香港がイギリスから中国に返還されて7月で28年。
その香港では今、「北上消費」と呼ばれる社会現象により経済の低迷が深刻化しています。
1997年7月の中国返還から28年がたった香港では、1日、記念式典が開かれました。
しかし、お祝いムードの一方で、香港経済は厳しい現実に直面しています。
中国返還以降も日本を含む世界各国から観光客が訪れ、“買い物天国”として人気を集めた香港。
しかし現在、市内の繁華街では多くの店が閉まり、シャッター街と化してしまっています。
かつて中国本土からの観光客などでにぎわった香港を代表する繁華街「ネイザンロード」でも、目につくのはシャッターを下ろした店舗。
トマトラーメンが名物だという店も厳しい経営を強いられています。
トマトラーメン店経営者 マシュー・リーさん:
この2年間、全体的にビジネスは落ち込み、(売り上げは)3分の1から3分の2くらい下がりました。
この店は、コロナ禍のあとも売り上げが期待どおりに回復せず、香港市内にある4店舗のうち一部は赤字に転落。
そのため2店舗を売却中だといいます。
景気低迷の理由として、経営者のマシューさんが挙げたのは「北上消費」です。
トマトラーメン店経営者 マシュー・リーさん:
「北上消費」することがもっと当たり前になり、香港の市場は縮小すると思います。
ここ数年、香港から物価の安い中国本土に買い物などに行く市民が急増。
方角として北に向かうことから「北上消費」と呼ばれ、社会現象となっているのです。
月に一度は中国・深センに遊びに来ているという親子。
月に一度遊びに来る人:
ここは生活コストが低く物価も安い。コストパフォーマンスが高い。
この日、親子が訪れたのは6月にオープンしたばかりのゲームセンター。
アーチェリーや最新のVRゲームの他、本格的なレーシングカートも楽しめます。
親子で1日利用すると日本円で8000円ほどかかりますが、香港にこうした施設はないのだといいます。
月に一度遊びに来る人:
私は深センで遊ぶのが好きです。ここは香港より安くて、広くて、遊びもたくさんあるから。
安いだけではなく、香港に比べサービスへの満足度も高いと話します。
月に一度遊びに来る人:
例えば、子どもがスプーンやお箸を落とすと、こちらが言う前にすぐに新しいものを持ってきてくれる。香港だと何度呼んでも無視されることもあります。
香港市民は2024年から顔認証によってスムーズに中国本土へと渡ることができるようになり、移動の垣根はますます低くなっています。
香港メディアによりますと、6月28日には40万人以上の香港市民が本土を訪れたということです。
こうした本土への消費流出により、香港では経済的地盤沈下が進んでいるのです。
香港では小型の店舗の閉店が相次いでいるということですが、その一方で、中国大陸からやってきたお店が増えているといいます。
香港では今、本土の店の進出ラッシュが顕著で、香辛料がきいた辛い中国発祥の食べ物やレモンティーの店が人気になっているといいます。
こうした状況に、香港の味を守ってきたマシューさんはこう考えています。
トマトラーメン店経営者 マシュー・リーさん:
香港と中国の境目がどんどんなくなっています。香港人として、本当の香港の味を広めて守っていきたい。
香港ではまた、中国政府主導の政治的な締め付けの強化で富裕層や子育て世代の海外移住も続いていて、景気低迷から抜け出す道筋は見えていません。