の都市・シアヌークビル。
中国資本の流入によって急速な発展を遂げた一方で、建設途中のまま放置された建物も多く、治安の悪化も進んでいます。
そのシアヌークビルにある特殊詐欺拠点とみられる場所の映像。
室内に並んだパソコンに向かって作業する人物や、鉄格子で囲われた空間で過ごす姿が確認できます。
一方、ミャンマーの詐欺拠点で撮影されたのは、ベランダから脱走しようとしている女性。
命を落とす危険を冒してまで逃げようとするほど追い詰められたとみられます。
そんな詐欺拠点内の実情を知る、タイ人のリクルーターを取材しました。
特殊詐欺グループのリクルーター:
普通は一度入ったら出られない。大金を払わないと出られない。
この人物によると、カンボジアにある拠点では、入ってから半年間は外出できません。
抜け出すためには多額の金か、代わりの人をあっせんする必要があるといいます。
さらに、「日本人もリクルートした」と話します。
特殊詐欺グループのリクルーター:
(Q.いつ日本人を詐欺グループに紹介した?)今年の4月ごろです。中国系のエージェントから依頼されました。
そのリクルートされた日本人男性が、詐欺グループメンバーとみられる女と電話で話す映像が残っていました。
電話口の女:
何が食べたいですか?
日本人男性:
何って言うか…食べ物、お菓子…。売っているものがわからないから。食べ物と飲み物を買いに行きたいんです。俺一人で買いに行っていいのかわからないので、ちょっと聞いてみて。
この40代の日本人男性はシアヌークビルの詐欺グループの拠点にいましたが、別のグループに向け売りに出されたといいます。
つまり、詐欺グループは詐欺に加担させる者を人身売買の対象にしているというのです。
男性のあっせん先は、カンボジア北西部の都市ポイペトにある拠点。
5月に日本人29人が拘束された詐欺グループが拠点を置いていた街です。
日本人は「真面目に働く」などの理由から重宝され、この男性の紹介料は、日本円で570万円ほどだったといいます。
しかし金額が折り合わず、売買は不成立。
男性のその後の行方は分かっていません。
リクルーターによると、ポイペトで摘発された拠点は氷山の一角で、現在も日本や中国、インドなど複数の犯罪組織が建物を間借りし、特殊詐欺が続いているといいます。
特殊詐欺グループのリクルーター:
この国はお金で何でも買えます。しかも拠点がある場所は軍の偉い人の土地だから、摘発することはできません。
政府や軍、警察関係者への賄賂の横行で、犯罪拠点が増え続けているカンボジア。
規制が厳しくなったミャンマーやフィリピンからもグループが流入し続けているといいます。
日本の捜査当局は、拘束された29人を今後日本へ移送し、詐欺グループの実態解明を進める方針です。